「それを言っちゃおしまいよ」が終わってる

JMM 6/30号の村上龍のコラム。


よほどの無知かバカではない限り、日本の国と地方の財政危機を知らないわけはありません。多くの人がいずれ増税が行われると心のどこかで確信しているのだと思います。そういったムードを小泉首相は把握していて、「みなさんも内心では消費税増税は必要だと思っているでしょう? でも、わたしはやりませんから安心してください」ということを、暗黙のうちに伝えようとしたのだと思われます。それは日本的な「それを言っちゃおしまいよ」「言わぬが花」「あ・うんの呼吸」みたいなコミュニケーションの方法ですが、もっとも深刻な問題はそういったパラダイムそのものが機能しなくなってしまっていることだと思います。恐怖や不信や不安を多くの人が心の奥に隠している社会が活性化するわけがありません。

そう言われてみると、確かに「恐怖や不信や不安」をカミングアウトする手段が日本に無い。絶望的に封じられている。