OS:ディストリビューション=宗教:X

本当の意味でOSを一から創造するってことはとてつもないことで、実際、UNIX以降30年間、たくさんの天才がトライしたけど、UNIXの作者が作ったPLAN9も含めて誰もこれだけシンプルで実用的なものを創造してない。少くとも革新的でメジャーになったものは無い。ちょうど難易度が宗教を創造するのと同じくらいなんじゃないかと思う。

なぜ難しいかと言うと、OSと宗教は世界をマッピングするものでかつ日常的に使うものだからだ。open/read/write/closeというシステムコールや階層ディレクトリは誰にでも理解できて、それにたくさんの事物をマッピングできる。世界に例えばソケットのような新しい物事が生まれても、ちょっと工夫すれば概念を増やさず収容できる。こういうものをゼロから作るのは天才の仕事だ。誰にでもできるものではない。

それで、この二つに関しては天才が作ったものをそのまま使うのが普通だったのだが、OSの方はちょっと事情が変わってきた。もうちょっとカジュアルに世界を創造したいというニーズと並の秀才でもそれを可能にするシーズができてきたからだ。

ディストリビューションは、世界そのものであるという点ではOSと等しいものだが、パーツを集めてつじつまを合わせるとできてしまう所が、OSとはかなり違う。つじつま合わせと言ってもいろいろ難しい所はある。凡人にはできない。でも、1000年も2000年も救世主が生まれるのを待つみたいな、おおげさなものではない。この数年間でいくつもいいものができている。

OS:ディストリビューション=宗教:Xという方程式のXに相当する、哲学と世界観とライフスタイルをそれなりに矛盾なく体系化したものが、もっといろいろあっていいと思う。このXの難易度はちょうどディストリビューションくらいだ。誰にでもできるものではないが、ちょっとセンスのいい奴ががんばればできる。

アーノルド・ミンデルという人の仕事はちょうどこのXになると思う。ただの心理学の理論ではない。これを生きることができる。仕事に意味を与えることができる。簡単にインストールできるし、その世界観に外部のリソースを追加インストールすることができる。矛盾が少なく管理が楽になる。夫婦喧嘩と宗教紛争を同じフレームワークで解決してしまう。死にたくなった時助けてくれる。それどころか死ぬ時にも助けてくれるらしい。おまけに、病気も直してくれる唯物論を超えた世界観を提示しているが、物理学とも矛盾しない

俺は、debianとこのミンデルのユーザである(どちらについてもパワーユーザとは言えないが)。どちらも胸をはって勧めることができる素晴しいものだが、強制しようとは思わないし、気がむいたら他のものにのりかえるかもしれない。ただ、誰もがこういうものを意識的に選択した方がよいと思っている。パソコンと人生は、どちらにも集約できない個人的なニーズがあるものだからだ。そしてこれを言う時はいつも概念の伝達に苦労する。ディストリビューションの方は一般的でないが一応言葉があるからまだよい。Xの方には言葉さえも存在しない。