脳の戸惑いが快感なミクラシック+α名曲名演集

しばらくの間、珍しく真面目に仕事をしていて、ブログも巡回もサボっていたら、その間にいろんなことが起きて浦島太郎の気分です。

そこで、リハビリを兼ねて、自分が気に入った初音ミクの曲を集めてみました。と言っても、これを読んでいるみなさんはもうご存知のものが多いかもしれませんが。

まずは、このピチカート・ファイブの名曲から。無機質な人工音声のボーカルが曲の雰囲気によくマッチしてます。

次はうって変わってプログレの名曲から。カタカナ英語の伸びやかな歌声が独特の世界を形作っている。

ややオヤジホイホイ気味の懐しい名曲。ニュアンスを細かくつけると、ここまで歌えるのかという感じ。

ミクオリジナルの名曲もたくさん生まれていて、既にオリジナルアルバムもたくさん作られているようですが、やはり、その中でもこの曲は出色の出来だと思います。ネギ踊りと共に歴史に残る名曲でしょう。

それでここまでは、「人工音声なのに人間に迫る」という方向性ですが、本当に面白いのは「人間には(そして既存のあらゆる楽器にも)不可能な演奏(歌唱?)」だと思います。

たとえばこれ

息継ぎとか声域とか、そういうのを全く無視して単純にピアノ曲をそのままミクの声にしてしまうという暴挙。しかし、私はこれが「初音ミク」の本筋だと思います。

エレキギターの歴史を考えてみても、最初はアコースティックギターの代替品でしかなくて、そうであるうちは、物珍しさが消えてしまうと微妙なニュアンスの違いが気になって、なかなか一人前の楽器とは見なされません。しかし、音量レベル調整の失敗でしかなかったディストーションを逆手に取って、ファズギターというアコースティックギターには不可能な表現が生まれた時に、エレキギターは本物の楽器になったのです。

初音ミククラシック音楽は意外に相性がよくて、ミクラシックというジャンルとして確立しているようです。日経パソコンのコラムにもなったようだし。

私は、このへんのバッハの曲が好きですが、これらも本格的な声楽家が歌うのとは全く違う形でバッハの曲の素晴しさを引き出しているような気がします。

これは、ショパンとは違って、訓練された人間には全く不可能なことではないけど、普通の人間が普通の声でできるものではありません。ソロのメロディーとして聞こえているうちは鼻歌の延長のようで、多声でハモる時はパイプオルガンのように完璧にハモります。注意して聞いていると聞いている自分の脳の認識が、楽器と人の声の間で細かく切り替わっていて、脳が戸惑っている感覚がします。

この脳の戸惑いに意識的にフォーカスを当てるとちょっと快感なのですが、こういうふうに脳が特定のモードで停止することを許さないのは、ある意味でアートの本質につながる部分だと思います。