空気コロッケ団

 やや大きめで
でっぷりと太った猫の毛並みのように滑らかで
つやつやとした輝くような衣の
空気コロッケ
 もちろん中身は空洞だ
いやそれは空気のコロッケだ
具の空気も衣もごく一般的なもので何の仕掛けもないが
空気に小麦粉と卵とパン粉をまぶす方法が
誰にもわからない
 空気コロッケ団だけがそれを作ることができる
 空気コロッケ団は盗賊だ
鮮やかな手口で魔法のように金庫の中身を盗み出す
そして空っぽの金庫の中には
必ず空気コロッケが残されている
 それを発見した人たちは
そのうまそうな匂いにつられて
証拠物件であるはずの空気コロッケを
たいてい全部たいらげてしまう
 そして彼らはその日初めて空気を味わい
空気のおいしさを知る
空気を味わうことができるようになって
呼吸が深くなり
脳が活性化し
よいアイディアを思いつき正しく判断できるようになり
空気コロッケを食った人は
みんなより金持ちになりより幸せになる
 そのことが知れわたると
誰もが空気コロッケ団の来訪を待ちわびるようになる
空気コロッケ団に目をつけられるだけの
財産を貯めようと必死になる
貧乏人の家には空気コロッケ団は決してやってこない
 貧乏人はあくせく働きあくせく呼吸し空気のおいしさを忘れ
ごく一部の金持ちだけが
空気コロッケを食べて空気のおいしさを知る
空気は誰にでも平等に分配され
誰にでも平等においしいままそこに存在しているのだが
空気コロッケは著しく偏在している

テンパって来て、変なポエムを思いついてしまったので、とりあえず記録しておきます。