ネットのスピードが極限まで速くなったら

ある人から「ネットのスピードが極限まで速くなったら何が起こるか思考実験せよ」という宿題をもらっていて、ここ1週間ほど悩んでいたのだが、*グヌーテラ*がヒントになってようやく解けたので、ここに書いておく

ネットがスピードアップすると、まずクラスタが作りやすくなる。クラスタとは、ひとつのサーバを複数台のマシンで構成すること。どれかが壊れても、他がカバーしてシステム全体としては動き続ける。現在、これのネックはクラスタを構成するサーバ同士の通信だ。仕事を分けあうにせよ、同じ仕事を並行でやるにせよ、クラスタではサーバ同士の通信がたくさん発生する。現在は、これがネックで何百台、何千台というクラスタはできないが、もしネットが速くなれば台数をいくらでも増やすことができる。

これが極限に達すると、ネット全体がひとつのクラスタとして機能するようになる。何億台、何兆台というマシンがひとつのマシンのようにふるまうのだ。 webだったら、ファイルにURLをつけて、このクラスタにほうりこむ。すると、URLとファイルはクラスタの中のどこかに記録される。次にURLで読みだすと、その「どこか」がファイルを返してくる。それが実際にどのマシンにあるかなんて、誰も気にしなくなる。

そして、サーバという概念が消滅する。ネットの参加者は全て同等なのだ。そして、クライアントが少しずつネットのごく一部のストレージとプロセッシングを受けもつ。自分のマシンに誰のファイルが置いてあり、自分のファイルが誰のマシンに置いてあるかなんてことは誰も考えない。クライアントの資源と信頼性には限りがあるが、もの凄い台数で多重化すれば、十分な信頼性を確保できる。

これは全くの夢物語でなく、JINIというJAVA*を家電化するプロジェクトでは、これに近い概念のネットワークを考えており、既に実装も提供されている。これに「ネットの速度→∞」という仮定を加えれば、「クラスタの台数→∞」という結論はそんなに荒唐無稽なものではない。

さて問題は、こういうふうになったネットは管理できないことだ。そもそもネットを管理するというのは、サーバの存在に依存している。サーバがなくなれば、管理するためのてがかりがない。 mp3だろうが、核爆弾の作り方だろうが、睡眠薬の致死量だろうが、何でもネットにタレ流しで止められない。

ということで、宿題の答えは「ネットは一切管理できなくなる」でした。