_

たぶん、三菱の社内では「だから言わんこっちゃない。俺はこういうことは駄目だとずっと思ってたんだ」なんて言ってる奴がうようよしてることだろう。しかし、日本の会社はトップが独断専行でモノを決められない体質だから、下が嫌がってるのに無理に上がやらせたなんてことは絶対にありえない。会社全体が一丸となってやっていたに決まってる。

それで、これと同じことがもっと大規模にドラスティックに起きたのが、終戦の時だろう。軍部が情報操作してたとか、しかたなくやってたというのは真赤な嘘で、庶民が率先して戦争したがっていたのだ。

(南京陥落のお祝いで)40万人の大提灯行列ですものね。(中略) 僕の記憶でも軍需産業に絡んでいた人の目茶苦茶な好景気ぶりというのがあって、やっり国民は沸き立っていましたね。これは丸山真男さんの本に出てくるんですけど、在郷軍人会とか、消防団とか、坊さん、神主さん、校長先生など、ぼくらの町の人々が、それ行けって燃えてるんですね。おそらく軍部よりも燃えてたんじゃないでしょうか。 (講談社文庫「日本史7つの謎」の井上ひさしの発言より)

これで戦争が終わったら、知らん顔して軍部や天皇のせいにしちゃったわけね。こう欺瞞が根っこにあると、後ろ暗さから人間は極端にヒステリックになる。空想的平和主義も社会党朝日新聞も、こういうメカニズムで産まれてきたわけだ。

で、戦争のことだと遠い昔の関係ないことみたいに感じるけど、バブルの崩壊も一種の敗戦であって価値観が極端に転換している。 30年間当然のようにやってきたことを否定されているのは、三菱だけではないはずだ。転換しなくちゃ生きていけんが、否定されているのは会社だけでなく会社の一部であった俺自身なんだ。この痛みを忘れちゃいけんのよね。