サンケイ新聞が「メディア界のドン」の総裁選関与を報じる

これは、安倍総理の突然の辞任の前の内閣改造の段階でのドキュメントですが、こんなことが書いてありました。

2日後の7月31日。東京・汐留の高層ビルの一室で、参院選で瀕死(ひんし)の痛手を受けた安倍政権を揺るがす密談が繰り広げられていた。  「メディア界のドン」といわれる人物が主催する秘密会合に顔をそろえたのは派閥領袖級の4人。元副総裁の山崎拓、元幹事長の加藤紘一、元幹事長の古賀誠の「新YKK」、そして元厚相、津島雄二だった。

「汐留」にいる「メディア界のドン」と言えばあの人しかありません。

そして、今回の福田擁立劇の内幕を報じる記事の中にも同じ表現が。

森が安倍の辞任表明を知ったのは外遊先のパリだった。慌てる森に一本の国際電話がかかった。「メディア界のドン」といわれる男からだった。  「すでに山崎や古賀、前参院議員会長の青木幹雄は福田支持でまとまっている。あなたの残る仕事は派内の調整だけだ」

二階堂ドットコムのこのスクープは、細かい事実関係は別として、大筋はサンケイによってほぼ裏付けられたと言ってよいでしょう。

読売新聞は、このように福田氏に不利な情報も報道していますので、前の記事で書いた、「グループ一丸となって」という表現は間違っていたと思いますが、「ドン」が福田擁立劇に関与していたこと自体は確かではないかと思います。

具体的にどのような誘導があったかと言えば、総理が辞意を表明した日の日本テレビのニュースゼロで、こんなやりとりがありました。

http://news22.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1190637369/196

zeroに酒と谷垣が出てて、候補の中で誰がふさわしいか?と司会が酒に振った
酒は麻生と答えた
その瞬間、日テレ粕谷が
「今ニュースが入りました、安倍首相が麻生に騙されたと、側近に語りました」
村尾
「中川さん、それでも麻生さんですか?」

「それなら話しは別」
村尾
「そうですよね」

「良く調べてみます」
間もなくTBS.NHKが続いた
その後酒が麻生の推薦人になったのは、ご存知の通り

「酒」とは、2ちゃんねるでの中川昭一氏の愛称です。私もよそ見をしながらですがこの番組を見ていて、このようなやりとりがあったように記憶しています。

この「クーデター説」については、安倍総理自ら否定していますが、日経の清水真人編集委員のコラムでも、「検証すればするほど、奇怪な裏側が見えてくる」と言われています。

首相の健康状態と退陣を巡ってこれほど謀略めいた情報が飛び交い、真相が謎に包まれているのは国家的スキャンダルと言われても仕方がない。

この出所の怪しい情報を、麻生氏に近い中川氏の出演時に突然ぶつけるというのは、どういうことなのか。全くの偶然で、その情報を中川氏にインタビューしているその瞬間に入手したのでしょうか?

ちなみに、この「クーデター情報」の出所とされる上杉隆氏は、別の番組でNHK朝日問題に関してこの中川氏にボコボコに論破された過去があります。

私はこれまでは、麻生さんを全面的に支持するつもりはありませんでした。

前の記事にトラックバックしていただいた、椋箚記 - 情報格差という記事から知ったのですが、水間氏の告発スクープが書きこまれたブログの、戸井田とおる議員は、国会でこんなトンデモ発言をしていました。

資料一を見ていただきたいと思うんです。このカラー版のものです。一番最初のは、アイリス・チャンの「レイプ・オブ・南京」の表紙と、その中に入っている写真です。(中略)

昨年の本委員会でもって、国会図書館というのは、国会議員が国政調査のための資料をそこに集めてあるわけでありますから、そこで調べていくと、間違った資料をもとに間違った考えを頭に植えつけて、結果的に間違った法律をつくるというようなことになると国民に迷惑がかかるし、ここらのことは非常にスピード感を持って解決していただきたいなと。

 前回は、日本国全部の税金を使った図書館ということを申し上げたんですけれども、私は国会議員として、国会議員が調査に当たる、その中心の場である国会図書館の資料に、明らかに間違いだ、一次資料で確認できる、そういうものについてはきちっと訂正をしていただきたい。前回は、富田メモのように、写真だけでも上に張りつけたらどうだというようなことを申し上げましたけれども、今はなかなか難しいようでありますから、それだったら、インターネットでホームページでもつくって、そういう間違いの訂正というか、そういうものをきちっと出せるようにしていただきたいな。そのことをぜひお願いしたいと思うんですけれども、まず、国会図書館長ですか。

レイプ・オブ・南京」が問題のある資料であるという主張はいいと思うのですが、図書館にある資料からその記述を削除しろと言っています。

麻生氏自身にはこのレベルの不見識はないと思いますが、この人が麻生氏の総裁立候補の推薦人に名を連ねていると聞くと、ちょっと引いてしまいます。これが麻生さんの全てとは思いませんが、こういう要素がちょっと混じってそうな気がして、積極的に麻生さんを支持する気にはなれませんでした。上記の発言を見て「やっぱり」という気がします。

しかし私は、これからははっきり麻生氏を支持します。「メディア界のドン」が後ろにいる方が悪に決まっています。

要は、見える所で物を言うのか、見えない所でこっそり動くのかです。見えない所で動く人というのは、自分の判断や価値観でなく後ろにいる人たちのために動きます。だから、こういうことをやってネットで悪評がいっぺんに広まる時代になってもなかなか行動を変えられないのです。「後ろにいる人」というのは陰謀論的な意味ではなくて、彼らの陰に隠れた日本人の支持者たちのことです。彼らも自分の判断でなく自分たちの「後ろの人」のために動いている。そういう暗黙の意思の集積を自民党は愚直に吸い上げてきていて、それが止まらなくなっているのです。私は、それが一番大きな問題だと思います。そんなことやっても誰も幸せにならない。

国会で堂々と間違ったことを言う人は、それに比べたらずっと害は少ない。自分の考えで動く人となら議論ができるし、彼らの「自分の考え」が多数派になるなら、それを受け入れるべきだと思います。

でも、自分でなく「後ろの人」の為に駆け回るような政治家は信用できないし、間違いを修正できない、それをなくすことが一番重要だと思います。

そういう意味で、逆の指標としてはナベツネさんという存在はありがたい。私は、この総裁選についてどちらとも決めかねていましたが、ナベツネさんのおかげで考えがまとまりました。これからは、「後ろの人」のために動くマスメディアが自民と民主のどちらを支持するかを慎重に見極めていきたいと思います。マスメディアにも(プロの報道人として)自分の考えで記事を書く人もいて、そういう意見は当然専門家の分析として参考にしますが、そうでない人もいる。そうでない部分をうまく見極めてその逆を行けばそんなに間違うことはないと思います。