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子供が問題を起す場合は、子供を見るより親をカウンセリングしたり治療するほうが話が早いと言う専門家が多い。その説を日本全体に適用するならば、若者の凶悪犯罪多発も、テレビゲームや受験戦争がどうのこうのでなく、大人のあり方を考えたほうがいいのかもしれない。そう見ると、多くの事例でセットのように警察の怠慢が出てくるのが気になる。

職業と言うのは、金を稼ぐために言われたことをイヤイヤやる面と、自分が面白くてしたいことをしたいようにする面がある。例えば、プログラマと言っても好き勝手にプログラムをするわけでなく、客が要求する仕様に合わせて、指定されたOSで指定された言語、ツールを使って組む。採算を見なきゃいけないし、打ち合わせをしなくてはいけないし、大規模なプロジェクトでは政治的な動きもすることもある。しかしいったんプログラムを作りはじめると、職業であることを忘れて損得抜きで夢中になってしまう瞬間があるものだ。顧客の要望以上の品質や性能を追求したり、余分な仕掛けをしこんでおいたり、内部構造をキレイにしたくて客とケンカしたりする。しかし、そういう「のめりこみ」の中から、ある種の職業的な直観が産まれてくるものであり、そういう経験をしてこそプロとして一人前である。

警察官も商売だから、興味のもてる事件とそうでないものがあるのもわかる。人員には限りがあるのだから、全体としてのコストパフォーマンスを最大化するために、つまらない事例をフィルタリングして重要な事件に集中しなくてはいけないこともあるだろう。我々も、客の言うことをダイレクトに全部聞いていてはよいシステムはできないので、適当にあしらったりごまかしたりすることはある。本当に客のためになる判断がちゃんとできるのが我々プロだという自負があるから、どうでもいい所で手抜きをすることもある。しかし、警察の怠慢が問題になる事件を見ていると、そういう職業的な直観が非常に深く歪んでいるような気がする。事前の訴えを無視された事件はどれも他で手抜きしてでも、即対応すべきではなかったのか。そこにプロとしての直観は働かなかったのだろうか。

プログラマを管理するのも大変な面があり、やれ*JAVA*が使いたいとかLINUXがいいとか言って最新技術を使いたがったり、難しいシステムばかり組みたがり単純な仕事だけ与えておくと腐ってしまったりやめたりする。警察だって商売だから、殺人とか暴力団とか派手な物件を扱いたいとか好みがいろいろあってもおかしくはない。そういう意味で面白くない事件を無視するというのは、プロ意識が強すぎたりちょっと方向が間違っているだけだから、枝葉末節だ。だが、5000万円の恐喝とかストーカー殺人は、警察官ならば他人の縄張りを奪ってでも担当したいような「おいしい」事件ではないだろうか。こんなものがむこうから飛び込んできたら、ワクワクしてしまうというのがプロだと思う。

もちろん、職業だけが人生じゃないから別のものがいきがいでもいいのだが、自分の人生そのに対する誠実さがないから、仕事がおもしろくなく自信がなくてイライラしている人が多い・・・という日本の深い病根を、明確に照しだしているのは*17才*ではなくて警察なのだ。