仕事がしたくて泣く

去年、巨人の上原がベンチから敬遠を指示されて泣いた場面が話題になったが、いいピッチャーというのはそういうもので、いいバッターと勝負したくてしょうがないのだろう。さすがに泣いたのは上原が初めてだろうが、敬遠指示であきらかに不満げな顔をしたり無視して勝負してしまう奴はこれまでもいた。しかし、逆に敬遠したいのに勝負を命ぜられて泣いた者はいない。逃げの気持ちが先行していては、とてもプロのピッチャーにはなれないということだ。

職人とはそういうもので、仕事に向かってしゃにむに突進したがる。ピッチャーは勝負したがるし、大工は家をたてたがり、プログラマはコードを書くのに夢中で、軍隊はやみくもに戦争をしかけようとする。だからこそ、現場から一歩引いた背広組のシビリアンコントロールというものが必要になる。

これまでの警察の不祥事というのは、こういう意味の現場の突出でありシビリアンコントロールの不足であった。現場の突進力は危険だし管理しなくてはいけないが、一方、こういう勢いがなければそもそも仕事ができず、組織の目的を達成できない。やたら敬遠したがるピッチャーは根本に病をかかえているようなもので、どんなに球が速くてもものにならない。事件から逃げたがる警察もこれまでの管理の枠組みではどうしようもない深い問題をかかえているのではないか。