「再犯者率=再犯率」の嘘
さて、問題です。次の文章を読んで下さい。
久しぶりに野球を見に行ったら、球場がガラガラで私設応援団の一群が中央に陣取っていてやけに目立っていた。
なんとなく居心地が悪くて、早々に引きあげてしまった。
前に見たサッカーの試合ではそういうことはなくて、若いカップルやら家族連れやらフツーの人が回りにたくさんいて、もちろんお揃いのユニフォームを着た応援団の人もいたけど、自分のような初めての者でも違和感なく安心してゆっくり見ることができた。
- 問題1: この文章から判断して、リピーター率が高いのは野球とサッカーのどちらでしょう。
- Aさんの答: リピータ率って何のことだろ?観客の中でのリピーター、つまりよく球場に来てる人の割合のことかな?応援団が目立ったという野球の方が、初めて来た人は少ないだろうから、答えは野球だ。
- 問題2: リピーター率から考えてプロスポーツとして将来有望なのは野球とサッカーのどちらでしょう。
- Aさんの答: リピーター率が高いってことは、一度野球を見に来た人は次も又来るってことでしょ。サッカーの方はリピーター率が低いんだから、今回来た人がまた来るとは限らないわけだ。だから、「野球の方が有望である」が答えだ。
これが、羊堂本舗:メディアで使われている性犯罪者の再犯率は嘘で解説されている、嘘のロジックです。
「リピータ率」と言った場合、「球場に来ている人の中にリピータつまり前に来たことがある人はどのくらいいるか?」という意味と、「一度球場に来た人がもう一度来るかどうか?」という意味が両方考えられます。前者と後者では、全く意味あいが違います。
この場合、問題文には「リピーター率」という言葉の定義がありません。文章に表現されているのが前者の意味ですから、Aさんは問題1では「リピータ率」という言葉は、前者、つまり「球場に来ている人の中にリピータはどのくらいいるか?」という意味だと判断して、「野球」と答えました。
しかし、問題2では、リピーター率の意味を「一度球場に来た人がもう一度来るかどうか?」というふうにすりかえてしまい、判断の基準としています。実は私も何が正解なのかわからないのですが、Aさんの問題2における推論が間違っていることは、はっきりしています。
再犯者率を再犯率と混同して、ミーガン法的政策の根拠とする主張は、このAさんと同じ論理の混乱があります。つまり、「球場に来ている人の中にリピータがどのくらいいるか?」という統計から(上記の問題のようなあやふやな主観的な観察でなくて客観的な根拠のある数字が与えられたとして)、「一度球場に足を運んだ人がもう一度球場に来る割合」を判断するということです。
例えば、球場の中で応援団が1000人、一般客が9000人だったとという数字から、「一度、球場へ足を運んだ人のうち1割はまた球場に来る」と断言することです。観客の動向は、球場内の応援団の人数の割合とは全く関係ありません。
同じように、再犯者率(犯罪者の中で犯罪歴のある人の割合)と再犯率(犯罪を犯した人がもう一度犯罪を犯す割合)とは直接のつながりはありません。上記の野球とサッカーの例のように、再犯者率相当のリピーター率は野球の方が高くても、再犯率相当のリピーター率はサッカーの方が高いと言うケースもあり得ます。(問題文の内容が、代表的な一般客の動向を表現していると想定した場合)
もちろん、ここで指摘していることは「ミーガン法には効果がない」という主張の根拠にもなりません。しかし、ミーガン法は(法的な常識から見て)掟破り、前例無し、非常手段的色彩の濃い法律ですから、立証責任はミーガン法推進者の側にあって、反対者は推進者の言うことにケチをつけられれば、それだけで勝ちになります。