寄らば大樹の陰2.0

木の下に身を寄せるなら、小さな木より大木の方がよい。どうせ頼るなら、勢力のある者を頼る方が安全である、という意味。

これは、Web1.0の時代まで真実であって、アクセスを稼ぐには、なるべくポータルサイトのトップページに近い所にリンクしてもらうのが早道であった。

Web2.0は、それが成りたたなくなった時代ということで、佐々木氏のググル本を要約すれば、「『寄らば大樹の陰』を否定するのがグーグルの商売である」ということになるだろう。

「寄らば大樹の陰」が成り立つには、寄れる人と寄れない人がいて差別化できることが必須である。普通は寄れない人の方が多いから、その人たちを集めることができれば、大樹をなぎ倒す力になる。大樹の数だけビジネスチャンスがあるわけだ。そして、佐々木本の事例のように、コネがなくて既存の大樹に寄れない人がグーグルを支持している。グーグルはそのような仕組みを作りあげたということだ。大樹に「寄る」ことができない人がグーグルの味方になるのであれば、グーグルは無敵である。

ネットの知識が無くても、「寄らば大樹の陰」という言葉の重さを体験から理解している人にとっては、案外、グーグルの破壊力を理解するのは簡単かもしれない。

たくさん大樹をなぎ倒してグーグルは、もうひとつの大樹になるわけだが、それには「寄る」ことができない。誰にでも「寄る」ことができるので、差別化を生むような「寄る」を許さない。グーグルに限らずWeb2.0企業は、ネットワーク効果によって大樹になろうとしていて、それには「寄る」人が多ければ多いほどよい。「寄る」人を制限して成り立つ事業や権力とは全く違う。そういう意味では、ネットワーク効果に乗っかるのが安全であるという意味では、「寄らば大樹の陰」は今も成立しているのかもしれないが、やはり1.0的「寄らば大樹の陰」とは随分違うだろう。