小泉さんは「届く言葉」で話す

「幹事長に武部」と言われても、一般人には何のことかわからない。タイムリーに切込隊長が解説してくれたけど、意外にもかなり本気の改革派で小泉さんに忠実ということらしい。

「党人事では突っぱって、内閣ではやや妥協」というのは、「いざとなったら選挙だよ」という脅しにも思える。

小泉さんの人事は、いつもこのようにメッセージ性が明解で、今回の場合、郵政民営化を本気で中央突破しようという意思が明確に見える。

それで、いわゆる抵抗勢力の人にも、このメッセージは届く。というか、我々にはわからないような細部のニュアンスも含めて、小泉さんが「本気だよ」と言っているのを実感しているのではないか。

党人っぽさが濃い政治家は、記者会見で何を言っても、それは建前としてまともには受け取らない。マニフェストとか所信表明演説とかも、単に素人をごまかすツールとしか見てないだろう。そういう人にメッセージを確実に届けようとしたら、「人事」という言葉で話すしかない。小泉さんという人がその言葉で話していることは、彼の政敵にとっても非常にわかりやすい言葉なのではないか。

つまり、抵抗勢力と小泉さんは、この「人事」というメッセージ体系について、一人一人の人選と与えた役割が何を意味しているのかということについて、細部まで合意できている。小泉さんがそこにこめた意味を、抵抗勢力が見逃してしまうことは、おそらくほとんどない。

小泉さんの人事は自民党に届く言葉で、同様に、ワンフレーズポリティクスは大衆に届く言葉で、自衛隊イラク派遣はブッシュに届く言葉だ。

小泉さんという人は、相手に「届く言葉」を使う人だと見ると、本質が見えてくる。意外にも、信長より家康のタイプなのかもしれない。信長の言葉は、同世代の武士にはあまり届いていない。家康は、秀吉の死後、強烈なメッセージ性のある政策を次々打ち出して、秀吉によってピークを迎えた戦国のトレンドを逆転させ、縮小均衡型の世の中に世の中全体を導いた。家康は自分の政策を誰がどのように受け取るか計算していて、その計算はだいたいあたっている。関ヶ原も、大阪夏の陣、冬の陣も、間違って反対側に行ってしまった人はほとんどいない。誰もが家康の「言葉」を理解した。そこが信長と違う所だと思う。