野口氏怪死事件中級編 -- 新石垣空港に関する疑惑をどう評価するか?

入門編では、「確実な事実」のみを扱いましたが、ここから、不確実な推測も交じえます。そこで、まず、これを読んでいただきたいと思います。

「きっこの日記」は要するにどんなサイトなのか(きっこの日記検証3) [絵文録ことのは]2006/02/08


じゃあどうしろというのか。「きっこの日記には○○と書かれていた」という情報をプールしておいて、どうでもよければ「そういう話がネットに書かれていた」で終わらせればいいし(おれにとっては後藤真希が灰皿を投げようが投げまいがどっちでもいい)、もしその真偽を確認したければ自分で調査すべきなのだ。「普通の人には情報の真偽を判断する手段がないから、報道/サイトの情報を信じるしかない」なんていう思考停止した発言をする人がたまにいたりするけど、そういう人はご愁傷様ですが情報に振り回され続けていてもらうしかない。信じるのではなく「情報の真偽を保留する」という思考がどうして持てないのかと疑問に思う。

ポイントは「情報の真偽を保留する」ということですね。

マスコミや警察に疑惑がある以上、権威ある筋によって確認された情報のみでは真実に至れないことは明白です。だからと言って、ブログや2ちゃんねるに書いてあることをそのまま信じては、躍らされるばかりです。

必要なことは、「情報の真偽を保留」していることをしっかり意識して、情報を受けとることだと思います。これから書くことも、確定した疑惑というよりは、むしろ、どちらかと言えばやや無理のある推論です。だから、私としては、これを読む人にも、そのまま真実と受け取っては欲しくありません。

しかし、「情報の真偽を保留」したまま、フォーカスを当てるべき問題というのはあると思います。その例として、2ちゃんねる【ライブドア】 野口氏、ライブドアの"石垣新空港周辺土地買収トラブル"に巻き込まれる?…ゲンダイ報じるというスレッドに書かれていた、「新石垣空港」に関する疑惑を野口氏怪死事件につなげる一連の推理を取り上げてみたいと思います。

赤旗の奇妙な沈黙

まず、この推理は、野口氏の事件について赤旗が触れてないことからスタートします。

このように、政権を批判、監視する野党として積極的に時事問題についても発言する赤旗ですが、なぜか、野口氏の件については触れようとしません。以前触れた革新系文化人の奇妙な沈黙とともに、非常に不可解なことだと思います。

新石垣空港に関する疑惑

次に、「新石垣空港」についての疑惑に着目します。この空港については沖縄タイムス:新石垣空港に設置許可/国交省から。


国土交通省は十九日(2005/12/19)、県が申請していた新石垣空港の飛行場施設と航空灯火の設置を許可した。建設場所をめぐり約三十年間、紆余曲折を経て三度たどってきた新石垣空港航空法に基づく設置認可を受けたことで、本年度内に実施設計に着手、来年度から用地買収など建設事業が本格化する。

ということで、現在の石垣空港とは別の場所に新しい空港を作るという話があって、その場所の選定を巡って30年間の紆余曲折を経て、去年の末に決まったものだそうです。そして、この設置場所について4つの案があり、稲嶺恵一知事の私的な諮問機関の検討を受けて「カラ岳陸上案」に決定されました。その経緯については、新石垣空港課 位置選定委員会の知事提言に書かれています。

疑惑というのは、この用地や近辺の土地を決定前に購入し、諮問機関の決定に不当に介入して、土地の値上がりによって不当な利益を得た者がいるのではないかということです。また、同時に、最終的に決定した「カラ岳陸上案」以外の土地を購入した筋は大損をして、その後始末を巡って見えない所で暗躍があったのでは?という話です。

革新系でありながら与党に接近する石垣市

そして、この空港の建設を熱心に推進した地元石垣市長の大浜長照氏は革新系です。確かに、赤旗にも沖縄・石垣市長選/革新・民主の大浜氏圧勝/3選果たすという記事があります。

さらに、この市長は政権与党の側の国会議員を支援したことで、反自公の市議ら、支援者の反発を受けたという報道がある通り、一方で政権与党の側にも接近しているそうです。環境にやさしい空港を/乱開発防止にも決意/大浜市長知事に感謝【八重山毎日オンライン】という記事を見ると、稲嶺沖縄県知事との関係の深さもうかがえます。

2ちゃんねるの探偵氏は、革新系、特に共産党系の政治家が政権与党に擦り寄ることを、かなり不自然な動きととらえているようですが、これはどうなのでしょうか。地方政治の現場では、完全に中央の硬直したポリシーに添った動きだけをしているわけにもいかないような気がします。

また、石垣市長が魚釣島上陸検討という話もあって、中国に対してかなり挑発的な言動をとっていることから見ても、単なる革新系一本の市長でもないようです。

稲嶺知事のスケジュールにある謎の「休日」

稲嶺知事のスケジュールを見ると、ほとんど休みなく精力的に活動されていることがわかりますが、なぜか、1月18日だけが空白になっています。12月も平日は全部埋まっていて、この三ヶ月間で空白になっているのは、2月にペルーから帰国された翌日である2月2日だけです。

そして、この1月18日という日は、ライブドア強制捜査が入った2日後であり、野口氏が亡くなったその日です。

もちろん、知事にだってプライベートな時間があって当然ですが、年末年始に一週間以上休まれた後のこの空白は何なのかは気になります。

「情報の真偽を保留」したままでフォーカスを当てるべき問題

さて問題は、これらの事実と、ゲンダイが報じた「野口氏、ライブドアの"石垣新空港周辺土地買収トラブル"に巻き込まれる?」という話が、うまくつながるかどうかです。

「政権与党や裏社会もからんだ革新系の政治家による壮大な陰謀があり、それに野口氏が巻きこまれた」と仮定すれば、ひとつのストーリーが描けることは確かですが、全体をつなげるには具体的な根拠が希薄であると私は考えます。

しかし「新石垣空港」問題自体については、また、公共事業を巡る疑惑ですから、たとえ明白な証拠がなくても追及すべき問題であるとは言えるでしょう。また、野口氏の事件を巡っては革新系のメディア関係者に不可解な動きがあることもほぼ事実ですから、それにも注目すべきだと思います。

だから、これは、「情報の真偽を保留」したままでフォーカスを当てるべき典型的な問題であると私は考えます。