グヌーテラ

グヌーテラというアブナイものが出現した。簡単に言うとmp3を交換するためのソフトだ。技術的にはIRCのようなプロトコルで、中央にサーバがでんと構えているというモデルを取ってない所が特色である。サーバがクライアントでありクライアントがサーバである。 AさんがBさんにつなぎ、BさんがCさんにつなぎ・・・という調子でじゅずつなぎになったネットワークがひとつのデータベースとして機能する。このネットワーク全体に「XXXXというファイルはありませんか?」という問い合わせを投げ、ファイルを持っている奴が「ここにあるよ」というと、そこへもらいに行く。もらいに行く時はダイレクトにそこに取りにいくようだ。

ブロードキャストが多くてネットワークが飽和しないかということと、問い合わせがファイル名だけなのでファイルを見つけることが難しそうだから、たくさんのマシンがつながってきて規模が大きくなった時にどうなるかちょっと不安である。ただ、全体的にシンプルなモデルなので、運用でカバーすればなんとかなるかもしれない。

・・・などとノンキに技術論をやってる場合ではない。これが画期的なのは、そういう技術的なことではなくて社会的なインパクトとスタンスだ。まず、こいつら確信犯なのだ。つまり、CDから録音したmp3データの交換(ひょっとしたらワレズも)というあきらかな違法なことをサポートする目的で作られたソフトでありプロトコルであること。それから、*オープンソース*という武器を法律破りのツールとして意識的に使っていること。

ここに、*グヌーテラ*は「飢えた弁護士どもにも負けない」と誇らしげに書いてある。つまり、プロトコルが中央にサーバを置かない分散処理だから、サーバがやられても(核爆弾にって書いてあるけど警察にだろう)、ネットワークとしてはびくともしない。オープンソースだから、開発者が逮捕されても誰かが引きついで続きをやってくれる。このように、逮捕やサーバの押収といったトラブルを勘定に入れてシステムを設計している。これは音楽業界がどんなにがんばっても止められないよ。いったい、どうなるのだろう。

それと、もうひとつ巧みなのが、石原都知事の外形標準課税と同じ戦略を取っていること。つまり、悪者をターゲットにして庶民の感情に訴えるという作戦だ。日本では銀行、アメリカでは弁護士、をたたくと喜ぶ人が大勢いる。「飢えた弁護士は核兵器より破壊的だ。でもグヌーテラは負けない」とはお見事!でも、これで弁護士はオープンソースを目の敵にするだろうな。