ノードレイティングP2Pはリベラリズムの具現化?

こんなこと書いてる場合じゃないんだけど、jiangminさんのコメントには重要な論点がいくつも含まれているんで、思わず反応してしまう。

中身はあまりよく考えて書いてません。

我々は異なる価値観の存在を許容できるか

ノードレイティングP2Pは、簡単に言えば、P2Pネットワークをいくつかの領域に分割して、それぞれの領域が違うポリシーで運営されることを目指すものだ。うまく行けば、違うポリシーの世界とはゆるやかな連携を保ちつつ、個別のサブネットワークが併存することになる。

多様性があることで、国家権力の横暴に対する有力な安全弁となる。「誰もが明確に必要だと思う情報」は消せなくなるけど、「誰もが眉をひそめてしまうような情報」は、(完全には消えないまでも)あまり広く流通しないように抑制できる(はずだ)。

そこには、以下に述べるような技術的な課題がいくつもあるんだけど、一番重要なのは、「異なる価値観との共存」という政治的な課題である。

jiangminさんは、具体的に技術的な欠陥を指摘しているんだけど、私のこの提言の一番の問題点は、それがリベラリズムという政治思想に立脚していることだと思う。つまり、「違うポリシーの人が自分に干渉してきたらケンカするけど、そうでなくて、むこうはむこうで勝手にやってるなら、それで我慢する」という抑制をみんなが持ってほしいということだ。

これは、現実的にはあまり期待できない気が自分でもする。

やっぱり、気にいらない連中を荒らしたい奴の方が多いし、絶対数が多ければ、中には技術のある奴もいるし、その為の動員もかけられる。だから、それを防御するメカニズムが必要なんだけど、それでノードレイティングP2Pはその為の名案だと思ったけど、やっぱり難しい。

むしろ、これは政治的な思考実験としての意味があるような気がする。もう少し、技術的な詳細を明快にすれば、「なんでこれが不可能なのか?」という政治的な理由を考えるため問題設定にはなると思う。

例えば、半数より多くの人が「異なる価値観との共存」を重視するならば、残りの連中による荒らしからネットワークを守るような仕組みを考えること、あるいは、どれくらいの割合でリベラリストが必要なのか考えることは技術者の仕事だ。しかし、そういう人を増やしていくのは、技術者の仕事ではない。それが本当にいいことなのか考えるのもやっぱり違うだろう。

複数ノードを連携させて荒らしをする

で、jiangminさんの言う具体的な手段は、データを受けとるノードとそれをバラまくノードを分けるというものだ。直接的には、バラまく方のノードがマイナスレイティングされて排除されていくので、問題ないと思うが、正直言って「複数ノードを連携させて荒らす」という手法は全く考慮してなかった。他にも、何か問題があるかもしれない。

不法データリストは「おいしいデータリスト」である。

それと、同時に示されている重要な論点がこれ。

自分と最も反対のポリシーから不法データリストをもらえば、それは「自分が欲しいデータのリスト」になる。そして、そこでマイナスレイティングされているノードのアドレスは、そういうデータを持っていそうな人だ。

つまり、明確なポリシーを提示してレイティングサーバを運用すると、それに反対の人にとっては、(そのポリシーと逆の目的にとって)有用な情報サービスになってしまうわけだ。

ただ、そのポリシーに反する人がある程度の数存在してないと、その情報を活用することはできない。そして、それが法のグレーゾーンにからむ場合は、リスクを冒して、レイティングサーバや基幹ノードを立ち上げないといけない。

そういう人がたくさんいるなら、これは仕方ない気がするのだが、これはリベラリズム的な極論になるのかな?