[?date=20031023#c08:title=子供を救うまでの「長い道のり」]

児童相談所の役割がなんなのかを、もう一度定義し直す必要があると思います」という私の指摘に対して、snowさんとおっしゃる関係者と思われる方から反論をいただきました。おっしゃることはよくわかるのですが、私の言いたいこととはすれ違っているように思えるので、もう一度これについて書きます。

snowさんはこのようにおっしゃっています。


「大丈夫」とは言っていませんよ。
今、これほど件数が伸びた虐待については、各都道府県でどのように対応するか、まだマニュアルを作っている段階のところも多いと思います。そこで、現場の人たちはいま頑張っているわけです。対応マニュアルなどを作成し、それを所内の虐待担当チームから所内全体の会議まであげて、さらに自治体の首長の段階まであげて全体で取り組みたい、というように積み重ねています。しかし、まだ現場でも試行錯誤の段階ですし。この問題のために首長を動かすまでにはまだ長い道のりだと思います。


私が言いたかったのは、中ですでに頑張っている人たちはいる、人員の強化(ボランティアなども含めて)も考えている、しかし組織を動かすのにはある程度実績を積んだり手順を踏んだりが必要であるし、それをまったく内部のことも何も知らない方に簡単に書かれたくなかった、ということです。

「全体で取り組みたい」「積み重ね」「長い道のり」「実績を積んだり手順を踏んだりが必要」。こういう部分が私の理解できてない所だと思います。

おそらく、福祉や対人援助の仕事は、モノでなくヒトを相手にする仕事ですから、一人一人が気持ち、誠意を持って案件にあたる必要があると思います。その為には、全員が納得して仕事をすることが重要なのでしょう。ですから、ルールやマニュアル、枠組みを作る時にも、トップダウンに正解だけを決めてそれに従わせればいいものではなく、各人が納得できる形で決めなくてはいけない、決める内容と同じく、決めるまでのプロセスが重要なのだと思います。その点を経験的にわかった人でないと、福祉の仕事はできないとsnowさんはおっしゃっているのだと思います。

私もそれは同感です。もし、私が何らかの援助を必要としていたら、snowさんやsnowさんの属する組織にお願いしたいです。各人が機械的にルールどおりに対応するのではなくて、個々のケースやニーズをきめこまかく理解して、一緒になって考えてくれるような人を求めると思います。

ですが、自分の子供の命がかかわっている事態で「長い道のり」と言われたら困ってしまいます。

「長い道のり」というのは、個々のケースのことでなくて、現在でも個別の緊急事態には対応できているけど、さらにそれを改善することが「長い道のり」ということはわかっています。その改善を無理に一気に進めたら、これまで築きあげてきた組織内、組織間の信頼関係が失なわれてしまうと、snowさんはおっしゃるでしょう。しかし、そういう種類のトップダウンの改革を行なわないと、現在の事態には対応できないのではないでしょうか。

だから、私は「児童相談所の役割がなんなのかを、もう一度定義し直す必要があると思います」と言っているのです。要するに、これまで築きあげたものを壊さないと対応できない任務を要求されているのではないか、ということです。

snowさんも改善の必要は認めていらっしゃると思いますが、その「長い道のり」の間に、何人も子供が死ぬでしょう。そのたびに「がんばっている現場の人」が非難されるのではないか、私をそれを心配しているのです。その非難に動かされて、これまでできていたこともできなくなってしまうのではないか。私をそれを心配しているのです。

「長い道のり」という言葉が、snowさんの自分の仕事に対する熱意と適性を表わしていると思いますが、同時に今の事態に対応する役割としての不適格を意味しているのではないでしょうか。これはsnowさんを非難しているのではありません。ただ、snowさんは無理難題を要求されているので、その無理難題を完璧に行なうことはできないでしょう、と言っているだけです。それに対して(私の説明が不足していることもありますが)「無理難題ではない。私は無理難題をこのように解こうとしている」とおっしゃるので、「やはりそれは無理難題です」と言っているだけです。

どこに「無理難題」の本質があるのか、それは私は理解してないかもしれません。もし違っているとしたら、できれば、それをsnowさんに教えていただきたいと思います。でも私はやはり、今、児童相談所は無理難題を要求されていると考えています。「子供を救え」という課題は、それだけでとてつもなく大きく難しいことだと思うのです。