2・6・2の法則

結局、この法則のポイントはパーセンテージの問題ではなくて「集団から頭を頭を取ると頭がまたはえてくる、しっぽを取るとしっぽがまたはえてくる」ということだと思う。もう少し正確に言えば、集団内の個体に対してしっぽや頭になるような圧力がかかるということだろう。

例えば、50人のクラスから成績の良い方の一割と悪い方の一割を抜いて、別のクラスの中間の二割とトレードする。トレードした直後には、両方のクラスとも釣鐘型分布が崩れている。しかし、数ヶ月たつとなぜか釣鐘型が回復する、釣鐘形の平均的な分布が戻るような圧力があるというのが、この法則の主張だろう。

つまり、最初のクラスでは、1から5が抜けたために成績が6番の人がトップになるわけだが、この6番の人は成績が向上する。下の方では、45から50が抜けたために44番の人がビリになるわけだが、この人は成績が落ちる。6番の人は最初の1番に近づいて、44番の人が当初の50番なみになる。その結果、全体の分布はトレード前と同じになる。

そのような傾向が統計的に見られるかどうかで検証できる。たくさんのクラスの中の成績の分布を調べてみた場合、どのクラスでも釣鐘型の分布になるはずだが、もし成績がランダムに散らばるとしたら、正確な釣鐘形からは一定の誤差があるはずだ。そして、その誤差の平均値も統計的に予測できる。もし、2・6・2の法則が成りたつとしたら、実測値は期待以上にピッタリ釣鐘型になる。つまり、釣鐘型からの誤差の平均が有意に小さくなるはずだ。

だから、あとは「集団」とか「成績」を厳密に定義して、どのような「集団」やどのような属性値についてこの主張が成り立つかを明確にすれば、社会学的に検証可能な法則になると思う。例えば、普通の学校で成りたつとしても、通信制でほとんど顔を合わせない学校で純粋に事務処理のためにできているクラスでは成りたたないだろうし、成績では成りたつとしても、身長について同じことをしても成りたたないだろう。つまり常に通用する法則でないことは自明なので、その適用範囲を明確に定義すればいいということだ。