アンカテ 2021-01-14T21:37:15+09:00 essa Hatena::Blog hatenablog://blog/10257846132615859015 トランプのアカウント停止と「どうしますボス」攻撃 hatenablog://entry/26006613677282574 2021-01-14T21:37:15+09:00 2021-01-14T21:37:15+09:00 村上龍の「愛と幻想のファシズム」は1980年代にディープフェイクを予言していて、しかもそれは、革命を起こす側の「俺たちはフェイクを使うけど、本当にフェイクで世の中を支配しているのはお前らだろ」という怒りを現実化したアイディアとして描かれていて、凄いなあと思うけど、そのフィクションの中で、フェイクビデオを使って革命を起こそうとしたのは、カッコいい若いカリスマだった。 読んでから30年以上たって、似たようなことが起きて突然それを思い出した。フェイクニュースを活用して大変な騒乱を引き起こしたカリスマの支持者たちは、確かに「おまえらの方がフェイクだ」と言って怒っているが、現実はさらに奇怪で、そのカリス… <p><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C2%BC%BE%E5%CE%B6">村上龍</a>の「愛と幻想の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D5%A5%A1%A5%B7%A5%BA%A5%E0">ファシズム</a>」は1980年代にディープフェイクを予言していて、しかもそれは、革命を起こす側の「俺たちはフェイクを使うけど、本当にフェイクで世の中を支配しているのはお前らだろ」という怒りを現実化したアイディアとして描かれていて、凄いなあと思うけど、そのフィクションの中で、フェイクビデオを使って革命を起こそうとしたのは、カッコいい若いカリスマだった。</p> <p>読んでから30年以上たって、似たようなことが起きて突然それを思い出した。<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D5%A5%A7%A5%A4%A5%AF%A5%CB%A5%E5%A1%BC%A5%B9">フェイクニュース</a>を活用して大変な騒乱を引き起こしたカリスマの支持者たちは、確かに「おまえらの方がフェイクだ」と言って怒っているが、現実はさらに奇怪で、そのカリスマは74才の不動産屋だった。</p> <p>これは、書く側でなく受け取る側の想像力の限界で、細部まで正確な予言は理解されず受け取られないということだろう。</p> <p>従って、これが終わりではなく、我々の想像力を上回る次のトランプが出てくるのは、間違いないと思う。</p> <p>でも部分的には予想できることもあって、次のトランプは「どうしますボス」攻撃を使うと私は思う。「どうしますボス」攻撃とは、ボケての有名のネタから思いついた私の造語だ。</p> <p><a href="https://bokete.jp/boke/25970758">どうしますボス - 2014年11月07日のその他のボケ[25970758] - ボケて(bokete)</a></p> <p><a href="https://d2dcan0armyq93.cloudfront.net/photo/odai/400/27ae5ecce4b86ec2185ed1fa1e6aa824_400.jpg" class="http-image"><img src="https://d2dcan0armyq93.cloudfront.net/photo/odai/400/27ae5ecce4b86ec2185ed1fa1e6aa824_400.jpg" class="http-image" alt="https://d2dcan0armyq93.cloudfront.net/photo/odai/400/27ae5ecce4b86ec2185ed1fa1e6aa824_400.jpg"></a></p> <p><span style="font-size: 150%"><b>「どうしますボス」</b></span></p> <p>次のトランプが右になるのか左になるのかわからないが、分断を今回のトランプよりうまく使うことは間違いなくて、分断を憂いてこれをなんとかしようとする人をまず攻撃する。</p> <p>その攻撃は、「あいつはトランプの一味だ」というレッテルを貼ることだ。これからトランプの残党狩りが始まるので、レッテル貼りがうまく行くなら、これは強烈な攻撃になる。</p> <p>分断を憂うる人は、たいてい何か難しいことを言うので、それが「どうしますボス」攻撃に対する<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C0%C8%BC%E5%C0%AD">脆弱性</a>になる。次のトランプは、まずトランプの後継者となり、そういう人たちに「どうしますボス」と言って、無理矢理自分の陣営であることにしてしまうのだ。</p> <p>そのターゲットの言っている事はよくわからないけど、残党が「どうしますボス」と言うのだから、あいつは多分トランプの一味だろうということで、残党狩りによって、その人はものを言うことが難しくなる。そういうことが何回か起これば、包摂を志向する人はビビって簡単にものが言えなくなる。</p> <p>そういう方向に状況が極まることは、次のトランプにとっておいしい状況になるだろう。だから、地ならしとして、分断を強化するために「どうしますかボス」を使うと私は予想する。</p> <p>トランプがもう出てこないようにと念には念を入れてやったことが、全部、「どうしますかボス」の効き目を強化する。</p> <p><a href="https://deadline.com/2021/01/parler-ceo-says-service-dropped-by-every-vendor-and-could-end-the-company-1234670607/">Parler CEO Says Service Dropped By “Every Vendor” Could End Business – Deadline</a></p> <blockquote><p>“Every vendor from text message services to email providers to our lawyers all ditched us too on the same day,”</p> <p>「テキストメッセージサービスからメールプロバイダー、弁護士まで、すべての業者が同じ日に私たちを見捨てました」</p></blockquote> <p>「同じ日に」というのがポイントで、これは保守派向けの Parler という<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/SNS">SNS</a>のCEOの発言だが、この<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/SNS">SNS</a>が暴力的な扇動を呼びかける書き込みを放置して、具体的な暴力事件をたびたび起こしているなら、警戒されるのは当然だ。</p> <p>しかし、「同じ日」に切られたということは、これらの多くの業者が、Parler の運営方針をしっかり吟味して問題点を確認した後に、その決断をしたわけではなくて、「<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/Google">Google</a> と <a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/Amazon">Amazon</a> に切られたヤバい奴」というレッテルで反射的に反応していることを意味している。</p> <p>あるいは「ここと取引していると自分たちも <a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/Google">Google</a> と <a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/Amazon">Amazon</a> と <a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/Twitter">Twitter</a> に切られかねない」と思ったのだろう。私だってその会社と取引していたら同じように考える。</p> <p>こういうレッテル貼りと波及効果によって、トランプの残党狩りが進むとしたら、それを次のトランプは喜んでいるはずだ。</p> <p><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/Twitter">Twitter</a>は、最後通告後のトランプの「いったん家に戻れ」「法律を守れ」という発言を、そのまま受け取らなかった。「これは支持者が扇動と解釈する余地を残している」というのだ。私もこれは正しい判断だと思うのだが、問題は、これが正しいかどうかではなくて、その正しさがどのように担保されているのか、ということだ。</p> <p>この解釈の正しさは、「トランプがどういう奴か」ということで担保されている。私も、あの状況でトランプの発言をそのように解釈することは正しいと思うが、他のユーザの発言を同じように曲解して Ban したら、「ちょっと待てよ」と思うだろう。何を言ったかより誰が言ったかの方が重視されている。</p> <p>だから、自分が考えていることや言っているが、トランプと正反対であっても安心できない。次のトランプは、あなたが言ったことでなくあなたが誰であるかに焦点を当てる。あなたを「発言を曲解されても仕方ない人」にしようとする。「<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/Twitter">Twitter</a>に Ban された人間と同等の人」にしようとする。</p> <p>あなたがこの状況を憂いているなら、それがそういう攻撃にとっての<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C0%C8%BC%E5%C0%AD">脆弱性</a>になる。</p> <p>私もまさにこの状況を憂いている一人で、しかも、私は、長文悪文の何言ってるかよくわからないブログをたくさん書いている。適当なエントリにリンクして「こいつはトランプの一味だ、ほらこのエントリを見てみろ」とか言われたら、自分でもそうかと思ってしまうかもしれない。ちょっと怖いので、私はナイキの運動靴を買うことにしよう。</p> <p>上から下まで安物を着たムサイ運動音痴のおっさんが、足元だけピカピカのナイキを履いた写真を上げたら、ナイキには迷惑だと思うが、背に腹は変えられない。</p> <p>いざという時に、この写真を出して「私は、ナイキの姿勢に早くから共感していました」と言えるようにしておこう。</p> <p>そういうブランドイメージが、私のような者に訴求することは確かだ。ナイキ自身はそんなことを考えてもいないし、歓迎もしないだろうが、純粋にビジネス的な判断としてそういう観点で考えた上で、似たようなことをする会社は出てくる。そうすれば、運動靴だけでなく、上から下までそういうブランドでキメることもできるし、そういうガイドブックとかセット販売も出てくるだろう。私のような人たちがそういう商品を買いまくるから、その戦略の優秀さも知れ渡るだろう。</p> <p>そうすると、「どうしますボス」攻撃をくらった時に、ナイキ以外を履いているとそれだけで印象が悪くなる。ナイキの競合各社は、ナイキがやったことをもっと極端にやるしかなくなるではないか。</p> <p>「何を言ったか」より「誰が言ったか」が重視される世界では、誰もがブランドイメージで身を守るしかなくなるのではないだろうか。</p> <p>そして、「誰が言ったか」だけを考えている人が集まって、結局はブランドイメージも棄損される。</p> <p>今の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%E1%A5%EA">アメリ</a>カの状況は、治安維持の問題として考えるしかない状況で、緊急避難として「誰が言ったか」で動くしかないのかもしれない。</p> <p>でも、どこかで「何を言ったか」に立ち戻ることは必要だ。トランプとトランプの支持者がモノを言えるようにして、一つ一つの「何を言ったか」を問題にすることが、「次のトランプ」にとって一番困ることになるだろう。</p> <p>治安維持目的の特定発言削除や一時的 Ban でなく、永久 Ban で口を永遠に塞ぐというのは、どういう場合にも悪手だ。それをしたら、人間はレッテルに引きずられて、レッテルを巡る判断をうまくハックする奴が出てくる。</p> <p>言わしておくしかないのだ。好きに言わしておいて反論するしかない。</p> <p>扇動者は変な方向に天才的なので、言わしておいたら、ああ言えばこう言うで議論に決着はつかない。でも決着が着かない場があるのはいいことで、そのコストはいつか報われる。変な方向の天才は議論をハックするのも得意だが、それよりずっとレッテルをハックする方がうまい。レッテルはいつかハックされ、大きな間違いをおかす。小さな間違いを潰せば潰すほど、いつか起こす大きな間違いはより破滅的なものになる。</p> <p>言論というのは、そういう意味で本質的に多元的なもので、決着が着かないことに意味がある。</p> <p>ものすごい勝手読みかもしれないが、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%EC%A5%F3%A5%C8">アレント</a>が、ワークという一元的価値観の領域と、アクションという多元的価値観の領域を分離しろと言ったのは、達見だと私は思っている。</p> essa 進化心理学をちょっと齧って思ったこと hatenablog://entry/26006613577114559 2020-05-31T19:02:24+09:00 2020-05-31T19:02:24+09:00 進化心理学の本を何冊か読んでみて、これは大変面白い分野だけど、ちょっとモノの言い方を間違えてると思った。言い方が悪くて受け入れられてないように感じて、もったいないと思ったので、それについて書いてみたい。 まず一番の間違いは、進化心理学ではすぐに「人間はこうだ」と言いたがる。これは、典型的な「主語が大きい」言い方だ。 進化心理学が本当に言っていることは、人間全部についてでなく一部の人間についての話だ。 昔々あるところに兄弟がいた。長男がカインといい、次男がアベルという。カインは嘘つきでアベルは正直者だ。これを見て、進化心理学は「人間は嘘つきだ」という。 人が自分をだます理由作者:ケヴィン・シムラ… <p><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BF%CA%B2%BD%BF%B4%CD%FD%B3%D8">進化心理学</a>の本を何冊か読んでみて、これは大変面白い分野だけど、ちょっとモノの言い方を間違えてると思った。言い方が悪くて受け入れられてないように感じて、もったいないと思ったので、それについて書いてみたい。</p> <p>まず一番の間違いは、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BF%CA%B2%BD%BF%B4%CD%FD%B3%D8">進化心理学</a>ではすぐに「人間はこうだ」と言いたがる。これは、典型的な「主語が大きい」言い方だ。</p> <p><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BF%CA%B2%BD%BF%B4%CD%FD%B3%D8">進化心理学</a>が本当に言っていることは、人間全部についてでなく一部の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BF%CD%B4%D6%A4%CB%A4%C4%A4%A4%A4%C6">人間について</a>の話だ。</p> <p>昔々あるところに兄弟がいた。長男がカインといい、次男が<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%D9%A5%EB">アベル</a>という。カインは嘘つきで<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%D9%A5%EB">アベル</a>は正直者だ。これを見て、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BF%CA%B2%BD%BF%B4%CD%FD%B3%D8">進化心理学</a>は「人間は嘘つきだ」という。</p> <p><div class="hatena-asin-detail"><a href="https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B086SLTKP7/hatena-blog-22/"><img src="https://m.media-amazon.com/images/I/417ph8T3WyL._SL160_.jpg" class="hatena-asin-detail-image" alt="人が自分をだます理由" title="人が自分をだます理由"></a><div class="hatena-asin-detail-info"><p class="hatena-asin-detail-title"><a href="https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B086SLTKP7/hatena-blog-22/">人が自分をだます理由</a></p><ul><li><span class="hatena-asin-detail-label">作者:</span><a href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B1%A5%F4%A5%A3%A5%F3%A1%A6%A5%B7%A5%E0%A5%E9%A1%BC" class="keyword">ケヴィン・シムラー</a>,<a href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%ED%A5%D3%A5%F3%A1%A6%A5%CF%A5%F3%A5%BD%A5%F3" class="keyword">ロビン・ハンソン</a>,<a href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C2%E7%C4%D0%C6%D8%BB%D2" class="keyword">大槻敦子</a></li><li><span class="hatena-asin-detail-label">発売日:</span> 2020/04/06</li><li><span class="hatena-asin-detail-label">メディア:</span> <a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/Kindle">Kindle</a>版</li></ul></div><div class="hatena-asin-detail-foot"></div></div></p> <p>たとえば、この本にそんなことが書いてるが、本当にこの本が言っているのは、「カインは嘘つきであなたはカインの子孫だ。なぜなら、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%D9%A5%EB">アベル</a>には子供がいなかったからだ」ということだ。</p> <p>しかも、カインはただの嘘つきではなく自覚のない嘘つきだという。カインは自分が嘘をついていることを知らないという。</p> <p>俺は、由緒正しい血筋の生まれなので、そんな恥知らずな先祖はいないと思った。誰だってそう思うだろう。先祖を貶されていい気分になる人はいない。ここは、もう少し丁寧にいうべきだ。</p> <p>カインが嘘をつき自分でそれを嘘と思わない確率は51%、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%D9%A5%EB">アベル</a>が同じことをする確率は49%。カインも<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%D9%A5%EB">アベル</a>も二人の子供がいて、親の遺伝子を受け継いで、ちょっとだけ変異がある。カインの長男が嘘をつきそれを嘘と自分で理解しない確率は52%、カインの次男は50%、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%D9%A5%EB">アベル</a>の二人の子供はそれぞれ、50%と48%。以下同様に親の遺伝子を受け継いて少しだけ変異する。</p> <p>あなたがカインの一族であるか<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%D9%A5%EB">アベル</a>の一族であるか、その確率は、それぞれの子孫が生き残った割合に比例する。カインより<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%D9%A5%EB">アベル</a>の方が生き残る確率がちょっとだけ高くて、カインの子孫が51億人、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%D9%A5%EB">アベル</a>の子孫が49億人。断言はできないが、あなたがカインの子孫である確率は<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%D9%A5%EB">アベル</a>の子孫である確率よりちょっと高い。</p> <p>こんなわずかの違いの話だ。でも、このような淘汰を何百世代も続けると、カインの一族が圧倒的に多くなる。</p> <p>そして、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BF%CA%B2%BD%BF%B4%CD%FD%B3%D8">進化心理学</a>の関心事は、生き残った一族の方だ。人間にはカインも<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%D9%A5%EB">アベル</a>もいて、あなたに兄弟がいれば、嘘をつきそれを自分が認知しない脳の傾向に、ほんのちょっとの偏りがあるだろう。その偏りはあなたたち兄弟の子孫にも受け継がれ、その微妙な違いは、一族の間の平均値の微妙な違いになり、そのことが、生き残り子孫を持つ確率の微妙な違いを生み、子孫の人数が偏る。</p> <p><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BF%CA%B2%BD%BF%B4%CD%FD%B3%D8">進化心理学</a>は、「生き残った一族の人間は」と言うべきところで、「人間は」と言う。これは主語が大きく誤解を生みがちだが、これを勉強する人間のほとんどは生き残った<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%AB%A5%A4%A5%F3%A4%CE%CB%F6%EA%E3">カインの末裔</a>なので、実用的であるとは言える。</p> <p>だから、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BF%CA%B2%BD%BF%B4%CD%FD%B3%D8">進化心理学</a>の本に「人間とは」と書いてあって、それにムカついたら、「人間にはカインも<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%D9%A5%EB">アベル</a>もいる」と反論していいと思う。「そして、俺はどちらかと言えば、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%D9%A5%EB">アベル</a>の方に興味がある」と言ってその本を投げ捨ててもいいと思う。</p> <p>でも、生き残った人間に関心がある人には、役に立つ。</p> <p>そして、脳の偏りが生き残り子孫を残す確率に本当に影響するかどうか、そこは批判的に読めばいいと思う。ただ、「進化」と言うだけあって、ものすごく気が長い話をしている。何十万年とか何百万年だ。</p> <p>そして、そこに第二の誤解がある。</p> <p>誤解というか説明の順番がよくない。</p> <p>江戸時代とか<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CA%BF%B0%C2%BB%FE%C2%E5">平安時代</a>ならまだしも何十年も前の先祖と言ったら、ほとんどサルだろう。サルじゃなくても狩猟採集だろう。それはいくらなんでも現代人とは関係ない話じゃないのか?</p> <p><div class="hatena-asin-detail"><a href="https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B07YV495X2/hatena-blog-22/"><img src="https://m.media-amazon.com/images/I/51+ljgKTifL._SL160_.jpg" class="hatena-asin-detail-image" alt="われわれはなぜ嘘つきで自信過剰でお人好しなのか 進化心理学で読み解く、人類の驚くべき戦略 (ハーパーコリンズ・ノンフィクション)" title="われわれはなぜ嘘つきで自信過剰でお人好しなのか 進化心理学で読み解く、人類の驚くべき戦略 (ハーパーコリンズ・ノンフィクション)"></a><div class="hatena-asin-detail-info"><p class="hatena-asin-detail-title"><a href="https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B07YV495X2/hatena-blog-22/">われわれはなぜ嘘つきで自信過剰でお人好しなのか 進化心理学で読み解く、人類の驚くべき戦略 (ハーパーコリンズ・ノンフィクション)</a></p><ul><li><span class="hatena-asin-detail-label">作者:</span><a href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A6%A5%A3%A5%EA%A5%A2%A5%E0%20%A5%D5%A5%A9%A5%F3%A1%A6%A5%D2%A5%C3%A5%DA%A5%EB" class="keyword">ウィリアム フォン・ヒッペル</a></li><li><span class="hatena-asin-detail-label">発売日:</span> 2019/10/19</li><li><span class="hatena-asin-detail-label">メディア:</span> <a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/Kindle">Kindle</a>版</li></ul></div><div class="hatena-asin-detail-foot"></div></div></p> <p>俺もそう思っていただが、この本で納得した。</p> <p>狩猟採集の時代の先祖は、自然環境における淘汰によって、選別された。それはまあ納得する。問題はその「自然環境」とは何かということだ。</p> <p>サルのような先祖にとっての「自然環境」とは、美味しいリンゴを早く見つけることとか、怖いクマとかライオンから逃げることとか、寒い時に焚き火をたいて暖をとる知恵とか、少ない食料でも生き残る体力とか、そういうことだと誰でも思う。</p> <p>ところが、サルが原人になって、草原に追い出された時、集団で石投げをすることによって、先祖は突然、強者になったと言う。集団さえ作れれば、先祖にとって自然環境は手強いものではなくなり、けっこう楽勝で生き残れるようになった。</p> <p>その代わり、集団を追い出されると、単体ではまず生き残っていけない。どんなに腕力が強くても次の石を拾っている間に、ライオンに襲われてしまうし、どんなに足が速くても逃げられない。</p> <p>だから、先祖にとって「自然環境」とは、ジャングルではなく、集団内の社会的生活だったのだ。</p> <p>カインは<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%D9%A5%EB">アベル</a>より、足も遅く目も悪く獲物を見つけるのが遅く、石も遠くまで投げられない。でも嘘をつく反射速度が少しだけ<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%D9%A5%EB">アベル</a>より早い。それが嘘であることを自覚できないからだ。この二つの個体を原人の「自然環境」におくと、仲間の人望を失い間違って群れから追放される確率が、ほんのちょっとだけ違う。カインの方が追放されにくいのだ。</p> <p>そのほんのちょっとの違いを<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CA%A3%CD%F8">複利</a>計算で何百世代、何千世代も重ねたその結果、あなたはカインの子孫であると、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BF%CA%B2%BD%BF%B4%CD%FD%B3%D8">進化心理学</a>は言っているのだ。</p> <p>これはわかってみるとよく納得できる話だが、前提として、淘汰を産む自然環境とは、人間にとってはまず第一に社会的生活である、ということがもうちょっと強調されてもいいと思った。</p> <p>そして、もう一つ欠けている説明があると思う。これは他にも何冊か読んだが書いてなくて、私が自分で考えたことだ。</p> <p>それは、群れの中での淘汰と、群れ同志の淘汰の葛藤だ。</p> <p>群れの中でカインのような口の上手いやつだけが生き残り、それを何百世代も重ねたら、群れの中には社会性以外に取り柄がないやつばっかり残る。そしたら、危険を犯して獲物を仕留めたり、他の群れとの縄張りの取り合いの戦争で働く奴がいなくなる。</p> <p>そういう群れは、他の、ちゃんと仕事をする奴が生き残っている群れによって淘汰される。</p> <p>だから、あなたは社会性に全振りしたカインの子孫ではない。</p> <p>社会性に全振りしたカインは群れの中では生き残るだろう。さらに、カイン同士が生存競争をして、もっとも嘘の上手いカインが多数になっていく。だが、そういう群れは、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%D9%A5%EB">アベル</a>がたくさんいる群れによって、獲物や縄張りを奪われ淘汰される。</p> <p>つまり、自然環境の中では、群れの中でも淘汰圧力と、群れ同士の淘汰圧力があって、生き残るのは両方の競争に勝った者だ。</p> <p>ということは、我々の中には、カインの脳と<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%D9%A5%EB">アベル</a>の脳、つまり、自分が属する社会の外にある、本物の自然や共同体のルールが及ばない他の群れの法則に着目し、それをコン<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C8%A5%ED%A1%BC%A5%EB">トロール</a>しようとした脳が、両方生き残っていて、両者は常に葛藤していると考えるべきではないだろうか。</p> <p>そして、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%AB%A5%A4%A5%F3%A4%CE%CB%F6%EA%E3">カインの末裔</a>は文系になり、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%D9%A5%EB">アベル</a>の末裔は理系になった。</p> <p>あるいは、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%AB%A5%A4%A5%F3%A4%CE%CB%F6%EA%E3">カインの末裔</a>は公家になり、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%D9%A5%EB">アベル</a>の末裔は武士になった。</p> <p><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%AB%A5%A4%A5%F3%A4%CE%CB%F6%EA%E3">カインの末裔</a>がワイドショーのコメンテーターになり、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%D9%A5%EB">アベル</a>の末裔が実証的な研究を今必死でしている。</p> <p>もし、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BF%CA%B2%BD%BF%B4%CD%FD%B3%D8">進化心理学</a>が生き残った<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BF%CD%B4%D6%A4%CB%A4%C4%A4%A4%A4%C6">人間について</a>述べるのであれば、この葛藤を調停する仕組みについて言及すべきだ。そして、それが脳のかなり深いレベルに存在していることを予見すべきではないだろうか。</p> <p>これを調停する仕組みは、文字や論理より古く、たとえば脂っこいラーメンを思わず食ってしまうような衝動のレベルで、存在しているはずである。そうでなければ、我々は生き残っていない。</p> <p><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B3%A5%ED%A5%CA%A5%A6%A5%A4%A5%EB%A5%B9">コロナウイルス</a>についてのワイドショーを見ていると、人間の社会脳に対する適応に全振りした人が出てくる。知識がないわけではないので、自分の嘘を自覚する機能にストッパーがかかっていて、淘汰圧力はその能力(というか欠陥)をより強く持つ個体を生き残らせたという説は本当だと思えてくる。それに過剰反応する人も同じで、危機に過剰に社会的な意味を与えた反応をしがちな、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%AB%A5%A4%A5%F3%A4%CE%CB%F6%EA%E3">カインの末裔</a>である。</p> <p>でも、この問題は、テレビや<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C4%A5%A3%A5%C3%A5%BF%A1%BC">ツィッター</a>ができるずっと前から、人類を悩ませた問題なので、これを処理する仕組みが、人間の脳の中にはあるはずである。</p> <p>いや、自分で言っておいて、主語が大きすぎた。正確に言おう。</p> <p>人間には、理性的に処理すべき事物を党派性に回収したがる、この葛藤が産む混乱で破滅する可能性があり、実際に過去にたくさんの部族が滅亡した。でも、我々は生き残った方の子孫であるのだから、先祖から、それを処理できる仕組みを持った脳を受け継いでいるはずである。</p> essa 安心のかたちはみんな違う hatenablog://entry/26006613548815777 2020-04-12T17:54:36+09:00 2020-04-12T17:56:44+09:00 後ろ暗いことを長年してる会社には、隠蔽を担当するチームがあるはずだが、そのチームの部署名はまず「隠蔽課」であることはない。隠蔽を長年続けるにはまず隠蔽していること自体を伏せなくてはならない。これは「隠蔽」というものの持つ普遍的な性質である。 人間のこころの中には、さまざまな隠蔽の仕組みがあるが、その中で重要なものの一つが「死の恐怖」の隠蔽である。誰でも自分がいつか死ぬことは知っているが、何かの間違いで戸愚呂弟に追い詰められるて、あの有名なセリフを言われるようなことでもなければ、そんなことは普通誰も考えない。だからと言って、単純に、自分はそんなことを感じたことも考えたこともないと思うのは、問題の… <p>後ろ暗いことを長年してる会社には、隠蔽を担当するチームがあるはずだが、そのチームの部署名はまず「隠蔽課」であることはない。隠蔽を長年続けるにはまず隠蔽していること自体を伏せなくてはならない。これは「隠蔽」というものの持つ普遍的な性質である。</p> <p>人間のこころの中には、さまざまな隠蔽の仕組みがあるが、その中で重要なものの一つが「死の恐怖」の隠蔽である。誰でも自分がいつか死ぬことは知っているが、何かの間違いで戸愚呂弟に追い詰められるて、<a href="https://www.google.com/search?q=%E3%81%8A%E5%89%8D%E3%82%82%E3%81%97%E3%81%8B%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%BE%E3%81%A0">あの有名なセリフ</a>を言われるようなことでもなければ、そんなことは普通誰も考えない。だからと言って、単純に、自分はそんなことを感じたことも考えたこともないと思うのは、問題のある会社の社員が「ウチの組織図を見ましたけど隠蔽課なんてないですよ」と言っているようなものだ。</p> <p><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B3%A5%ED%A5%CA%A5%A6%A5%A4%A5%EB%A5%B9">コロナウイルス</a>の要求する行動変容は、みんなのこころの中で人知れず活動している「隠蔽課」を直撃する。「死の恐怖」ならびに「死の恐怖の隠蔽」の隠蔽という業務遂行において、「みんなで集まって騒ぐ」ということと「対面で絆を確認しあう」ということは欠かせない要素である。騒いでいるうちに忘れてしまうし、友人や家族との絆を体感的に確認することで、仮に自分が死んでもこの世になんらかの痕跡が残るというような幻想を維持できる。</p> <p>しかも大災害の時のように、心の中全体が大騒ぎで全ての部署が忙しければ、隠蔽課があわてていても目立たないが、StayHomeと手洗いだけを例外としてとりあえず日常が続いていると、会社全体の中で隠蔽課だけがあわてている様子がクローズアップされて、はなはだまずい。</p> <p>インターネットが最近ギスギスしているというのは、こういう事情ではないかと私は想像している。</p> <p>隠蔽課の表向きの業務がなんであるかは人それぞれだが、外から見ると、攻撃的な書き込みを連発しているように見える。「あなたはなんでそのような書き込みをしているのですか」と聞いてみると、その課の表向きの業務がわかるが、実際にしていることは隠蔽ならびに隠蔽の隠蔽であることが多い。そのようなことを尋ねても「ウチの会社にはそのような部署はありません」という回答しか返ってこない。</p> <p>ただ、そういうことをどうしてもしてしまうものなら、インターネットでやるのが一番いいと私は思う。インターネットならいろいろな形でそれを見ないという選択肢が用意されているからだ。</p> <p>不安のためにデマに踊らされてデマを拡散してしまうのはまずいけれど、デマの背後には、その人がどのように安心を得たいのかという切実な願いがある。</p> <p>どういう情報で安心を取り戻すのかは人それぞれで違うし簡単に直せるものではない。</p> <p>情報や仮説を訂正する時に、相手の安心のかたちに踏み込まないことが重要だと思う。政府を批判することで安心する人もいれば、政府を支援することで安心する人もいる。科学と同一化して安心する人もいれば、科学が代弁する人との絆を感じて安心する人もいる。</p> <p>安心のかたちはみんな違う。</p> <p>間違った情報は訂正すべきだし、政策は議論すべきだし、多数の人の行動を変えなければいけないこともある。</p> <p>これらの目的のために、他人の安心のかたちを変えるのはやめよう。他人の安心のかたちは、組織における「隠蔽課」のように、その存在そのものを見せたくない心の中の働きにつながっていて、必ず、多くのもっと厄介な問題を引き起こす。少なくとも緊急時にやることではない。</p> <p>そして、他人の情報や行動は、そこに触れなくても変えられるはずだ。自分の中の「隠蔽課」と先に直面すればいいのだ。</p> essa ヒトに関するグラフとウィルスに関するグラフの違い hatenablog://entry/26006613548249259 2020-04-11T17:55:47+09:00 2020-04-11T17:55:47+09:00 「このままでは8割減できない」 「8割おじさん」こと西浦博教授が、コロナ拡大阻止でこの数字にこだわる理由 世の中にはたくさんの数字とチャートがあって、みんな食傷気味というか、簡単にそういうものを信じない癖がついていると思います。 しかし、コロナに関する数字やチャートは、ちょっと違うんじゃないかな、という話をしたいと思います。 もう忘れられてるかもしれないけど、100日ワニ騒動というのがあって、あれは突然爆発的に話題になって、あっという間にしぼんでしまいました。あれに関するグッズの売上が、コロナのグラフみたいにグイーンと右肩上がりになる期待を持っていた人は、今頃、ガックリしているでしょう。 だい… <ul> <li><a href="https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/covid-19-nishiura">「このままでは8割減できない」 「8割おじさん」こと西浦博教授が、コロナ拡大阻止でこの数字にこだわる理由</a></li> </ul> <p>世の中にはたくさんの数字とチャートがあって、みんな食傷気味というか、簡単にそういうものを信じない癖がついていると思います。</p> <p>しかし、コロナに関する数字やチャートは、ちょっと違うんじゃないかな、という話をしたいと思います。</p> <p>もう忘れられてるかもしれないけど、100日ワニ騒動というのがあって、あれは突然爆発的に話題になって、あっという間にしぼんでしまいました。あれに関するグッズの売上が、コロナのグラフみたいにグイーンと右肩上がりになる期待を持っていた人は、今頃、ガックリしているでしょう。</p> <p>だいたい、右肩上がりのグラフはみんなあんなもので、あてにならない、やってみなきゃわからないと思ってて、コロナも同じだろう、と思ってしまうのも無理はないかもしれません。</p> <p>でも、コロナと100日ワニには、大きな違いがあって、それは、ヒトはミクロのふるまいが流行り具合によって変わるということです。つまり、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B9%A5%C6%A5%DE">ステマ</a>騒動とかそういうの無くても、誰もが「ワニ」「ワニ」と言い出したら、「まだワニかよ」と言われるのが気になりますよね。ヒトのミクロのふるまいは、マクロの結果、つまり「みんながワニを読んでるか」ということに大きく影響を受けるんです。</p> <p>ワニが流行る前の人のふるまいは、ある程度予想できます。つまり、それはワニのコンテンツそのものが持つ力。100人にこれを読ませれば、何人が感動して、そのうち何人が友達に紹介するか、その割合は、たぶん、そんなに大きく変動しない。だから、流行り始めた時点で、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/Twitter">Twitter</a>でその様子を見ていれば、「これは相当流行るぞ」ということは予想できるし、アンケートとかモデルとか使って、最終的に何十万人がグッズを買いそうかなんてことも予測できるのかもしれません。</p> <p>でも、人のふるまいは他の人のふるまいによって影響を受ける。「みんなが読んでるから自分も遅れないようにしよう」という人もいれば、逆に「まだワニかよだせーな」という人もいて、影響の受け方はそれぞれだけど、流行る前と後ではふるまいが違います。</p> <p><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B9%A5%C6%A5%DE">ステマ</a>騒動は、流行りきった所で起きたので影響力が大きかったし、逆にあの対応の仕方によっては好感度を上げて、さらなる飛躍のステップとすることも可能だったかもしれません。</p> <p>だから、社会現象のモデル化は、本質的にミクロとマクロの相互作用が含まれていて、とても不安定なんです。</p> <p>そういうモデルから導き出された数字やチャートは信じないっていうのは、生活の知恵として正しい。</p> <p>しかし、ウィルスのふるまいは、マクロの影響を受けません。「この<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D3%A5%C3%A5%B0%A5%A6%A5%A7%A1%BC%A5%D6">ビッグウェーブ</a>に乗って、俺もいよいよ感染の旅に出るか」なんてウィルスはいない。ウィルスは、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C8%F4%CB%F7%B4%B6%C0%F7">飛沫感染</a>でも<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C0%DC%BF%A8">接触</a>感染でも、条件が満たされれば感染するし、満たされなければ感染しない。「ウィルスは忖度しない」と言われますが、それより大事なことは「ウィルスは空気を読まない」ということです。</p> <p>ミクロのふるまいが一定なので、モデル化しやすく、感染者が10人でも1000万人でも同じモデルが使えます。</p> <p>今回の騒動で、日本政府や<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%AF%A5%E9%A5%B9%A5%BF">クラスタ</a>ー対策班に批判的な意見をだいぶ見ましたが、SIRモデルそのものを批判している人はほとんどいません。専門家会議も批判者も同じ数学のモデルを使っていて、その当てはめ方やそこから導き出す対策には大いに異論が出ていますが、モデルそのものは両者で合意されています。</p> <p>議論になっているのは主としてヒトのふるまいの問題で、それはウィルスにとっては環境で、環境によってウィルスのふるまいは確かに変わるけど、同じ環境であればウィルスのミクロのふるまいは一定で、マクロの結果、つまり感染者数や死亡者数は、予測や推計が容易であるということには異論はありません。</p> <p>政治家は右肩上がりのチャートを見て、「行くとこまで行ったら、それはそれでなんとかなるだろ」みたいに考えがちなのだと思います。<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B9%A5%C6%A5%DE">ステマ</a>騒動がワニ熱を一気に覚ましてしまったように、感染が拡大して、混乱が起きて、世の中が大騒ぎになったら、マクロな対応でミクロのふるまいを変える手段がある、と無意識に想定してしまうのだと思います。</p> <p>まあ、ヒトのふるまいについては、政治家やビジネスマンの方が正しいと思います。</p> <p>でも、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%B6%C0%F7%BE%C9">感染症</a>の広がりについては、ヒトのふるまいよりもウィルスのふるまいの方が重要です。ウィルスはどれだけ感染が広がってもミクロのふるまいを変えない、チャートどおりに上がっていく。このグラフは、ワニとは違う見方をしないといけません。</p> <p>逆に言えば、ウィルスは台風や<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C3%CF%BF%CC">地震</a>などの天災と比べると、数学で扱いやすいんです。</p> <p>モデルが悲劇的な予測をした時、それは結構当たる。8割おじさんが「7割では絶対ダメ」というのは、信じられないくらい絶対的な話なんです。「何が8割なのか」「どういう8割がいいのか」というとこは間違ってるかもしれないし、議論の余地があるけど、「7割では絶対ダメ」というとこには議論の余地がないんです。</p> <blockquote><p>ーー ついにタレントの<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BB%D8%B8%B6%E8%BD%C7%B5">指原莉乃</a>さんにも応援メッセージをもらえましたね。</p> <p>いつか流行が終わったら、会えないかなという妄想を抱いています(笑)。</p></blockquote> <p>8割おじさんが早く<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A4%B5%A4%C3%A4%B7%A1%BC">さっしー</a>に会えるように、みんな数字をそのまま受け止めて、#StayHomeしましょう。</p> essa デコイの達人としての安倍総理 hatenablog://entry/26006613531059388 2020-03-07T01:35:41+09:00 2020-03-07T01:39:36+09:00 何か悪いことがあると、必ず「背後に誰かの邪悪な意図がある」と考える人がいるようだ。 たとえば、トイレットペーパーがなくなるのは「転売屋の邪悪な意図」のせい、PCR検査が受けられないのは「オリンピックの利権に関わる人の、感染者を少なく見せようとする邪悪な意図」のせい。 私は、ほとんど全てのことをシステムの不備と考える。 トイレットペーパーがなくなるのは、「過度に最適化されたサプライチェーンの不備」のせい、PCR検査が受けられないのは「限りあるリソースを有効活用するための必然」 この「党派性重視タイプ」と「システム重視タイプ」の分断は、いろいろなところで見られるが、安倍政権を批判する人にも二種類い… <p>何か悪いことがあると、必ず「背後に誰かの邪悪な意図がある」と考える人がいるようだ。</p> <p>たとえば、トイレットペーパーがなくなるのは「転売屋の邪悪な意図」のせい、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/PCR">PCR</a>検査が受けられないのは「オリンピックの利権に関わる人の、感染者を少なく見せようとする邪悪な意図」のせい。</p> <p>私は、ほとんど全てのことをシステムの不備と考える。</p> <p>トイレットペーパーがなくなるのは、「過度に最適化された<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B5%A5%D7%A5%E9%A5%A4%A5%C1%A5%A7%A1%BC%A5%F3">サプライチェーン</a>の不備」のせい、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/PCR">PCR</a>検査が受けられないのは「限りあるリソースを有効活用するための必然」</p> <p>この「党派性重視タイプ」と「システム重視タイプ」の分断は、いろいろなところで見られるが、安倍政権を批判する人にも二種類いる。</p> <p>「党派性重視タイプ」は「なぜあんな邪悪なリーダーが長い間トップにいられるのかわからない」と言う。そして、この問題の背後にも必ず誰かの邪悪な意図があるに違いない」と考える。邪悪な政権が支持率を落とさないことも「アベの邪悪な意図のせい」と説明しようとする。</p> <p>「システム重視タイプ」は「安倍政権が問題をどういうモデルで捉えているかが見えない」と言う。私もどちらかというとこのタイプで、何をどう解決しようとしているのか見えない。「反対」というより「論評しようがない」と感じてしまう。</p> <p>ところが、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BF%B7%B7%BF%C7%D9%B1%EA">新型肺炎</a>の騒動を見ているうちに、安倍政権をシステムとして見る手がかりが見えてきた。</p> <p>世の中の多数派は「党派性重視タイプ」だと思うが、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B0%C2%C7%DC%C1%ED%CD%FD">安倍総理</a>はこのタイプの人から見てわかりやすい人なのだと思う。特に、マスコミやワイドショーの人から見ると、「邪悪な意図」が見えやすいというかわかりやすい。だから叩きやすい。彼らにとって政権批判は、最終的にトップの人格批判、隠された「意図」の批判に帰着しないと中途半端で、システム的な問題を指摘するだけで終わる批判は無責任なのだと思う。その最終的な問題に持っていきやすい総理であることが長期政権の秘密なのだ。</p> <p>現代の政治問題は、ほとんどが党派的な見方では解決できない問題なので、そのような批判は建設的な批判にはならない。</p> <p>しかし、世論の大半は、党派的な観点からの批判を期待する。だから、そのような批判は無くなることはない。</p> <p><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B0%C2%C7%DC%C1%ED%CD%FD">安倍総理</a>の機能は、そのような党派的な批判に対して、デコイとなることだ。ここにおいて、彼は天才的なのである。<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B0%C2%C7%DC%C1%ED%CD%FD">安倍総理</a>が前面に立つと、党派的な批判のボルテージが上がり、みんな夢中になってしまう。その隙に、実務者が仕事をするというのが、安倍政権のやり方なのだ。</p> <p>だから、問題ごとの実務者のレベルによって、政策の良し悪しに大きくブレがある。でもシステムはいつも同じだ。</p> <p>「全国の学校に休校を要請」とか「中国、韓国からの入国を制限」という政策は、デコイとしては優れていると思う。デコイの役割は敵の砲火を呼び込むことと、攻撃を受けても倒れないことである。</p> <p>第一次安倍政権の失敗を通じて、彼は、本能的に、攻撃を呼び込みやすいけど致命傷は負わないというデコイの役割に何が必要か理解したのである。</p> <p>そして、このシステムは、今回についてはうまく機能していると思う。<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B0%C2%C7%DC%C1%ED%CD%FD">安倍総理</a>の政策は支離滅裂だが、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B8%FC%C0%B8%CF%AB%C6%AF%BE%CA">厚生労働省</a>のやることは首尾一貫していてわかりやすい。</p> <p><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B8%FC%C0%B8%CF%AB%C6%AF%BE%CA">厚生労働省</a>と専門家会議は、水際対策というものは基本的に効果のないもので、本来、2月中にもっと感染が広がっているはずだと考えた。その広がりは重症者の数だけ追っていても、もっとわかりやすい悲劇的な数字として、見えてくるはずのものだ。</p> <p>しかし、そのような数字にはならなかった。では、新型コロナウィルス の感染率は低いのか?</p> <p>偶発的に捕まえた手がかりから積極的<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B1%D6%B3%D8%C4%B4%BA%BA">疫学調査</a>を行うと、どうも単純に低いとも言えない。ごく一部で多数の人に感染しているケースがある。これが一つや二つではない。</p> <p>これを説明できるモデルは「再生産数の分散が大きい」ということになる。つまり、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C4%A5%A3%A5%C3%A5%BF%A1%BC">ツィッター</a>と同じように、ごく一部の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A4%A5%F3%A5%D5%A5%EB%A5%A8%A5%F3%A5%B5%A1%BC">インフルエンサー</a>のツィートは多くの人に読まれるが、ほとんどのツィートは誰にも読まれずに消える、というモデルだ。</p> <p>大事なことは、このモデルを選択した理由は、誰かの邪悪な意図とか邪悪な意図を隠すためではないということだ。これがいろいろな事象を矛盾なく説明できるモデルだから、これが選択された。何が感染するきっかけになるかはまだ解明されていないが、再生産数の分散が大きいということはほぼ確定した事実と言っていいのだと思う。</p> <p>そして、ここがまたわかりにくいのだが、このモデルの帰結は、ゼロと1000万人の両極端である。</p> <p>現在、市中感染は広まっており、検査できて見えている感染者数が全てだとは思ってない。しかし、今はまだ対策できる範囲で、丹念に感染者を見つけていけば、封じ込めも可能なレベルである。</p> <p>しかし、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%AF%A5%E9%A5%B9%A5%BF">クラスタ</a>ー感染を放置すれば、すぐに何十万人、何百万人、何千万人のレベルになる。</p> <p>両方の可能性を、どちらも十分あり得る未来と見ているのである。</p> <p>ほとんどの人は、このような説明には納得できず、どちらかが「邪悪な意図を隠した」ウソだと思うのだろう。<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B8%FC%C0%B8%CF%AB%C6%AF%BE%CA">厚生労働省</a>自身が矢面に立ったり、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B0%C2%C7%DC%C1%ED%CD%FD">安倍総理</a>がそのストーリーに乗っかってリーダーシップを取れば、党派的な集中攻撃がそこにやってくる。数理的なモデルを使った説明では、それに対抗できないだろう。</p> <p>しかし、専門家は、どちらの可能性も真面目に考えているのだ。その前提で仕事をするには、デコイが必要なのである。</p> <p>このように、「デコイとしての<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B0%C2%C7%DC%C1%ED%CD%FD">安倍総理</a>」と「分散の大きい再生産数」という二つのキーを理解すると、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B8%FC%C0%B8%CF%AB%C6%AF%BE%CA">厚生労働省</a>と専門家会議は、首尾一貫して明解な説明をしていることがわかると思う。</p> essa デコイの達人としての安倍総理 hatenablog://entry/26006613531058953 2020-03-07T01:33:19+09:00 2020-03-07T01:33:19+09:00 何か悪いことがあると、必ず「背後に誰かの邪悪な意図がある」と考える人がいるようだ。 たとえば、トイレットペーパーがなくなるのは「転売屋の邪悪な意図」のせい、PCR検査が受けられないのは「オリンピックの利権に関わる人の、感染者を少なく見せようとする邪悪な意図」のせい。 私は、ほとんど全てのことをシステムの不備と考える。 トイレットペーパーがなくなるのは、「過度に最適化されたサプライチェーンの不備」のせい、PCR検査が受けられないのは「ウィルスの属性の違いに対応できない検査システムの不備」のせい。 この「党派性重視タイプ」と「システム重視タイプ」の分断は、いろいろなところで見られるが、安倍政権を批… <p>何か悪いことがあると、必ず「背後に誰かの邪悪な意図がある」と考える人がいるようだ。</p> <p>たとえば、トイレットペーパーがなくなるのは「転売屋の邪悪な意図」のせい、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/PCR">PCR</a>検査が受けられないのは「オリンピックの利権に関わる人の、感染者を少なく見せようとする邪悪な意図」のせい。</p> <p>私は、ほとんど全てのことをシステムの不備と考える。</p> <p>トイレットペーパーがなくなるのは、「過度に最適化された<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B5%A5%D7%A5%E9%A5%A4%A5%C1%A5%A7%A1%BC%A5%F3">サプライチェーン</a>の不備」のせい、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/PCR">PCR</a>検査が受けられないのは「ウィルスの属性の違いに対応できない検査システムの不備」のせい。</p> <p>この「党派性重視タイプ」と「システム重視タイプ」の分断は、いろいろなところで見られるが、安倍政権を批判する人にも二種類いる。</p> <p>「党派性重視タイプ」は「なぜあんな邪悪なリーダーが長い間トップにいられるのかわからない」と言う。そして、この問題の背後にも必ず誰かの邪悪な意図があるに違いない」と考える。邪悪な政権が支持率を落とさないことも「アベの邪悪な意図のせい」と説明しようとする。</p> <p>「システム重視タイプ」は「安倍政権が問題をどういうモデルで捉えているかが見えない」と言う。私もどちらかというとこのタイプで、何をどう解決しようとしているのか見えない。「反対」というより「論評しようがない」と感じてしまう。</p> <p>ところが、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BF%B7%B7%BF%C7%D9%B1%EA">新型肺炎</a>の騒動を見ているうちに、安倍政権をシステムとして見る手がかりが見えてきた。</p> <p>世の中の多数派は「党派性重視タイプ」だと思うが、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B0%C2%C7%DC%C1%ED%CD%FD">安倍総理</a>はこのタイプの人から見てわかりやすい人なのだと思う。特に、マスコミやワイドショーの人から見ると、「邪悪な意図」が見えやすいというかわかりやすい。だから叩きやすい。彼らにとって政権批判は、最終的にトップの人格批判、隠された「意図」の批判に帰着しないと中途半端で、システム的な問題を指摘するだけで終わる批判は無責任なのだと思う。その最終的な問題に持っていきやすい総理であることが長期政権の秘密なのだ。</p> <p>現代の政治問題は、ほとんどが党派的な見方では解決できない問題なので、そのような批判は建設的な批判にはならない。</p> <p>しかし、世論の大半は、党派的な観点からの批判を期待する。だから、そのような批判は無くなることはない。</p> <p><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B0%C2%C7%DC%C1%ED%CD%FD">安倍総理</a>の機能は、そのような党派的な批判に対して、デコイとなることだ。ここにおいて、彼は天才的なのである。<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B0%C2%C7%DC%C1%ED%CD%FD">安倍総理</a>が前面に立つと、党派的な批判のボルテージが上がり、みんな夢中になってしまう。その隙に、実務者が仕事をするというのが、安倍政権のやり方なのだ。</p> <p>「全国の学校に休校を要請」とか「中国、韓国からの入国を制限」という政策は、デコイとしては優れていると思う。デコイの役割は敵の砲火を呼び込むことと、攻撃を受けても倒れないことである。</p> <p>第一次安倍政権の失敗を通じて、彼は、本能的に、攻撃を呼び込みやすいけど致命傷は負わないというデコイの役割に何が必要か理解したのである。</p> <p>そして、このシステムは、今回についてはうまく機能していると思う。<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B0%C2%C7%DC%C1%ED%CD%FD">安倍総理</a>の政策は支離滅裂だが、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B8%FC%C0%B8%CF%AB%C6%AF%BE%CA">厚生労働省</a>のやることは首尾一貫していてわかりやすい。</p> <p><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B8%FC%C0%B8%CF%AB%C6%AF%BE%CA">厚生労働省</a>と専門家会議は、水際対策というものは基本的に効果のないもので、本来、2月中にもっと感染が広がっているはずだと考えた。その広がりは重症者の数だけ追っていても、もっとわかりやすい悲劇的な数字として、見えてくるはずのものだ。</p> <p>しかし、そのような数字にはならなかった。では、新型コロナウィルス の感染率は低いのか?</p> <p>偶発的に捕まえた手がかりから積極的<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B1%D6%B3%D8%C4%B4%BA%BA">疫学調査</a>を行うと、どうも単純に低いとも言えない。ごく一部で多数の人に感染しているケースがある。これが一つや二つではない。</p> <p>これを説明できるモデルは「再生産数の分散が大きい」ということになる。つまり、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C4%A5%A3%A5%C3%A5%BF%A1%BC">ツィッター</a>と同じように、ごく一部の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A4%A5%F3%A5%D5%A5%EB%A5%A8%A5%F3%A5%B5%A1%BC">インフルエンサー</a>のツィートは多くの人に読まれるが、ほとんどのツィートは誰にも読まれずに消える、というモデルだ。</p> <p>大事なことは、このモデルを選択した理由は、誰かの邪悪な意図とか邪悪な意図を隠すためではないということだ。これがいろいろな事象を矛盾なく説明できるモデルだから、これが選択された。何が感染するきっかけになるかはまだ解明されていないが、再生産数の分散が大きいということはほぼ確定した事実と言っていいのだと思う。</p> <p>そして、ここがまたわかりにくいのだが、このモデルの帰結は、ゼロと1000万人の両極端である。</p> <p>現在、市中感染は広まっており、検査できて見えている感染者数が全てだとは思ってない。しかし、今はまだ対策できる範囲で、丹念に感染者を見つけていけば、封じ込めも可能なレベルである。</p> <p>しかし、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%AF%A5%E9%A5%B9%A5%BF">クラスタ</a>ー感染を放置すれば、すぐに何十万人、何百万人、何千万人のレベルになる。</p> <p>両方の可能性を、どちらも十分あり得る未来と見ているのである。</p> <p>ほとんどの人は、このような説明には納得できず、どちらかが「邪悪な意図を隠した」ウソだと思うのだろう。<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B8%FC%C0%B8%CF%AB%C6%AF%BE%CA">厚生労働省</a>自身が矢面に立ったり、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B0%C2%C7%DC%C1%ED%CD%FD">安倍総理</a>がそのストーリーに乗っかってリーダーシップを取れば、党派的な集中攻撃がそこにやってくる。数理的なモデルを使った説明では、それに対抗できないだろう。</p> <p>しかし、専門家は、どちらの可能性も真面目に考えているのだ。その前提で仕事をするには、デコイが必要なのである。</p> <p>このように、「デコイとしての<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B0%C2%C7%DC%C1%ED%CD%FD">安倍総理</a>」と「分散の大きい再生産数」という二つのキーを理解すると、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B8%FC%C0%B8%CF%AB%C6%AF%BE%CA">厚生労働省</a>と専門家会議は、首尾一貫して明解な説明をしていることがわかると思う。</p> essa 旧型コロナの風邪でもみんな同時にひいたら大変なことだよ hatenablog://entry/26006613518113279 2020-02-23T16:29:59+09:00 2020-02-23T16:29:59+09:00 新型コロナウィルスについて、最初の頃テレビでは「風邪と同じだから過剰に心配しないで」と言っていて、一方で、武漢の大変な状況や中国の都市封鎖のニュースが伝わってきて、一体どっちが本当なんだ!と思っている人が多いだろう。 二種類のメッセージが両立しないので、楽観からパニックへ極端に振れたりして、必要以上の混乱が生じているようだ。 これをバランスよく理解するコツは、「抗体」の有無に注目することだと私は思う。 つまり、新型コロナと風邪の違いで一番大事なことは、感染率とか重症化率とか死亡率とかそういう難しい話ではなくて、単にみんな一緒にひくか、バラけてひくかという違いだ。 風邪でもインフルエンザでも、こ… <p>新型コロナウィルスについて、最初の頃テレビでは「風邪と同じだから過剰に心配しないで」と言っていて、一方で、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C9%F0%B4%C1">武漢</a>の大変な状況や中国の都市封鎖のニュースが伝わってきて、一体どっちが本当なんだ!と思っている人が多いだろう。</p> <p>二種類のメッセージが両立しないので、楽観からパニックへ極端に振れたりして、必要以上の混乱が生じているようだ。</p> <p>これをバランスよく理解するコツは、「抗体」の有無に注目することだと私は思う。</p> <p>つまり、新型コロナと風邪の違いで一番大事なことは、感染率とか重症化率とか死亡率とかそういう難しい話ではなくて、単にみんな一緒にひくか、バラけてひくかという違いだ。</p> <p>風邪でもインフルエンザでも、これまで流行ったものは、抗体を持っている人がたくさんいる。ウィルスは少しづつ変異するので、二度でも三度でもひくことはあるけど、旧型ウィルスでは、何もしなくてもうつされることのない人が一定の割合で存在している。</p> <p>ちょっとした大企業なら、毎日数人風邪で休む人はいるだろうし、小さなオフィスでも、一月の間、全社員が皆勤で誰も休まないということはないだろう。社会はそれくらいの風邪ではびくともしないようにできている。</p> <p>でも、全員が同じ日に休んだらパニックで、会社は回らないよね。</p> <p>もし、全人類の体内から旧型コロナの抗体が突然消え去って、風邪が異常にうつりやすくなって、しかもうつったらみんな結構重めで数日寝込むとしたら、会社としては本気で「毎日熱をはかって、熱があるやつは絶対に会社に来るな!」と言うだろう。</p> <p>無理して出社する奴が一人でもいたら、即、全社員にうつるなんてことになったら、どの会社も自発的に門の前に警備員を配置して警戒するだろう。誰も抗体を持たないというのはそういうことで、単に自分が寝込むという問題ではなくて、何人もの人にうつしてそれがどんどん連鎖していく。</p> <p>それがこれから起こることなんだと思う。</p> <p>でも会社はまあいいよね。そういうバカは全員クビでいいんだから。病院は「来るな!」と言えないのでもっと大変。</p> <p>誰もが抗体を持たない風邪は、もしそれが何を意味するのかをきちんと理解できるならば、相当深刻な問題であると理解して先手を打って対処するのが当然だ。</p> <p>もちろん、新型と旧型は違っていて、その違いはこれから少しづつ明らかになるだろう。でもそういう新しい情報を受け入れるベースとして、「誰でも100%うつされるけどそれ以外の症状は普通の風邪」という見方を持っていれば、問題を理解しやすいのではないだろうか。</p> essa ウィルスは忖度しないモノと見るべきだけど人間の社会脳も同じようにモノとして見るべき hatenablog://entry/26006613516863112 2020-02-20T22:41:50+09:00 2020-02-20T22:43:51+09:00 社会脳仮説とは、人間の脳のチップ面積の半分は対人関係処理専用プロセッサが占めているという話だ。 「大型クルーズ船における新規感染症の対策について」という論文があって、「法的な強制力の適用条件」とか「船内特有のゾーニングの困難さとその対処」なんていう目次があったとしても誰も読まない。でも「岩田 VS 高山、インチキ野郎はどっちだ」という話になると大変な注目を集める。 注目を集めるだけではなくて、やりとりを見ているうちに、問題の構造を多くの人が普通より理解し始める。 カードの数当てゲームみたいな問題を、数学的な複雑性や構造をそのままにして「チートしているのはこの4人のうちの誰でしょう?」という問題… <p>社会脳仮説とは、人間の脳のチップ面積の半分は対人関係処理専用プロセッサが占めているという話だ。</p> <p>「大型クルーズ船における新規<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%B6%C0%F7%BE%C9">感染症</a>の対策について」という論文があって、「法的な強制力の適用条件」とか「船内特有の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%BE%A1%BC%A5%CB%A5%F3%A5%B0">ゾーニング</a>の困難さとその対処」なんていう目次があったとしても誰も読まない。でも「岩田 VS 高山、インチキ野郎はどっちだ」という話になると大変な注目を集める。</p> <p>注目を集めるだけではなくて、やりとりを見ているうちに、問題の構造を多くの人が普通より理解し始める。</p> <p>カードの数当てゲームみたいな問題を、数学的な複雑性や構造をそのままにして「チートしているのはこの4人のうちの誰でしょう?」という問題にすると、正答率が有意に上がるという研究があるそうだ。</p> <p>人間は、モノの論理を考えるより、対人関係の中の問題を解く方がずっと得意なのである。</p> <p>これは歴史が古く、人間が猿だった頃からそうだった。そもそも、100万年前に猿の脳が大きくなって人間になったのだけど、その時分には脳が大きくなるメリットはほとんどなかった。脳が大きくなると頭の大きい子供を未熟なまま産むしかなくなるので、種の生存にとっては大変なコストになる。ライオンの習性をちょっと早く学習したり、木の実の種類を少し余計に知ってるくらいのことでは、とてもペイしない。</p> <p>だから、何でそこで脳が大きくなってしかも生き残ったのかは大きな謎だったそうだが、どうもこれは、集団で石投げをして天敵や獲物を倒すということができるようになるためだったらしい。チームプレイができれば、石投げは強力な武器で、何も怖くなくなる。気候変動でジャングルから草原に投げ出されて大変なピンチになった我々の祖先は、チームプレイを覚えて、突然、天敵を恐れる必要のない強者になった。</p> <p>この時に、チームを大きくすることと、チートする奴を排除することが必要で、これには相当大きな専用プロセッサが必要だったのだ。言語を使うことはもちろん、相手の視線の向きや意図を理解したり、チート野郎の行動を時系列に沿って覚えることなどには、脳の負担が大きくそれ向きの専用プロセッサがないと処理できないレベルらしい。</p> <p>我々の学問は、この専用プロセッサを本来の用途と違う使い方をすることで出来上がっている。だからみんな数学が苦手だし、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D5%A5%A7%A5%A4%A5%AF%A5%CB%A5%E5%A1%BC%A5%B9">フェイクニュース</a>がなくならない。<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D5%A5%A7%A5%A4%A5%AF%A5%CB%A5%E5%A1%BC%A5%B9">フェイクニュース</a>がもし100万年前にあれば、我々の祖先もみんなそれに乗せられていたのだ。</p> <p>これは、定説とは言えないが、それなりの<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%D3%A5%C7%A5%F3%A5%B9">エビデンス</a>も集まってきてるそうだ。</p> <p>借金の証文に「もし払えなかったらみんなの前で恥をかかされてもいいです」というのがあるそうだが、チームを追い出されることはライオンに対峙するよりずっと命の危険があるというのは、人間の脳のバグではなくて、少なくとも我々の祖先にとっては現実であり、我々の脳は100万年かけて、それを恐れるように進化してきたのだ。</p> <p>そこで、これから岩田さんの立場になる人への提言なのだけど、高山さんのような人をサイエンスの外から発言する人と見るのではなく、社会脳学という別のジャンルの専門家として見るべきなのではないだろうか。</p> <p>つまり、これはサイエンスと組織運営の対立ではなく、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%B6%C0%F7%BE%C9">感染症</a>学と社会脳学という二つの学問分野の専門家による立場の違いであると。</p> <p>政治家や官僚の人は、「社会脳」という分野における<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B9%A5%DA%A5%B7%A5%E3">スペシャ</a>リストで、もちろんきちんとした理論的なバックボーンは持ってないけど、長年の経験でその分野に高い知見を持っている人である。彼らの肩書きがその<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%D3%A5%C7%A5%F3%A5%B9">エビデンス</a>であると言ってもいいと思う。</p> <p>そして、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%B6%C0%F7%BE%C9">感染症</a>学と<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CE%D7%BE%B2%B0%E5%B3%D8">臨床医学</a>だったら、危険性の高い検疫の場では、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%B6%C0%F7%BE%C9">感染症</a>学が上に立つべきなのと同じように、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%B6%C0%F7%BE%C9">感染症</a>学と社会脳学だったら、多くの場合、社会脳学が上に立つというかグランドデザインをすべきなのはこっちだと思う。</p> <p>ただ、その人の社会脳学の適用範囲は見極めるべきだろう。</p> <p>クルーズ船の対応にあたる組織だけに着目して、多くの制約がある中でこれをどう動かせば最善の結果が残せるか、という観点は、完全に高山氏の専攻分野で、問題をこのレベルで考えるならば、岩田氏が高山氏のストーリーに乗って、しばらく大人しくしてから高山氏がゴーを出したタイミングで暴れまくるのが最善だ。</p> <p>でも、日本全体の問題と考えると、DMATの関係者、つまり志が高く機動力のある医療の専門家を汚染のリスクにさらすのは問題だと私は思う。つまり、士気を下げて船内の活動の妨げになっても、医療関係者を守るべきだったと思う。ただ、これは「ウィルスは忖度しないからモノの論理、サイエンスの論理を優先すべきだ」という意味ではない。社会脳学的観点からのリスクより<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%B6%C0%F7%BE%C9">感染症</a>学的観点からのリスクに重点を置くべきということ。</p> <p>これは単なる素人考えだけど、サイエンスとそれ以外の対立ではなく、我々が社会脳を持ち社会脳に動かされる存在であることも外的な事象として受け取った上で、ウィルスと社会脳という二つの動かせない現実に対していると考えて、その両者の専門家が協力して対策を考えなくてはいけないと、そういう枠組みで考えた方がいいのではないだろうか。</p> essa リスクテイカーという貴重な資源 hatenablog://entry/26006613495549809 2020-01-10T01:03:48+09:00 2020-01-10T01:03:48+09:00 ゴーンさんのこれまでについてはよく知らないし、これからどうなるのかもわからないが、そういう私にも確実に言えることがひとつあって、それは彼がリスクの取り方をよく知っているということである。 私たちは、彼が出国に成功した時点からネタバレで見ているので見落としがちだが、実行前には、これはどうなるか誰にも予想できないことであったはずだ。特にゴーンさんの視点から見ると、彼は他人が自分の思惑通りに動かないという体験を、最近しているわけである。 ここ数年は勇退のチャンスも何度かあったが、それに乗らなかったのは、まさか自分の蓄財が不正として告発されるとは夢にも思っていなかったからだろう。それがグレーなのかクロ… <p>ゴーンさんのこれまでについてはよく知らないし、これからどうなるのかもわからないが、そういう私にも確実に言えることがひとつあって、それは彼がリスクの取り方をよく知っているということである。</p> <p>私たちは、彼が出国に成功した時点からネタバレで見ているので見落としがちだが、実行前には、これはどうなるか誰にも予想できないことであったはずだ。特にゴーンさんの視点から見ると、彼は他人が自分の思惑通りに動かないという体験を、最近しているわけである。</p> <p>ここ数年は<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CD%A6%C2%E0">勇退</a>のチャンスも何度かあったが、それに乗らなかったのは、まさか自分の蓄財が不正として告発されるとは夢にも思っていなかったからだろう。それがグレーなのかクロなのかはわからないが、日本政府やフランス政府も含め、ほとんどの<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B9%A5%C6%A1%BC%A5%AF%A5%DB%A5%EB%A5%C0%A1%BC">ステークホルダー</a>にとって、自分を日産<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%EB%A5%CE%A1%BC">ルノー</a>連合のトップに据えておくことが得だと考えていたのだと私は思う。</p> <p>日産の経営は単なる自動車会社の経営ではなくて、日仏両政府の綱引きの中で政治的な微妙なバランスに乗った綱渡りで、そんなことができるのは自分しかいない。その自分を蹴落としたら、会社が傾いて、日産の役員や社員はもちろん、日仏どちらの国民にとっても政府にとっても損な選択だ。</p> <p>いかに彼が不正なことをしようが、横暴なことをしようが、そんな損な選択を関係者がするはずがない、彼はそう思いこんでいた。</p> <p>しかし、世の中には損得を考えないか損得が全く見えない人間がいたのだ。それを彼は<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B9%B4%C3%D6%BD%EA">拘置所</a>の中でいやというほど痛感しているはずだ。</p> <p>彼の出国に誰がどういうかたちで関わったのかも私にはわからないことだが、多くの人間の協力が必要なことは間違いなく、その全員に十分な見返りがあることもおそらく間違いないが、ちゃんと見返りがあるはずなのに自分を裏切る人間がいる、という経験を彼は最近したばかりで、そのために、長時間の取り調べなど辛い思いをさんざんしているのである。</p> <p>いくら下調べをしても出国は一発勝負で、一発勝負特有の多くのリスクがある。確実にしようとリハーサルとかを入念にすれば、バレる危険も多くなるので、協力者を信じて少ないチャンスに賭けるしかない。</p> <p>こういうプロジェクトに乗れて、なおかつ成功するというのは、やはりゴーンさんは優秀なリーダーなのだと思う。</p> <p>ここでリスクを取らないとジリ貧になるという自分の状態を受け入れられるということだし、リスクを減らすための方策は全部打つということだし、リスクとリターンをきちんと総合的に評価できるということだ。しかも、それを評論家的な立場から言うのではなく、自分の身の安全がかかった状態で多くの人が関わるプロジェクトとしてリスクを取れるということだ。</p> <p>私はゴーンさんをヒーローとして見ているのではなく、資源として見ている。リスクテ<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A4%A5%AB">イカ</a>ーは今の日本に最も必要な貴重な資源だと思っている。</p> <p>ゴーンさんを告発したのは大きな間違いだと思うが、逮捕した以上は、法治の原則を貫き、身柄引き渡しに向けて最善の努力をすべきだ。だが、最大の失敗は逃したことではなくて告発したことだ。</p> <p>ゴーンさんを上司にしたり友達にしたくはないが、社長や総理大臣にはリスクテ<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A4%A5%AB">イカ</a>ーがなってほしい。リスクテ<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A4%A5%AB">イカ</a>ーは石油や輸入食料品と同じように資源と見るべきで、リスクテ<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A4%A5%AB">イカ</a>ーがグレーなことをするのは、つまりルールに対する観点や倫理観を一般の人と共有しないのは、ほとんどその資源の性質のように考えるべきだと私は考える。石油が燃えて危ないから輸入しないとか燃えなくするという議論は成立しない。その有用性を失わない範囲で適切に管理すべきで、石油だったら、必要量を輸入して十分な備蓄も確保せよとみんな言うだろう。リスクテ<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A4%A5%AB">イカ</a>ーも必要量を輸入するか生産すべきであって、そのための費用は純粋に損得計算だけで考えるべきだと思う。</p> essa 7payは不正利用報告をクレーマーのようにとらえているのでは? hatenablog://entry/26006613386683978 2019-08-04T19:24:26+09:00 2019-08-04T19:24:26+09:00 7payの撤退の会見について、その素早い損切りの決断を大局的な損害の極小化という意味で評価する意見をいくつか目にした。同意できる部分もあるが、不正利用の原因をリスト攻撃だと強弁するところなど、どうにも違和感を感じる部分も多い。この違和感は、エンジニアの多くが感じているもののようだが、それは最後まで解消されないまま終わりそうだ。 これについて、「7payの関係者の多くは不正利用の報告をクレーマーに対応する方法論で処理している」と考えると説明しやすいのではないかと思った。 新しい商品やサービスに対して、消費者から多くのクレームが同時に上がったら、無視していいものではない。むしろ、改良のための貴重な… <p>7payの撤退の会見について、その素早い<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C2%BB%C0%DA%A4%EA">損切り</a>の決断を大局的な損害の極小化という意味で評価する意見をいくつか目にした。同意できる部分もあるが、不正利用の原因をリスト攻撃だと強弁するところなど、どうにも違和感を感じる部分も多い。この違和感は、エンジニアの多くが感じているもののようだが、それは最後まで解消されないまま終わりそうだ。</p> <p>これについて、「7payの関係者の多くは不正利用の報告をクレーマーに対応する方法論で処理している」と考えると説明しやすいのではないかと思った。</p> <p>新しい商品やサービスに対して、消費者から多くのクレームが同時に上がったら、無視していいものではない。むしろ、改良のための貴重な情報源として生かすべきだ。そのためには、クレームを分類して、同じような指摘が多く上がっているところから、対応していく。ここまでは、クレーム処理も不正利用報告も同じだろう。</p> <p>不正利用の被害を分析していくと、多くがリスト攻撃の被害だという主張は、信じてよいと思う。割合や被害金額から見て、パスワードを使いまわして、チャージ用パスワードにも同じパスワードを使い、単純なリスト攻撃でチャージから不正購入までされてしまった人が、それくらいいてもおかしくない。</p> <p>ここまでの分析は正しいし、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%BB%A5%D6%A5%F3%A5%A4%A5%EC%A5%D6%A5%F3">セブンイレブン</a>グループが、それを今後の教訓として活かしていける可能性は高いと思う。</p> <p>問題は、この分類に当てはまらない、特異な報告をどう扱うかだ。特異な不正報告は特異なクレームと全く違う対応をすべきだ。</p> <p>特異なクレームというのは、一般の人なら「まあ、それでいいよ」というところで怒りがおさまらず、しつこくしつこく同じことを言い張って譲らない人とか、虫が入るわけのない食品に虫が入ったと言う人とか、いわゆるヘビークレーマーになるだろう。</p> <p>こういう人の主張をいくらしっかり聞いても、それが商品やサービスの開発に役立つヒントになるとは思えない。そういうクレーマーが来たら、だんだんと専門性の高い人に<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%B9">エス</a>カレーションしていって、最後に警察や弁護士にというシステムを整備する必要はあるだろうが、会社としてちゃんと話を聞く必要はない。</p> <p>しかし、不正報告では、逆に、他の人にはあり得ない現象を報告している人や、登録やチャージの操作をきちんと記録して「絶対自分の落ち度ではない」と言い張る人、特異な報告は、貴重な情報源だ。<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C4%A5%A4%A5%C3%A5%BF%A1%BC">ツイッター</a>などで見ると、そういう信頼性の高い特異な報告がいくつかある。</p> <p>ここで、特異な報告の扱い方として、人間の集団心理に対するロジックとコンピュータに対するロジックは、正反対の対応を要求する。</p> <p>特異なヘビークレーマーは、放置しても、そのクレーム内容が他の普通のユーザに伝染することはない。もちろん、対応がよくなければ<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/SNS">SNS</a>で炎上というのはあり得るが、その時にどちらがおかしいかは、一般常識で判定される。</p> <p>特異な不正報告は、未発見の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C0%C8%BC%E5%C0%AD">脆弱性</a>から生まれている可能性があり、その場合、この<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C0%C8%BC%E5%C0%AD">脆弱性</a>が発見されたら、それが突如何千、何万という被害に拡大することはあり得る。というか、プロの犯罪者は、そういう報告を集めて、情報を精査し、実験を繰り返しているだろう。</p> <p>それが、他のユーザに適用可能かどうかは、人間の一般常識ではなくて、コンピュータのロジックで判定されるべきことになる。</p> <p>未発見の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C0%C8%BC%E5%C0%AD">脆弱性</a>は、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C0%C8%BC%E5%C0%AD">脆弱性</a>である限り、どういう種類の被害につながるか予測できない。だから、特異な不正利用の報告は件数が少なくても、論理的に信頼性を評価した上で、徹底的に原因を追求して、エンジニアやセキュリティの専門家が納得できるような調査報告をすべきだと思う。</p> <p>私は、こういうコンピュータ独特の論理と企業活動の関連を、「巨大で硬質な外部性を組織の内部に抱えこむ」(<a href="https://essa.hatenablog.com/entry/20150403/p1">ドロドロなIT - アンカテ</a>)と表現したことがある。思いつきでとっさに出てきた表現だけど、自分としては、なかなか気に入っている。</p> <p>もうちょっと簡単に言うと、想像を超えたコミュ障の理系オタクの部下をかかえた上司のような対応。</p> <p>私は、たぶんまわりからは、コミュ障のオタクと思われていると思うが、そういう人間でも最低限の空気は読む。普段ヘラヘラした上司が顔色を変えて「いいか、これは、今月中に終わらせるんだぞ。大変なことになるからな」とか言っていたり、普段目にしないようなエライ人が入れ替わり立ち代わりプロジェクトルームに出入りしていれば、「ああこれはやばいかも」というのは感じ取る。</p> <p>確信はなくても、「不具合は全部対処したので、もう完璧です」と、そのエライ人の前では言っておくくらいのことはできる。</p> <p>でも、コンピュータというのは、そういう配慮は一切なしで、書いた通りにしか動かない。今日はエライ人に最終報告する中で実際に画面を動かしてプレゼンするから、なんとか今日だけでいいから動いてくれとか、コンピュータにお願いしても、バグがあってそのバグの再現条件を踏めば、情け容赦なくエライ人の眼前でプログラムは落ちる。書いた通りにしか動かない。</p> <p>自分は、コミュ障かもしれないけど、こいつよりは全然マシだと思うのです、そういう時いつも(実体験×3)</p> <p>だから、 どうせ口を塞げないのなら「王様の耳はロバの耳」と先に言わせる、いっそのこと毎週定期的に言わせることにするという発想が<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%B8%A5%E3%A5%A4%A5%EB">アジャイル</a>という奴で、「巨大で硬質な外部性」を組織に取り込むには必須だと私は思うのだが、それ以前の問題として、人間の集団を率いて、顧客という別の人間の集団に立ち向かうリーダーとして優れている人が、むしろ危ういのは、やはり「巨大で硬質な外部性」の口を塞ぐ方に組織が一丸となって頑張ってしまうからだと思う。</p> <p>確信はないけど、「未発見の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C0%C8%BC%E5%C0%AD">脆弱性</a>があるので、その調査が終わるまで7payだけでなく7iD関連いったん全部止めましょう」がこの場合の正論である可能性がある。素早い撤退の決断は、おそらく「omni7だけは守り抜こう」という方向で組織全体にカツをいれたと思うのだけど、その空気の中でこの正論を言わなきゃいけない立場に自分が置かれたら、と想像すると、自分にとってはどんな悪夢よりも怖い。</p> essa 7pay経営陣がモノを知らないことより聞く耳を持たないことの方が深刻な問題 hatenablog://entry/17680117127215954078 2019-07-09T19:25:44+09:00 2019-07-09T19:25:44+09:00 でも、これは説得の方法はある。 流通業にコンピュータを売り込むことの一番の問題は、製造業と違って、投資という概念がないことだ。本業が日銭と値切りと他社を出し抜くことで成り立っているから、やりにくい相手であるのは間違いない。 ただ、流通業は客の動向には敏感だ。客は結局コスパで動くと思っている。 だから、犯罪者集団も客と同じようにコスパで動くと説得すればいい。実際、セキュリティとは、犯罪者から見て、自社がコスパの悪い対象であると納得させることだ。 安売りと同じ原理で、1円とか2円で売る必要はなくて、他の店より少しでも安くなれば、客はみんなこっちに来る。それと同じように、他のサイトに穴がなくて、こっ… <p>でも、これは説得の方法はある。</p> <p>流通業にコンピュータを売り込むことの一番の問題は、製造業と違って、投資という概念がないことだ。本業が日銭と値切りと他社を出し抜くことで成り立っているから、やりにくい相手であるのは間違いない。</p> <p>ただ、流通業は客の動向には敏感だ。客は結局<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B3%A5%B9%A5%D1">コスパ</a>で動くと思っている。</p> <p>だから、犯罪者集団も客と同じように<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B3%A5%B9%A5%D1">コスパ</a>で動くと説得すればいい。実際、セキュリティとは、犯罪者から見て、自社が<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B3%A5%B9%A5%D1">コスパ</a>の悪い対象であると納得させることだ。</p> <p>安売りと同じ原理で、1円とか2円で売る必要はなくて、他の店より少しでも安くなれば、客はみんなこっちに来る。それと同じように、他のサイトに穴がなくて、こっちに穴があれば、みんなこっちに来る。両方に穴が開いていれば、より簡単な穴の方を狙ってみんなこっちに来る。</p> <p>価格が99円対100円だった時に、売上が99対100の比率になるのではなく、ほとんどの客が99円の方に殺到する。それと同じように、犯罪者は一番簡単にハックできそうなサイトに殺到するのだ。</p> <p>だから、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%AC%A5%A4%A5%C9%A5%E9%A5%A4%A5%F3">ガイドライン</a>を遵守することが重要なんです。我流でやってるサイトは、いつも安売りしてる店と同じで、「ここに来ればなんかいい穴がありそうな気がする」と思われてしまう。</p> <p>結局、客も犯罪者も<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B3%A5%B9%A5%D1">コスパ</a>で動くマシーンみたいなものだから、扱い方は同じじゃないかな。</p> <p>でも、弁当の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B3%A5%B9%A5%D1">コスパ</a>が急に悪くなってるとこから見て、客の扱い方も忘れてしまったんじゃないかなという気がしないでもなくて、そうだとしたらお手上げです。</p> essa 毎日野菜を摂取するようにいいニュースを継続的に摂取 hatenablog://entry/17680117127179950441 2019-06-02T17:34:48+09:00 2019-06-02T17:36:09+09:00 私は、なるべく野菜の多く入ったメニューを意識的に選ぶようにしているのだが、それと同じような感覚で、毎日、Enlightenment Nowという本を少しづつ読んでいる。 Enlightenment Now: The Case for Reason, Science, Humanism, and Progress作者: Steven Pinker出版社/メーカー: Viking発売日: 2018/02/13メディア: ペーパーバックこの商品を含むブログ (1件) を見る これは、まだ日本語訳は出てないが、このブログに、章ごとの詳細な要約がある。 B073TJBYTB の検索結果 - shoreb… <p>私は、なるべく野菜の多く入ったメニューを意識的に選ぶようにしているのだが、それと同じような感覚で、毎日、<a href="https://www.amazon.co.jp/dp/B073TJBYTB/">Enlightenment Now</a>という本を少しづつ読んでいる。</p> <p><div class="hatena-asin-detail"><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/0525559027/hatena-blog-22/"><img src="https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/51cWT1TOr9L._SL160_.jpg" class="hatena-asin-detail-image" alt="Enlightenment Now: The Case for Reason, Science, Humanism, and Progress" title="Enlightenment Now: The Case for Reason, Science, Humanism, and Progress"></a><div class="hatena-asin-detail-info"><p class="hatena-asin-detail-title"><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/0525559027/hatena-blog-22/">Enlightenment Now: The Case for Reason, Science, Humanism, and Progress</a></p><ul><li><span class="hatena-asin-detail-label">作者:</span> Steven Pinker</li><li><span class="hatena-asin-detail-label">出版社/メーカー:</span> <a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/Viking">Viking</a></li><li><span class="hatena-asin-detail-label">発売日:</span> 2018/02/13</li><li><span class="hatena-asin-detail-label">メディア:</span> ペーパーバック</li><li><a href="http://d.hatena.ne.jp/asin/0525559027/hatena-blog-22" target="_blank">この商品を含むブログ (1件) を見る</a></li></ul></div><div class="hatena-asin-detail-foot"></div></div></p> <p>これは、まだ日本語訳は出てないが、このブログに、章ごとの詳細な要約がある。</p> <p><a href="https://shorebird.hatenablog.com/search?q=B073TJBYTB">B073TJBYTB &#x306E;&#x691C;&#x7D22;&#x7D50;&#x679C; - shorebird &#x9032;&#x5316;&#x5FC3;&#x7406;&#x5B66;&#x4E2D;&#x5FC3;&#x306E;&#x66F8;&#x8A55;&#x306A;&#x3069;</a></p> <p>「ファクトフルネス」と似たような本だが、もっと厚くて「どう言う観点から見ても世界は良くなっている」としつこくしつこく言い続けてる本だ。</p> <p><div class="hatena-asin-detail"><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822289605/hatena-blog-22/"><img src="https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/51o95aW415L._SL160_.jpg" class="hatena-asin-detail-image" alt="FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣" title="FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣"></a><div class="hatena-asin-detail-info"><p class="hatena-asin-detail-title"><a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822289605/hatena-blog-22/">FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣</a></p><ul><li><span class="hatena-asin-detail-label">作者:</span> ハンス・ロスリング,オーラ・ロスリング,アンナ・ロスリング・ロンランド,上杉周作,関美和</li><li><span class="hatena-asin-detail-label">出版社/メーカー:</span> <a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C6%FC%B7%D0BP">日経BP</a>社</li><li><span class="hatena-asin-detail-label">発売日:</span> 2019/01/11</li><li><span class="hatena-asin-detail-label">メディア:</span> 単行本</li><li><a href="http://d.hatena.ne.jp/asin/4822289605/hatena-blog-22" target="_blank">この商品を含むブログ (1件) を見る</a></li></ul></div><div class="hatena-asin-detail-foot"></div></div></p> <p>「ファクトフルネス」は、この伝わりにくいメッセージをどう伝えたらいいか誠実に考え抜いて練りに練ったもので、読者を自分の仲間にしていこうという優しさを感じるが、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B9%A5%C6%A5%A3%A1%BC%A5%D6%A5%F3%A1%A6%A5%D4%A5%F3%A5%AB%A1%BC">スティーブン・ピンカー</a>は、なんだかちょっとキレ気味で、読者は論争相手だと思っているみたいだ。<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B5%DC%CB%DC%C9%F0%C2%A2">宮本武蔵</a>が寝てる時に刺客に襲われても軽々やっつけてしまうように、ピンカーはいつ何時どこから反論されても、即論破して相手には情けをかけず一刀両断する。その分だけ、常に油断なくデータから実証的かつ多面的に論じていて、ぶ厚い本になっている。自分の目的にはこちらの方があっている。</p> <p>「野菜は年に一度だけ食べません」とか言ったら、来年の健康診断の時に、栄養士さんに栄養指導の時に、相当怒られると思う。私は、数年前から健康診断の時に「栄養指導」といって、栄養士さんの面接を受けて、一週間分の食事のメニューをチェックされているのだが、ラーメンとか甘いものが多いとネチネチとしつこく注意を受けてしまう。</p> <p>「それが好きだから」と言ってももちろん許してくれなくて、「あなたの体のために、少しだけ我慢して、なるべく野菜の多い定食とかを選びましょう」と言われる。言い方は丁寧だけど、有無も言わせぬ圧迫感で言われるので、この指導の時間が苦手だ。</p> <p>感情的には納得できてないのだけど、この指導が必要なことはわかっている。自分の体は狩猟採集で10万年生き抜いた原始人のDNAからできていて、甘いものや油物がめったに手に入らない環境に最適化されている。だから、本能は「そういうものは全て摂取せよ」と命じるのだけど、現代の生活ではそういうものがいくらでも手に入るので、その本能を押さえて行動を変えなくてはいけないのだ。</p> <p>「ファクトフルネスを一冊読んだら、当分その手の本を読みません」というのはダメだと思う。「Enlightment Now」はぶ厚いし、英語なので、1日数ページしか読めない。そこが自分にはちょうどよくて、毎日、毎日少しづつ読む。</p> <p>自分の頭は、部族の中で10万年生き抜いた原始人のDNAからできていて、悪いニュースがめったに手に入らない環境に最適化されている。だから、本能は「そういうものは全て摂取せよ」と命じるので毎日毎日<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A4%CF%A4%C6%A4%CA%A5%D6%A5%C3%A5%AF%A5%DE%A1%BC%A5%AF">はてなブックマーク</a>や<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C4%A5%A4%A5%C3%A5%BF%A1%BC">ツイッター</a>を読んでしまうんだけど、その本能を押さえて行動を変えなくてはいけないのだ。</p> <p>「Enlightment Now」には、各章にグラフが二、三個あって、もちろん全部データの出所が明らかになっている。グワーンと右肩上がりになるやつと、ふらふらしつつも長い目で見るとジワジワ下がってるやつかどちらかで、どのグラフも執拗に世の中が平和で安全になっていることを示している。こういう話はなかなか頭に入ってこないので、一年くらいかけて読み終えたら、もう一周しようかなと思っている。</p> <p>ファクトチェックというより、必要なのは栄養指導だ。原始時代に、何かが毎年少しづつ良くなって、30年くらいで<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CA%A3%CD%F8">複利</a>計算して倍増とか数十倍なんていうものはなかった。だから、そういう変化を見れないように人類ができているのは、よく考えてみれば当たり前のことだ。テロや通り魔や航空機事故は、「その辺にライオンがうろついている」という情報と相似形で、油物や甘いものと同じように我々をひきつけるし、摂取されたら長く人体の中に蓄積する。</p> <p>でも、実際に今世の中を動かしているのはいいニュースで、「世の中は少しづつ少しづつよくなっていて長い目でふりかえって見るとその蓄積は相当なものだ」系の情報を基盤として考えることが、功利的にも実存的にも絶対必要だと思う。もちろんなにごともバランスは重要だが、今時、悪いニュースに不足するなんて心配はまず無用だろう。</p> essa 21世紀には暴力のない「死」をイマジンしたい hatenablog://entry/17680117127043156289 2019-04-17T21:38:16+09:00 2019-04-17T21:45:52+09:00 佐々木は「イマジン」の理想を否定している、冷酷な現実主義者だ、みたいな批判もあるようですが、そうではありません。20世紀の社会に適合していた理想のあり方では21世紀に対応できない。21世紀に合わせた新しい理想を生み出さなければならない、と主張しているのですよ。— 佐々木俊尚 (@sasakitoshinao) April 15, 2019 「イマジンが20世紀を代表しているような意味で、21世紀を代表できる音楽」というのは面白い問いかけだと思って、少し考えてみたら、これを思い出した。 www.youtube.com ( ↑YouTube Premiumに登録するとみれます。今だと一ヶ月無料なの… <p><blockquote class="twitter-tweet" data-lang="HASH(0xda79a48)"><p lang="ja" dir="ltr">佐々木は「イマジン」の理想を否定している、冷酷な現実主義者だ、みたいな批判もあるようですが、そうではありません。20世紀の社会に適合していた理想のあり方では21世紀に対応できない。21世紀に合わせた新しい理想を生み出さなければならない、と主張しているのですよ。</p>&mdash; <a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BA%B4%A1%B9%CC%DA%BD%D3%BE%B0">佐々木俊尚</a> (@sasakitoshinao) <a href="https://twitter.com/sasakitoshinao/status/1117646297723334656?ref_src=twsrc%5Etfw">April 15, 2019</a></blockquote><script async src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script></p> <p>「イマジンが20世紀を代表しているような意味で、21世紀を代表できる音楽」というのは面白い問いかけだと思って、少し考えてみたら、これを思い出した。</p> <p><iframe width="480" height="270" src="https://www.youtube.com/embed/SdNLYyKVk5I?feature=oembed" frameborder="0" allow="accelerometer; autoplay; encrypted-media; gyroscope; picture-in-picture" allowfullscreen></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://www.youtube.com/watch?v=SdNLYyKVk5I">www.youtube.com</a></cite></p> <p>( ↑<a href="https://www.youtube.com/premium/originals">YouTube Premium</a>に登録するとみれます。今だと一ヶ月無料なので、登録してすぐ解除するのがオススメ)</p> <p>この短いクリップの中で、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B3%A5%E0%A5%A2%A5%A4">コムアイ</a>はなんども「死と再生」を繰り返すのだけど、その「死」に少しも暴力の香りがなくて、エネルギーだけがあるのが新鮮で21世紀的だと思う。</p> <p>そして、この音楽の中で、テク<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%CE%A5%ED">ノロ</a><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B8%A1%BC">ジー</a>と自然が見事に融合している。</p> <p>「融合」というのは、境界を壊すことだから、いかなるかたちでもいつも暴力的で、それは僕たちが境界を守ろうとしているからだ。境界を守ることが「生」であって、その努力を粉砕するのが「融合」であり、国境のない世界だ。「イマジン」が暴力的な言葉を喚起するのは、だから必然かもしれない。</p> <p>しかし、「<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B2%B0%B5%D7">屋久</a>の日月節(やくのじつげつぶし)」のミュージックビデオの中には、それがない。<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B3%A5%E0%A5%A2%A5%A4">コムアイ</a>は菩薩顔で大地に溶け出し、またよみがえり、蘇るとまたすぐ死ぬ。すぐ死ぬことが重要で、「死」が次の「生」のタネにしかならないのは、暴力的だと思う。そういうのではなくて、「生」と対等の関係にある「死」が描かれている。</p> <p>テク<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%CE%A5%ED">ノロ</a><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B8%A1%BC">ジー</a>がそういう「死」に対して中立的であり、そういうタイプの「死」を表現するために使えるというのが、驚きだった。境界を守ろうとしてない人たちにとっては、テク<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%CE%A5%ED">ノロ</a><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B8%A1%BC">ジー</a>はそういうもので、中立的なのだろう。そこに21世紀の可能性があるのだと思う。</p> essa Webの次はすでにいつでもそこにある hatenablog://entry/17680117126995166709 2019-03-17T22:28:55+09:00 2019-03-18T09:22:19+09:00 Webが死につつあると最近よく聞くようになってそうかもしれないと思いかけたが、IPFSを知って考え直した。 と言っても、IPFSがHTTPを置き換える未来を確信した訳ではない。ホワイトペイパーを眺めてみて、「最近は革命もお手軽にできるようになったもんだな」と思ったからだ。 IPFSの構想は壮大だが、その技術はすでによく使われているものの使い回しだ。DHTベースのP2P, BitTorrentベースのファイル転送、gitとほぼ同じデータ構造の組み合わせで、Filecoinという仮想通貨ベースのシステムで、データの永続性のためのインセンティブを与えるということらしい。 実装に使われたGo言語も含め… <p>Webが死につつあると最近よく聞くようになってそうかもしれないと思いかけたが、<a href="https://ipfs.io/">IPFS</a>を知って考え直した。</p> <p>と言っても、IPFSがHTTPを置き換える未来を確信した訳ではない。<a href="https://github.com/ipfs/papers/raw/master/ipfs-cap2pfs/ipfs-p2p-file-system.pdf">ホワイトペイパー</a>を眺めてみて、「最近は革命もお手軽にできるようになったもんだな」と思ったからだ。</p> <p>IPFSの構想は壮大だが、その技術はすでによく使われているものの使い回しだ。DHTベースの<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/P2P">P2P</a>, <a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/BitTorrent">BitTorrent</a>ベースのファイル転送、gitとほぼ同じデータ構造の組み合わせで、<a href="https://filecoin.io/">Filecoin</a>という仮想通貨ベースのシステムで、データの永続性のための<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A4%A5%F3%A5%BB%A5%F3%A5%C6%A5%A3%A5%D6">インセンティブ</a>を与えるということらしい。</p> <p>実装に使われたGo言語も含めて、全てしっかり実証された技術だけを使っているので、これはうまくいくだろうと思った。</p> <p>しかし、たとえば、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B8%F8%B3%AB%B8%B0%B0%C5%B9%E6">公開鍵暗号</a>とか<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C9%BD%B7%D7%BB%BB">表計算</a>のような、本物の天才のヒラメキは感じない。誰でも思いつきそうだし、ちょっと腕のある人なら誰でも実装できそうなものだ。この組み合わせがうまくいくなら、これを作った人は天才と呼んでもいいかもしれないが、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B8%F8%B3%AB%B8%B0%B0%C5%B9%E6">公開鍵暗号</a>の発明が数十年に一人の天才だとしたら、こちらは、一年に一人とも言えなくて、一年に10人くらいは、これくらいの人が出てきてもいいように思う。</p> <p>でも、一年に10人くらいのレベルのそれくらいの天才の人にとって、今は、とても仕事がしやすい時代なのだと思う。DHTと<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/BitTorrent">BitTorrent</a>とgitがすでにあって、その技術は<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%BD%A1%BC%A5%B9%A5%B3%A1%BC%A5%C9">ソースコード</a>レベルで公開されていて、それくらいの人なら、一瞬で自分の武器として使える。</p> <p>つまり、世界は<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C6%C3%B0%DB%C5%C0">特異点</a>を越えたのだ。<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C6%C3%B0%DB%C5%C0">特異点</a>とは、ターミネータが人類に反逆する日のことではなくて、AIがAIを賢くする正のフィードバックがかかり始める日のことで、それと似たような意味で、過去の天才の成果物が現在の天才を支え、その現在の天才の成果が、明日の天才を超加速する、そのフィードバックが止まらなくなる日だ。</p> <p>Webの未来を予測するには、衆愚の行き着く先ではなく、1年に10人くらいの天才のやることをウォッチすべきだ。数十年に一人の天才は、いつ生まれるかわからないし、何をするかわからない。でも1年に10人くらいのレベルだと、そういう人が継続的、安定的に生まれてくることは確実だ。そういう人たち同士の相互作用が、これからすごいことになって、IPFSくらいのレベルのプロジェクトを次々起こしていくというのが私の予測だ。</p> <p>そういうものがどれくらい使われるようになるかは、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/GAFA">GAFA</a>がどれくらいEvilになるかにかかっていると思う。</p> <p><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/GAFA">GAFA</a>が、何もしなくても今の独占的地位を保っていられると思うのが間違いだ。<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/GAFA">GAFA</a>は、こういうIPFSのようなプロジェクトに追われているが、それに負けないくらいの勢いで革新し続けているので、今の地位を保っている。Evilになる暇はないしそれはよくわかっていると思うが、もし仮にEvilになれば、一瞬でそういう新顔に抜かれてしまうだろう。</p> <p><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/GAFA">GAFA</a>が世界を支配しているそのすぐ下に、ダイナミックで不安定なレイヤーができていて、この層の厚みが一方的に増して行くというのが、これからの世界だ。これは<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D7%A5%ED%A5%B0%A5%E9%A5%DE">プログラマ</a>だけに見えるいびつな世界観なのだと思うのだが、ご承知のようにソフトウエアは世界を飲み込むので、この世界観がスタンダードになるべきだと思う。</p> <p>Webが使いづらくなったら、IPFSのような別の選択肢が注目を集め、注目を集めれば一瞬でスパークするだけの<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C0%F8%BA%DF%C5%AA">潜在的</a>能力を持ったプロジェクトは他にもたくさんある。</p> <p>そして、それらの屍を<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B5%A1%BC%A5%D9%A5%A4">サーベイ</a>して、さらにいいものを作るであろう1年に10人レベルの天才は、今も生まれ続けている。その人たちは、IPFSの時よりもっと豊富な過去の成果をスタート地点として仕事を始めるのだ。</p> <p>衆愚と<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/GAFA">GAFA</a>だけ見ていてはWebの未来はわからない。そこに割り込んでいくる中くらいの天才の集団(の予選を勝ち抜いた人)の動きが最も重要で、むしろそれが一番重要なファクターになる<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C6%C3%B0%DB%C5%C0">特異点</a>を越えたような気がする、というのが、IPFSを見て感じたことだ。</p> <p>だから、Webがこれからおかしくなって崩壊することは充分あり得ると思っているだけど、それを待ってそこから飛び立つ人を世界はこれから必要以上に供給し続けると私は思う。それは感情的な希望的観測ではなくて、物理学の法則のようなメ<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%AB%A5%CB">カニ</a>ズムとして、何かが確立したような気がする。</p> essa 武勇伝を忘れる勇気 hatenablog://entry/17680117126964461699 2019-02-14T22:18:23+09:00 2019-02-15T09:28:15+09:00 オリエンタルラジオ 武勇伝 「あっちゃん、渋谷まで山の手線で一本だな」 「いやだ!」 「じゃあ銀座線」 「いやだ!」 「じゃあ半蔵門線」 「いやだ!」 「じゃあ埼京線?」 「いやだつってんだろう!」 「どうして!」 「誰かの敷いたレールの上を走るなんてもうまっぴらなんだよ」 「あっちゃんキャッコイイー!」 日本では、公的なルールというのは、誰にでも平等に適用され、誰もが真剣に守るものではなくて、常に適切なポイントより少し前に置かれる線である。 制限速度が40kmだったら、誰もが39km以下で走るわけではなく、それよりちょっと上の45kmとか50kmで走る。40kmピッタリで走ることは、どちらか… <iframe width="560" height="315" frameborder="0" allowfullscreen="" src="//www.youtube.com/embed/VuSyAL2WNOU"></iframe> <p><br><a href="https://youtube.com/watch?v=VuSyAL2WNOU">オリエンタルラジオ 武勇伝</a></p> <ul> <li>「あっちゃん、渋谷まで山の手線で一本だな」</li> <li>「いやだ!」</li> <li>「じゃあ銀座線」</li> <li>「いやだ!」</li> <li>「じゃあ<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C8%BE%C2%A2%CC%E7%C0%FE">半蔵門線</a>」</li> <li>「いやだ!」</li> <li>「じゃあ<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BA%EB%B5%FE%C0%FE">埼京線</a>?」</li> <li>「いやだつってんだろう!」</li> <li>「どうして!」</li> <li>「誰かの敷いたレールの上を走るなんてもうまっぴらなんだよ」</li> <li>「あっちゃんキャッコイイー!」</li> </ul> <p>日本では、公的なルールというのは、誰にでも平等に適用され、誰もが真剣に守るものではなくて、常に適切なポイントより少し前に置かれる線である。</p> <p>制限速度が40kmだったら、誰もが39km以下で走るわけではなく、それよりちょっと上の45kmとか50kmで走る。40kmピッタリで走ることは、どちらかと言えば顰蹙を買う行為で、悪くすれば<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C0%FA%A4%EA%B1%BF%C5%BE">煽り運転</a>とかのひどい目にあう。</p> <p>ルールというものはそういうもんだということを、学校の中にいる間に体で覚える。校則や先生の言うことをきちんと守る奴は、どちらかと言えば、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%AC%A5%EA">ガリ</a>勉キャラや風紀委員キャラとして嫌われる危険性が高い。人気があるのは、それをちょっとハミ出す「武勇伝」を持った人間だ。</p> <p>この公的な制度やルールをちょっとハミ出す「武勇伝」的な感覚は、社会に出てからも必要とされる。教室で覚えるべきことは、勉強だけではなく、そういう「公的なルールを補助線として、どのくらいそこからはみ出た所に、適切なラインがあるか」感じ取る能力だ。</p> <p>バカッター騒動を起こしてしまう人は、鈍感で非常識な人なのではなく、むしろ、そういう「武勇伝」的感覚が敏感で、友達の多い、ある意味では社会性のある人なのだと思う。少なくとも誰もが動画を共有して一緒に楽しむ友人を持っているからこそ、それを撮影、投稿してしまったのだろう。</p> <p>もちろん、交通法規でも制限速度とは違って、たとえば、一方通行なんかを破ればすぐにトラブルを起こすし、一発アウトで取り締まられる可能性も高い。言われている通りに厳守すべきルールもあり、そうではないルールもある。本来の社会性とは、その違いを見抜くことも含まれていて、そこは欠けていると言わざるを得ない。</p> <p>しかし、日本の伝統では、「やんちゃ」が行き過ぎた場合、一発アウトとなるケースは少なく、多くは偉い人の裁量によって処分が決められる。</p> <p><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B9%A5%AF%A5%EA%A1%BC%A5%F3%A5%B7%A5%E7%A5%C3%A5%C8">スクリーンショット</a>違法化という流れも、そういう伝統に戻したい人の意向が多く反映されていると思う。そういう場面の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BA%DB%CE%CC%B8%A2">裁量権</a>が権力の源泉だからだ。誰もがラインの少しだけ外にいて、誰を捕まえるかを裁量で決められる状態が一番都合がいい。</p> <p>動画や音声が気軽に飛び交うインターネットというものは、人治主義と相性が悪い。</p> <p>バカッター動画も関係者の本音としては「今回だけは大目に見てやるからもうするなよ」と一つの「武勇伝」として終わらせたい所ではないかと思うが、動画があちこちで共有されてしまったら、そういう裁量を効かせる余地がない。</p> <p>やっぱりテク<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%CE%A5%ED">ノロ</a><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B8%A1%BC">ジー</a>は、強引に世の中を変えてしまうと思うが、「ブランド」というものもその中で再考を迫られると思う。</p> <p>不適切動画は、その店ではなくブランドを傷つける。みんなどことどこの不適切動画が騒動になっているか知っていると思うが、それがどこの県の何店なのか即答できる人は少ないだろう。みんな不適切動画の強烈な印象にブランド名を被せて記憶する。</p> <p>今までは、ブランドが大きいほど有利だった。一つのテレビコマーシャルが全国何百件全部の店の宣伝になるからだ。</p> <p>しかし、不適切動画を撲滅するのは、店の数が多いほど困難になる。どこの世界にも先生の言うことをそのまま真面目に聞かない人間が少数存在する。ブランドを持つ店の大半で適切な指導をするのは可能だが、全部というのは困難だ。先生の言うことの多くはタテマエだと学習した人間の何割かは、店長やスーパーバイザーが厳しく言ったことも同じように受け取る。これは「武勇伝」を作るチャンスだと。</p> <p>「あっちゃんかっこいい」はどう見ても、あっちゃんを痛い人として笑ってもらうためだが、そういう「あっちゃん」はどこにでもいるのだろう。</p> <p>むしろ、こういう事故はごく少数はどうやっても起こるもんだとして、その被害範囲を狭くする工夫をした方が現実的だと思う。つまり、ブランドを分断して、たとえば、コンビニ名がその県の中でしかないブランドだったら、その県以外の人は不適切動画を見ても笑って自分の家の近くのコンビニには気にしないで行ける。</p> <p>ブランドが大きいことが有利な理由は、ほとんどマスメディア上での宣伝のためなので、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/SNS">SNS</a>を使えば、同じくらいのコストや労力で小さいブランドを個別に展開していくこともできるのではないだろうか。</p> <p>今一番重要な教育は、「忘れる」ことを教えることである。</p> <p>不適切動画予備軍に、「<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/SNS">SNS</a>への投稿は注意すること」とか「食品を必ず衛生的に扱うこと」とか説教しても意味がない。「武勇伝」という概念の危険性を教えなくてはいけない。物理的な証拠があったら裁量の効かせようがないので、法律通りに処理される。ルールを教えるのではなく、「君が学んできたルールのとらえ方を忘れなさい」と教えなくてはいけない。</p> <p>とりあえず、教室という空間で長く生きた経験を持つ人は、そこで知らずに学んでいることを総点検した方がいいと思う。そこで学ぶことは無意識に学ぶことも含めて社会で役に立つものが多かった。だから、制限速度の標識から本当に走るべき速度を知るということの、数字では表現できないもっと難しいバージョンを、みんな覚えていて、しかもそれを学習したということを意識してもいない。</p> <p>そういう裁量ベースのルールがすぐに消える訳ではいが、これから「裁量」が物理的証拠と対立した時どうするかの激しい葛藤があちこちで起こる。意識的でいないと思わぬところでその葛藤に巻き込まれてしまう。だから、何を覚えたかではなくて、自分が何をどこでどのように学習したか点検して、必要に応じて、それを忘れることが重要だと思う。「裁量」や「武勇伝」以外にもそういう忘れるべきものがたくさんあるだろう。</p> essa サマータイムによって組織の決断力が問われるのかもしれない hatenablog://entry/10257846132615860315 2018-08-18T00:00:00+09:00 2018-08-30T10:46:12+09:00 サマータイムに対応する方法は3つある。 なにもしない うまくやる きちんとやる 「きちんとやる」とは、「コンピュータが処理する全てのデータの時刻について、オフセット値を明確に定義した上で、そのデータの処理方法が適切か確認する」ということだ。簡単に「きちんとやる」を行なうには、システム時刻、データベース、通信をUTCに統一し、画面上の入出力などでは既存の国際化ライブラリを使えばいいだろう。この考え方であれば、オフセット値がどうなるかはその項目が人の目に触れるものであるかどうかで判断できる。全ての時刻の項目を見直すというのは、プログラマの作業量としては膨大なものになるが、個々の判断は簡単なことが多… <p><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B5%A5%DE%A1%BC%A5%BF%A5%A4%A5%E0">サマータイム</a>に対応する方法は3つある。</p> <ul> <li>なにもしない</li> <li>うまくやる</li> <li>きちんとやる</li> </ul><p>「きちんとやる」とは、「コンピュータが処理する全てのデータの時刻について、オフセット値を明確に定義した上で、そのデータの処理方法が適切か確認する」ということだ。</p><p>簡単に「きちんとやる」を行なうには、システム時刻、データベース、通信を<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/UTC">UTC</a>に統一し、画面上の入出力などでは既存の国際化ライブラリを使えばいいだろう。この考え方であれば、オフセット値がどうなるかはその項目が人の目に触れるものであるかどうかで判断できる。</p><p>全ての時刻の項目を見直すというのは、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D7%A5%ED%A5%B0%A5%E9%A5%DE">プログラマ</a>の作業量としては膨大なものになるが、個々の判断は簡単なことが多い。</p><p>「なにもしない」は、コンピュータのプログラムもシステム時刻も一切変更しないというものだ。時計に「9:00」と表示されていたら、人間がそれを見て「ああ、今7:00 か」と読みかえる。10:00 に買い物をしたら、8:00と印刷されたレシートを客に渡す。</p><p>こちらは、いちいち読み替えをするユーザの負担が大きくなるが、やれないことではないだろう。</p><p>「きちんとやる」と「なにもしない」は、作業量は大きいが不確定要素は少ない。</p><p>しかしおそらくこの二つは多くの場合、<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:受け">受け</a>入れられず、たぶん、ほとんどの社長は「うまくやれ」と言うだろう。</p><p>「うまくやる」とは何かと言うと、ある部分では「きちんとやる」をして、ある部分では「なにもしない」を選択するということだ。「きちんとやる範囲はどこですか?」と聞けば社長は「それを考えるのがおまえの仕事だ」と言う。</p><p>確かに、世の中には絶対に落ちてはいけない、わずかな不整合でも許されないシステムがある。そういうシステムには「きちんとやる」しか選択肢がない。そういうシステムをリストアップすることはエンジニアの仕事だし、できるだろう。</p><p>また、すでに「きちんとやる」に近い形で構築されているシステムもある。これについては、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D7%A5%ED%A5%B0%A5%E9%A5%DE">プログラマ</a>をちょっと投入することでユーザの不便を無くせるのだから、合理的に考えて「きちんとやる」が正解になる。</p><p>しかし、そういう優先順位でやっていくと、客の目に触れるレシートの時刻が二時間ずれているのを放置することになる。これでいいのだろうか?</p><p>また、「うまくやる」の一つの手段として、コンピュータの時刻を二時間動かすという方法がある。個人のデスクにあるパソコンなどは、これでいいことも多いが、そのパソコンの中で動いているプログラムは全て「きちんとやる」の路線からはずれることになる。つまり、今動いているプログラムをいくつか使用中止にしないと、パソコンの時刻を動かすという方法はできないかもしれない。</p><p>「うまくやる」とは、会社の中にあるコンピュータを白、黒、グレーに塗り分けることで、確かにこの塗り分けを適切にやれば、最小のコストで最大の効果が得られるが、これに失敗すると、「きちんとやる」で対応すべきシステムが動かなくなる。</p><p>「うまくやる」の中にある決断は、相互に関連するものが多く、技術と業務の両面をバランスよく見た判断が必要なものが多い。上位のSEで、その会社の業務をよく知っている人が多数必要になる。</p><p>つまり「うまくやる」には、不確定性が大きいという問題があるということだ。</p><p>この「なにもしない」「うまくやる」「きちんとやる」のどれを選ぶのかという決断が、これから日本中のあらゆる組織の経営者に求められるのだ。</p><p><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C2%BB%C0%DA%A4%EA">損切り</a>ができる経営者なら「きちんとやる」を選択するだろう。「きちんとやる」なら、当初の予想より膨らむ可能性は少ない。また、基本方針が明確なので、個別の作業(小さい決断)が相互関連することは少なく、平行して進められる。一部の遅れが他に響くことが少ない。人が足りなくなった場合、その業務や会社のことを知らなくても、国際化のライブラリの使い方さえわかっている<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D7%A5%ED%A5%B0%A5%E9%A5%DE">プログラマ</a>なら誰でもいいから人員さえ追加すれば、収束できる。</p><p>つまり、損が膨らまないことを重視するなら「きちんとやる」になる。</p><p>「なにもしない」は、負担をするのは<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D7%A5%ED%A5%B0%A5%E9%A5%DE">プログラマ</a>でなくユーザになることが大きく違うが、損の性質はこれと似ている。会社にある時刻は全部二時間ずれているという状態を想定して、どういうトラブルがあるか考えればいいわけで、考えやすいし事前の対策もたてやすい。レジの横に貼り紙をして「レシートの時刻は二時間ずれています。すみません」と謝ればいい。</p><p><a href="http://blogs.itmedia.co.jp/doc-consul/2018/08/post_104.html">&#x65E5;&#x672C;&#x3067;&#x30B5;&#x30DE;&#x30FC;&#x30BF;&#x30A4;&#x30E0;&#x5236;&#x3092;&#x7D76;&#x5BFE;&#x306B;&#x5C0E;&#x5165;&#x3057;&#x3066;&#x306F;&#x3044;&#x3051;&#x306A;&#x3044;&#x6280;&#x8853;&#x7684;&#x306A;&#x7406;&#x7531;&#x306E;&#x4E00;&#x90E8;&#xFF1A;&#x6280;&#x8853;&#x5C4B;&#x306E;&#x305F;&#x3081;&#x306E;&#x30C9;&#x30AD;&#x30E5;&#x30E1;&#x30F3;&#x30C8;&#x76F8;&#x8AC7;&#x6240;&#xFF1A;&#x30AA;&#x30EB;&#x30BF;&#x30CA;&#x30C6;&#x30A3;&#x30D6;&#x30FB;&#x30D6;&#x30ED;&#x30B0;</a>で例としてあげられているジョブのネットワークなどは、「なにもしない」が正解だろう。そうすると、一部のデータが営業時間に間に合わなくて、9:00開店なのに11:00までコンピュータが動かないみたいな悲惨なことになるが、それでも、こういうのに下手に手を入れて一日中全く動かなくなるよりはましだ。</p><p>平常時でも、これの<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B5%A5%DE%A1%BC%A5%BF%A5%A4%A5%E0">サマータイム</a>対応を「きちんとやる」ことは難しい。まして、こういう複雑なバッチジョブのネットワークの経験がある技術者は、これから二年間確保することが非常に難しくなる。無理に獲得しても、他とかけもちでここに集中して作業できなかったり、疲弊していたりだろう。期待できる技術のレベルが相当下がることは(払うお金はふだんよりずっと高くなるのに!)折り込んでおくべきで、重要な難しいシステムほど「なにもしない」が正解になる可能性は高くなると思う。</p><p>私は、駅の表示板や電車の社内モニターの時間が二時間ずれていても絶対に怒らない。今何時でいつ次の電車が来るのか自分で簡単に計算できる。運行制御システムのトラブルで電車が止まったり衝突したりするよりは、ずっといい。そういう<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C2%BB%C0%DA%A4%EA">損切り</a>はアリだと思う。</p><p><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C2%BB%C0%DA%A4%EA">損切り</a>できない経営者は、「うまくやる」を選んで、果てしなく膨らみ続けるコストを払った上に、どうしようもない混乱の二年間をすごすことになる。</p><br /> <p>最後に余談ですが、これを入れて3本の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B5%A5%DE%A1%BC%A5%BF%A5%A4%A5%E0">サマータイム</a>に関する記事を書いたのですが、最初のエントリのアイディアを思いついて、頭の中で練っている時、妻に「どうしたの、なんか顔色が悪いよ。具合悪いの?」と言われました。二本目を考えている時にも同じことを言われて、</p> <ul> <li>「<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B5%A5%DE%A1%BC%A5%BF%A5%A4%A5%E0">サマータイム</a>のことが心配でブログに何か書こうと思ってる」</li> <li>「<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B5%A5%DE%A1%BC%A5%BF%A5%A4%A5%E0">サマータイム</a>?仕事に関係するの?」</li> <li>「いや、うちの会社はほとんど国際化してあるから、仕事には関係ないんだけど...」</li> <li>「じゃ、何をそんなに考えこんでるんだよ。顔色悪いなんてもんじゃないよ。ほとんど死相だよ」</li> </ul><p>うちの妻はいろいろおかしなことを言うので、あまり気にしてなかったのですが、このエントリのアイディアを思いついた時には、「今、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B5%A5%DE%A1%BC%A5%BF%A5%A4%A5%E0">サマータイム</a>のこと考えてるでしょ。そうだよね、また死相が出てたよ」と当てられて驚きました。</p><p>自分では、「このアイディアで書いたらバズらないかな」とか「こんなムキになって結局中止になったらカッコ悪いな」とか思ってるんですが、エンジニアが<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B5%A5%DE%A1%BC%A5%BF%A5%A4%A5%E0">サマータイム</a>について考えてると意図せずとも死相が出てしまうらしいです。</p> essa サマータイム対応を0円でやるたった一つの方法 hatenablog://entry/10257846132615860342 2018-08-12T00:00:00+09:00 2018-08-30T10:46:14+09:00 それは、実施日の10年前に告知すること。そうすれば、0円は言いすぎだとしても現実的なコストで問題なく対応できるよ。 自分にとってこれは、「明日から電卓の+キーで引き算をして−キーで足し算をすることに決めた」みたいな話に聞こえる。誰がうれしいのかちっともわからないけど、「明日から」というところを「10年後から」にしてもらえば、何の困難もない。+と-のキートップの刻印を逆にすればいいだけで、電卓の設計には何の変更もいらない。キーの配置を変えてはいけないと言われたなら、中の配線を二箇所変えるだけ。「電卓の+キーと-キーを逆にすることは不可能である」なんて言う人は誰もいないと思う。しかし、「明日から」… <p>それは、実施日の10年前に告知すること。そうすれば、0円は言いすぎだとしても現実的なコストで問題なく対応できるよ。</p><br /> <br /> <p>自分にとってこれは、「明日から電卓の+キーで引き算をして−キーで足し算をすることに決めた」みたいな話に聞こえる。</p><p>誰がうれしいのかちっともわからないけど、「明日から」というところを「10年後から」にしてもらえば、何の困難もない。+と-の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%AD%A1%BC%A5%C8%A5%C3%A5%D7">キートップ</a>の刻印を逆にすればいいだけで、電卓の設計には何の変更もいらない。キーの配置を変えてはいけないと言われたなら、中の配線を二箇所変えるだけ。「電卓の+キーと-キーを逆にすることは不可能である」なんて言う人は誰もいないと思う。</p><p>しかし、「明日から」と言われたら、今、あちこちにある電卓はどうするの?</p><p>付箋紙を<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%AD%A1%BC%A5%C8%A5%C3%A5%D7">キートップ</a>のサイズに切り抜いて、日本全国の家庭やオフィスで、明日の朝一番にそれを貼りつけて、「+」「-」という字を<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:手書き">手書き</a>すればいいだろうか。でも、文具店や100円ショップの店頭にあるものはどうする?<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B3%AB%C9%F5">開封</a>して同じことをして、またパッケージに入れる?そんなもの売り物にならないよね。では、今店頭や倉庫にある電卓は全部廃棄して、新しいのと入れ替えるか。急遽増産したとして、それが行き渡るまでは、電卓が品不足になって値段が高騰するよね。</p><p>つまり、流通の途中にある電卓を修正するっていうことは、とても難しい。</p><p>電卓だったら半年くらいかな、流通の途中にある製品に手を入れないでいいようなプランになれば、それほど難しいことではないし、お金もそんなにかからない。</p><p>今ある工場の生産計画に合わせて、「次の製品から+-逆の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%AD%A1%BC%A5%C8%A5%C3%A5%D7">キートップ</a>で製造してね」と言っておいて、それが十分に行き渡ってから、切り替える。そうすれば、「店頭で全店員総出で電卓を箱から出して、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%AD%A1%BC%A5%C8%A5%C3%A5%D7">キートップ</a>にシールを貼り、また箱に詰めて陳列棚に並べる」なんて、<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:変な">変な</a>作業は発生しない。</p><p>それでね、この話で重要なことは、電卓の基盤とか筐体を設計している人が「そんな変更は簡単です、すぐできます」と言っても信じてはいけない、ということだ。むしろ、文具店や100円ショップの店長みたいな人に聞くべきだ。</p><p>これは、電卓の専門家でなくてもよくわかる話だし、説明するのも簡単だ。電卓の在庫の山を見せて、その在庫の山の前で、電卓を箱から出して<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%AD%A1%BC%A5%C8%A5%C3%A5%D7">キートップ</a>にシールを貼って、また梱包する、そういう一連の作業を見せて、「明日までに、この山を全部消化しなきゃならんのです。社員総出で徹夜でやってますが、とても間に合いません」と言えばいい。</p><p>まあでも、ソフトでも同じです。</p><p>残業計算でも電車の運行管理でも航空管制システムでも<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C5%C5%C7%C8%BB%FE%B7%D7">電波時計</a>でもビデオレコーダーでもなんでもいいけど「次の製品から<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B5%A5%DE%A1%BC%A5%BF%A5%A4%A5%E0">サマータイム</a>するのに、どれくらい余分にかかる?」と聞いてみたら、99%は「別に、次の製品サイクルから対応するなら大した問題じゃないよ」って言うだろう。まあ、さすがにコンピュータで、1%くらいはそれでも何やら難しいこと言って、「無理だ無理だ」って言うかもしれない。でも、それは残りの99%の人がちょっと手を貸してやればいい。なんたって国の威信をかけた大事な問題なんだから、それくらいしたっていいだろう。「次の製品から」とハッキリ言えば、文句を言う人はごく少数だ。</p><p>でも、仕掛り中の製品、流通在庫について、同じことをしてくれと言うと、<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:みんな">みんな</a>顔色が悪くなる「それはちょっと...」次の言葉が出て来ない。</p><p>彼らは、「在庫の山の前で、電卓を箱から出して<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%AD%A1%BC%A5%C8%A5%C3%A5%D7">キートップ</a>にシールを貼って、また梱包する、来年までに、この山を全部消化しなきゃならんのです。社員総出で徹夜でやってますが、とても間に合いません」みたいな泣き言を言っている自分を想像しているのですが、その状況がうまくイメージできんのです。</p><p>ソフトはリードタイムが滅茶苦茶長い。特に、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%BF%A5%A4%A5%E0%A5%BE%A1%BC%A5%F3">タイムゾーン</a>のようなOSのレベルの変更だと、基本的には、OSの新<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D0%A1%BC">バー</a>ジョンのリードタイムと配布の期間を別に見て、それが完了してからアプリケーションのリードタイムが来る。常に5年から10年の在庫をかかえて商売してるようなもんです。</p><p>私が、<a href="http://d.hatena.ne.jp/essa/20180807/p1">&#x30B3;&#x30F3;&#x30D4;&#x30E5;&#x30FC;&#x30BF;&#x30B7;&#x30B9;&#x30C6;&#x30E0;&#x306E;&#x30B5;&#x30DE;&#x30FC;&#x30BF;&#x30A4;&#x30E0;&#x5BFE;&#x5FDC;&#x3092;&#x5DE1;&#x308B;&#x4E8C;&#x3064;&#x306E;&#x697D;&#x89B3;&#x8AD6;</a>で通信の問題を中心にとりあげたのは、通信がからむとさらにリードタイムが長くなるからです。つまり、通信というのは、複数の組織がそれぞれのコンピュータで通信することが多くて、その場合、組織同士のマウンティングみたいなことが終わらないと、エンジニアは作業できない。犬が唸りながら睨みあうみたいに、どっちが偉いのか決めてからでないと、通信の仕様を決めるのがどっちか決まらない。</p><p>通信の仕様を決めるのは簡単だけど、通信の仕様をどっちが決めるのか決めるのは大変で、私が「リードタイム」と言う時問題にしてるのは通信の仕様を決める時間ではなくて、通信の仕様をどっちが決めるのか決める時間、つまり、マウンティングの時間です。</p><p>普通、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B7%A5%B9%A5%C6%A5%E0%B3%AB%C8%AF">システム開発</a>はマウンティングが終わってから始まる。そしてマウンティングの結果がひっくり返ることはほとんどない。普通の開発の見積りには、そういう時間は入れない。</p><p>でも、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B5%A5%DE%A1%BC%A5%BF%A5%A4%A5%E0">サマータイム</a>対応は、マウンティングからやり直すことになって、これは長くなりそうだな、というのが、上記のエントリの話です。</p><p>ちょっと違う言い方をすると、コンピュータっていうのは、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CA%D1%C6%B0%C8%F1">変動費</a>を固定費に変えるものです。</p><p>給料計算をして給与明細を書くのが、社員一人につき30分かかるとします。これを手作業でやってると、このコストは、社員の人数に比例するので<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CA%D1%C6%B0%C8%F1">変動費</a>です。</p><p>コンピュータでやると、プログラムを書くのに、たとえば1000万円かかる。しかし、プログラムを書いてしまえば、社員が1000人でも10万人でもコストはほとんどかからない。固定費です。</p><p>もし、そのプログラムに間違いがあって、印刷した給与明細を一枚ずつ修正しなきゃならんとしたら、固定費になったはずのコストが、また<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CA%D1%C6%B0%C8%F1">変動費</a>に戻る。その時には、社員が1000人と1万人で大きな違いが出る。</p><p>そして、今の話の中で固定費と言っているプログラム開発の中にも同じ構造があります。</p><p>1000本のプログラムを書くとして、そのプログラムの中に共通の、たとえば<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%BF%A5%A4%A5%E0%A5%BE%A1%BC%A5%F3">タイムゾーン</a>対応があったとして、これを共通の部品にして誰か一人が書けば固定費です。その部品を使うプログラムが1000本あっても10万本あっても費用が変動することはありません。</p><p>しかし、その共通の部品が出荷されてから、それを修正しようとすると、1000人の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D7%A5%ED%A5%B0%A5%E9%A5%DE">プログラマ</a>が、全員、自分のプログラムがその部品の新しい<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D0%A1%BC">バー</a>ジョンと動くかテストしなくてはいけない。そして、その1000人が、それぞれ、修正版を客先のコンピュータにインストールしなくてはいけない。これは<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CA%D1%C6%B0%C8%F1">変動費</a>です。</p><p>ソフトの設計、製造、テスト、配布といったサイクルの中には、この「<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CA%D1%C6%B0%C8%F1">変動費</a>になることを固定費にしてコストを圧縮する」という構造が何重にも<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C6%FE%A4%EC%BB%D2">入れ子</a>になっています。普通に見えている費用は、圧縮された固定費の費用です。</p><p>しかし、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B5%A5%DE%A1%BC%A5%BF%A5%A4%A5%E0">サマータイム</a>対応のような想定外のことを後から入れようとすると、いろいろなところで固定費として圧縮されたコストが、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CA%D1%C6%B0%C8%F1">変動費</a>としてあらわれてきます。</p><p>こういう、ソフトの製品サイクル、その中にあるマウンティングとか<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CA%D1%C6%B0%C8%F1">変動費</a>を固定費におさえる仕組みというのは、狭義のプログラミングとは別の話で、しかも、業界ごとにかなり事情が違います。</p><p>たとえば、私の今の職場では、昨日言われたことを、今日の朝のミーティングで「今日これこれをデプロイ(本番稼動)します」なんていうことが日常茶飯事です。テストは自動化されているし、自動化テストで動作確認できないところは、別のルートがあって別のルートで承認されます。</p><p>でも、20年前には、私は、ダムの制御システムを開発していて、これは、ダムのゲートを開きすぎると<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B2%BC%CE%AE">下流</a>の水位が急激に上がって危険になるという、そういうゲートをコンピュータであけしめするものなので、ありとあらゆる確認を何重にもやります。ここでは、小さな仕様変更でも、基本的に二年後の次の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D0%A1%BC">バー</a>ジョンに回していました。</p><p>ただ、どちらも、(狭義の)流通在庫の期間の範囲なら、通常運用で変更できることは同じで、それより短いサイクルで変更を要請されると、かなりアタフタして、他の作業を止めて社員総出でみたいな状況になるのも同じです。</p><p>そういうサイクルをひっくりかえすなんてことは、非常事態でなければありえない。</p><p>まあ、宇宙から<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B5%A5%DE%A1%BC%A5%BF%A5%A4%A5%E0">サマータイム</a>星人が<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:攻め">攻め</a>てきて、「来年までに<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B5%A5%DE%A1%BC%A5%BF%A5%A4%A5%E0">サマータイム</a>になってない国は全員滅ぼす」とか言ったならやりますよ。<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:みんな">みんな</a>文句も言わずにがんばってやると思う。</p><p>そうでない限り、固定費として不可視化されているコストが<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CA%D1%C6%B0%C8%F1">変動費</a>として爆発して、それを処理するためにマウンティングからやり直す未来しか見えない。</p> essa コンピュータシステムのサマータイム対応を巡る二つの楽観論 hatenablog://entry/10257846132615860373 2018-08-07T00:00:00+09:00 2018-08-30T10:46:16+09:00 いきなり来年から日本でサマータイムを導入するという話が出てきて、私には到底実現できない話としか思えなかったが、自民党の少なくとも一部の方々は本気で考えているようだ。そもそも、私にはメリットがどこにあるのかわからないがそれは置いておいて、コンピュータシステム側の対応が非常に困難であるということを、なるべく一般の方にわかるように説明してみたいと思う。5chとツィッターを眺めて見ると、同業者の人は私と同じ意見が多数であるように見えるが、一部楽観的に見ている方もいるのに驚いた。何事にもいろいろな見方があるので、賛否両論の意見があって議論していけばいいことではあるが、その楽観論を見ていると、全く違う立場… <p>いきなり来年から日本で<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B5%A5%DE%A1%BC%A5%BF%A5%A4%A5%E0">サマータイム</a>を導入するという話が出てきて、私には到底実現できない話としか思えなかったが、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BC%AB%CC%B1%C5%DE">自民党</a>の少なくとも一部の方々は本気で考えているようだ。そもそも、私にはメリットがどこにあるのかわからないがそれは置いておいて、コンピュータシステム側の対応が非常に困難であるということを、なるべく一般の方にわかるように説明してみたいと思う。</p><p>5chと<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C4%A5%A3%A5%C3%A5%BF%A1%BC">ツィッター</a>を眺めて見ると、同業者の人は私と同じ意見が多数であるように見えるが、一部楽観的に見ている方もいるのに驚いた。何事にもいろいろな見方があるので、賛否両論の意見があって議論していけばいいことではあるが、その楽観論を見ていると、全く違う立場の二種類の楽観論がある。何がなんでも自分の立場が正しいと主張する気はないが、この二種類の楽観論が絶対両立しないことは確かで、ここだけはハッキリしておかなければならないと強く言いたい。</p><p>最悪のケースは、エンジニアの意見を聞いた所、楽観論Aの人が30%、楽観論Bの人が30%、悲観論の人が40%となった場合だ。AB足して60%だからと言って強行すると、楽観論Aの考えていた方法では、楽観論Bが成立せず、楽観論Bの人の方法だと楽観論Aの人が悲鳴を上げて、結局、どちらの楽観論も実現不可能で悲観論が正しかったということになる。</p><p>だから、最終的な結論はエンジニア同士の議論になるなるのかもしれないが、回りの人も、その議論の構図はきちんと理解しておく必要があると思う。</p> <div class="section"> <h4>楽観論A: 既存の国際化機能を前提とした楽観論</h4> <p>最初のタイプの楽観論は「<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B5%A5%DE%A1%BC%A5%BF%A5%A4%A5%E0">サマータイム</a>を実施している国はいくらでもあって、そういう国では普通にコンピュータを使っているではないか!」というものだ。</p><p>これは正しい。この手の機能は、インターナショナライザイション(国際化)と言って、画面上の英語のテキストが、日本人が見た時には<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:日本語">日本語</a>になるのと同じグループの共<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C4%CC%B2%BD">通化</a>機能とされている。今では、OSでも<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D7%A5%ED%A5%B0%A5%E9%A5%DF%A5%F3%A5%B0%B8%C0%B8%EC">プログラミング言語</a>でも、ほとんどが国際化の機能を標準で持っており、その中には、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B5%A5%DE%A1%BC%A5%BF%A5%A4%A5%E0">サマータイム</a>を含む<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%BF%A5%A4%A5%E0%A5%BE%A1%BC%A5%F3">タイムゾーン</a>(時差)の処理がある。</p><p>だから、日本での<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B5%A5%DE%A1%BC%A5%BF%A5%A4%A5%E0">サマータイム</a>導入も、対応するのはOSだけで、ユーザもアプリケーションも何も変更なしで、そのまま対応できるケースもある。</p><p>特に、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B9%A5%DE%A1%BC%A5%C8%A5%D5%A5%A9%A5%F3">スマートフォン</a>用のアプリなどは、逆に、OSや開発ツールが提供している国際化の枠組みからはずれる方が難しいので、何もしなくてもそのままで<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B5%A5%DE%A1%BC%A5%BF%A5%A4%A5%E0">サマータイム</a>に対応できるものも多いかもしれない。</p><p>ただ、注意すべき点は、この国際化とは、コンピュータ内部では、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/UTC">UTC</a>で時刻の情報を持っていることを前提としていることだ。そして、データを保存したりやりとりしたりする時には、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/UTC">UTC</a>で行う。国ごとのローカルタイムに変換するのは、画面に表示する直前で、それ以外では、時刻が全部<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/UTC">UTC</a>になっているということが暗黙の前提となっている。</p><p>たとえば、私が 8/7 の 午前 10:00 に5ちゃんねるにコメントを投稿したとする。国際化対応されているプログラムでは、この投稿に、「01:00 <a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/UTC">UTC</a>」という時刻をつけて保存する。<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/UTC">UTC</a>とは時差の基準になる時刻のことで、日<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CB%DC%A4%CE%BB%FE%B4%D6">本の時間</a>より9時間前になっている。そして、表示する時に、「01:00 <a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/UTC">UTC</a>」を日本時間(<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/JST">JST</a>)に変換して、「10:00 <a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/JST">JST</a>」という投稿時刻を表示する。</p><p>もし、5ちゃんねるが国際化対応していて、イギリスの人がこの投稿を見ると、「2:00 BST」という投稿時刻が見えるはずだ。イギリスは現在<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B5%A5%DE%A1%BC%A5%BF%A5%A4%A5%E0">サマータイム</a>期間中で、その時の日本との時差は8時間になる。<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B5%A5%DE%A1%BC%A5%BF%A5%A4%A5%E0">サマータイム</a>が終わればそれは「1:00 <a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/GMT">GMT</a>」になる。</p><p>多くの国で使われるプログラムはほとんどそうなっているし、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%E1%A5%EA">アメリ</a>カは国内に複数の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%BF%A5%A4%A5%E0%A5%BE%A1%BC%A5%F3">タイムゾーン</a>があるので、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%E1%A5%EA">アメリ</a>カ人専用のプログラムでもそうなっている。</p><p>ところが、日本人だけが使うプログラムはほとんどそうなっていない。5ちゃんねるもそうだろうと思ったら、案の定そうだった。</p><p>日本のプログラムでは、普通、10:00 に投稿したら、そのまま「10:00」という情報を保存する。そして、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C0%EC%CD%D1%A5%D6%A5%E9%A5%A6%A5%B6">専用ブラウザ</a>に対して、「10:00」という情報を送信して、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C0%EC%CD%D1%A5%D6%A5%E9%A5%A6%A5%B6">専用ブラウザ</a>は、それに何の変更もしないで、「10:00」と表示する。</p><p>どちらが自然だと思いますか?</p><p>10:00 に投稿された情報を「10:00」で保存するのと、10から9を引いて「1:00」で保存して、表示する時に9を足して、「10:00」で表示するという二度手間をかけるのと、どちらが自然だと思いますか?</p><p>この「9を引いて」とか「9を足して」という処理が、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B5%A5%DE%A1%BC%A5%BF%A5%A4%A5%E0">サマータイム</a>期間中は「11を引いて」と「11を足して」になる。こういう所は、国際化の機能を使うと自動的にやってくれるのだが、日本人しか使わないものは、そもそも足したり引いたりする処理を入れる必要がなくて、自然に10:00で保存して自然に10:00で表示する。</p><p>それは、国際的に見て標準的とは言えないし、今後はそれではダメだろうと私も思うが、日本人が日本国内でプログラムを作ると、5chのようなやり方になるのが自然だ。</p><p>それに、仕事で作るプログラムでは、エンジニアが必要と思っていても客が必要と思わなければ、そういう機能を入れることは許されない。</p> </div> <div class="section"> <h4>楽観論B: システム時刻変更を前提とした楽観論</h4> <p>そして、5ちゃんねるのようにローカルタイムで処理することを当然と思っている人の中にも楽観的に見る人がいる。そういう人は「システム時刻を変更してしまえばよい」と言うのだ。</p><p>そういう人も年に二回ある切り替えの日には、いろいろややこしい問題があることは認識しているようだが、そういう時は数時間コンピュータを止めてシステム時刻を変更して起動すればよい、と考えている。</p><p>もし、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B5%A5%DE%A1%BC%A5%BF%A5%A4%A5%E0">サマータイム</a>の時にシステム時刻を進めれば、私の(<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B5%A5%DE%A1%BC%A5%BF%A5%A4%A5%E0">サマータイム</a>以前の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C6%FC%CB%DC%C9%B8%BD%E0%BB%FE">日本標準時</a>で言う)10:00 の投稿は、12:00 で記録される。そして、それを見る時はそのまま 12:00 で配信され、12:00 で表示される。</p><p>つまり、こういう人は、システム時刻=ローカルタイムという前提を持っているので、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B5%A5%DE%A1%BC%A5%BF%A5%A4%A5%E0">サマータイム</a>対応というのは、そのシステム時刻を年二回進めたり遅らせたりすることだと思っている。</p><p>私には、随分乱暴なやり方に思えるが、単体で動いているコンピュータで信頼性より運用コスト低減の方が重要なシステムならば、そうすることにも一理あるとは思う。</p><p>というか、私も以前は、こういう考え方をしていた。</p><p>私は、1980年代から2010年頃まで国内のメーカー系SIでエンジニアとして仕事をしてきた。その後、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D5%A5%EA%A1%BC%A5%E9%A5%F3%A5%B9">フリーランス</a>になって、国際化の必要な仕事をした。その仕事では、仕様書が英語で書かれていて、最新のWEB技術を使った仕事だったが、技術と英語には困らなかった。しかし、国際化機能の使い方がわからなくて、すごく苦労をした。</p><p>だから、今では「そうすることにも一理あるとは思う」とか偉そうに言っているが、ついこの間まで「システム時刻=ローカルタイム」と普通に考えていて、それが一番自然だと思っていた。</p><p>1990年頃には、証券に関連するシステムの<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C4%CC%BF%AE%C0%A9">通信制</a>御システムの開発をしていて、このプロジェクトは「一分落ちたら一億円賠償」とか言われるシステムで品質にはすごく厳しくて、WEB系には技術面でその時のプロジェクトリーダーより上の人はいない、と今でも思っているが、そういう難しいシステムでも確か電文上の時刻はローカルタイムだった。</p><p>だから、システム時刻を2時間進めたり遅らせたりと考える人がいて、ローカルタイムで通信しようと考える人がいることも間違いないと思う。</p> </div> <div class="section"> <h4>二つの楽観論が出会う時</h4> <p>たとえば、あなたが5ちゃんねるの<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C0%EC%CD%D1%A5%D6%A5%E9%A5%A6%A5%B6">専用ブラウザ</a>の作者だとして、「あなたのアプリでは<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B5%A5%DE%A1%BC%A5%BF%A5%A4%A5%E0">サマータイム</a>導入の時どういう影響がありますか?」と聞かれたら、どう考えるだろうか。</p><p><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C0%EC%CD%D1%A5%D6%A5%E9%A5%A6%A5%B6">専用ブラウザ</a>は、ローカルタイムで送られてきた時刻をローカルタイムのまま表示するだけだから、「こちらで対応することは何もない」と思うかもしれない。つまり、あなたは楽観論Bをもとに「たいしたことない、関係ない」と言う。</p><p>しかし、5ちゃんねるのサーバ側は、「<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B5%A5%DE%A1%BC%A5%BF%A5%A4%A5%E0">サマータイム</a>を導入する以上、これを機会に5ちゃんねるもちゃんと国際化しよう」などと考えて、「来年から<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/UTC">UTC</a>で時刻を送ります。<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C0%EC%CD%D1%A5%D6%A5%E9%A5%A6%A5%B6">専用ブラウザ</a>の人は、それをローカルタイムに変換して表示してね」と言うかもしれない。これは「OS標準の国際化機能を使えば、処理は簡単でしょ」という楽観論Aの人だ。</p><p>確かに追加する処理は簡単かもしれないが、「何もない」と思ってた所に予定外の作業を入れるのは大変だ。</p><p>こういう行き違いがたくさん起こると私は考える。</p><p>5ちゃんねるであれば、力関係がハッキリしているからまだいい。</p><p>もし、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C0%EC%CD%D1%A5%D6%A5%E9%A5%A6%A5%B6">専用ブラウザ</a>側の方が権力を持っていたら、さらに話がややこしくなる。</p><p>つまり、「こちらが作業するのが大変だから、サーバ側で<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B5%A5%DE%A1%BC%A5%BF%A5%A4%A5%E0">サマータイム</a>に対応しろ」と言い出す。従来の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C6%FC%CB%DC%C9%B8%BD%E0%BB%FE">日本標準時</a>で10:00に投稿されたものを、「10:00」や「12:00」にして送ってこい、ということだ。</p><p>おそらく、ローカルタイムで通信しているシステムでは、こういう問題が必ず起きる。技術的な正論は簡単で通信電文上の時刻は<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/UTC">UTC</a>であるべきだ。しかし、それによって作業量が増えてしまうケースもあって、通信のあっち側が負担するかこっち側が負担するかという話だと、これは技術者だけでは決められない。ビジネス的、あるいは政治的な力関係の問題になってしまう。</p><p>そういう技術と政治のからんだ綱引きを、納期が絶対に動かせないタイトなスケジュールの中でやることになる。</p> </div> <div class="section"> <h4>まとめ</h4> <p>私の懸念することをまとめると「通信電文上の時刻の扱いをどうするか合意が取れないケースには、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B5%A5%DE%A1%BC%A5%BF%A5%A4%A5%E0">サマータイム</a>導入への対応方法は簡単には決まらない」ということだ。</p><p>つまり、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B7%C7%BC%A8">掲示</a>板に10:00に投稿された書き込みをサーバはどう配信すべきか</p> <ul> <li>常に 1:00 <a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/UTC">UTC</a></li> <li><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B5%A5%DE%A1%BC%A5%BF%A5%A4%A5%E0">サマータイム</a>内には、3:00 、それ以外は 1:00</li> <li>常に 10:00 <a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/JST">JST</a></li> <li><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B5%A5%DE%A1%BC%A5%BF%A5%A4%A5%E0">サマータイム</a>内には 12:00 JDT、それ以外は 10:00 <a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/JST">JST</a></li> </ul><p>という選択肢があって、現状すでに 1:00 <a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/UTC">UTC</a> で統一されているケース以外では、揉めることが避けられないだろうということだ。</p><p>「3:00」というのはどういう意味かと言うと、「うちのシステムは、NTPで時刻同期をしてるから、おおもとのタイムサーバの時刻を二時間進めれば問題ない」という意見を見たからだ。</p><p>つまり、「NTPが配信している時刻はローカルタイムの事情に動かされることがない固定の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/UTC">UTC</a>である」という前提を理解せずにシステム時刻を変更しようとしているわけで、こういう人は、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/UTC">UTC</a>で通信していてもその<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/UTC">UTC</a>を動かすことを考えるかもしれないと思ったからだ。</p><p>そして、この結論によって通信のこっち側とあっち側で対応の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B9%A9%BF%F4">工数</a>が変わってくるので、これは簡単に決まらない。</p><p>それと、データベース内にローカルタイムが保存されているケースにも、似たような問題が発生して、この場合は、その時刻項目を参照する箇所を洗い出すのが大変だと思う。</p> </div> <div class="section"> <h4>そもそも</h4> <p>私は、こういう時に技術者の話が通ることは、日本ではあまりないと思っているのですが、それについては、こちらを参照してください。</p> <ul> <li><a href="http://d.hatena.ne.jp/essa/20050428/p1">&#x691C;&#x975E;&#x9055;&#x4F7F;&#x306E;&#x672B;&#x88D4;&#x304C;&#x30D6;&#x30ED;&#x30B0;&#x3092;&#x66F8;&#x304D;&#x59CB;&#x3081;&#x308B;&#x65E5;</a></li> <li><a href="http://d.hatena.ne.jp/essa/20150906/p1">&#x4ECA;&#x3053;&#x305D;&#x8AAD;&#x3082;&#x3046;!&#x300C;&#x4E2D;&#x7A7A;&#x69CB;&#x9020;&#x65E5;&#x672C;&#x306E;&#x6DF1;&#x5C64;&#x300D;</a></li> </ul> </div> essa スマホのリスクについて教えるなら、大事なのは「パブリック」という概念を理解させること hatenablog://entry/10257846132615860402 2018-06-08T00:00:00+09:00 2018-08-30T10:46:19+09:00 【問題提起】篠原嘉一氏に情報教育の講演を依頼する前に考えていただきたいこと 〜ITエンジニアから見た、情報教育のあり方について〜 - give IT a try うーん、この告発の通りなら、この講師の方は、はっきりと間違った知識を子供たちに教えていることになるので、大きな問題だと思います。そこは、すぐに訂正してほしいです。でも、これは講師の人の個人的な主観というよりは、先生方や保護者の要望を取り入れて数をこなしていくうちに、そういう方向になっていったということだと思います。個人的には、「子供たちに嘘を教えている」ということに対して、先生方の反応が鈍いということがショックでした。学校の先生という… <ul> <li><a href="http://blog.jnito.com/entry/2018/06/04/053705">&#x3010;&#x554F;&#x984C;&#x63D0;&#x8D77;&#x3011;&#x7BE0;&#x539F;&#x5609;&#x4E00;&#x6C0F;&#x306B;&#x60C5;&#x5831;&#x6559;&#x80B2;&#x306E;&#x8B1B;&#x6F14;&#x3092;&#x4F9D;&#x983C;&#x3059;&#x308B;&#x524D;&#x306B;&#x8003;&#x3048;&#x3066;&#x3044;&#x305F;&#x3060;&#x304D;&#x305F;&#x3044;&#x3053;&#x3068; &#x301C;IT&#x30A8;&#x30F3;&#x30B8;&#x30CB;&#x30A2;&#x304B;&#x3089;&#x898B;&#x305F;&#x3001;&#x60C5;&#x5831;&#x6559;&#x80B2;&#x306E;&#x3042;&#x308A;&#x65B9;&#x306B;&#x3064;&#x3044;&#x3066;&#x301C; - give IT a try</a></li> </ul><p>うーん、この告発の通りなら、この講師の方は、はっきりと間違った知識を子供たちに教えていることになるので、大きな問題だと思います。そこは、すぐに訂正してほしいです。</p><p>でも、これは講師の人の個人的な主観というよりは、先生方や保護者の要望を取り入れて数をこなしていくうちに、そういう方向になっていったということだと思います。</p><p>個人的には、「子供たちに嘘を教えている」ということに対して、先生方の反応が鈍いということがショックでした。学校の先生というのは<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BD%E9%C5%F9%B6%B5%B0%E9">初等教育</a>といえども学問を教える人ですから、「知識の正しさ」というものにはもっとこだわりがあってもいいんじゃないかと思います。</p><p>それで、「小学校の先生のミッションは何だろう?」ということを考えてしまったのですが、これはおそらく今では「子供たちを守る」ということなんですね。これに必死になりすぎて、他のことを考える余裕がない、保護者も第一にそれを求めてくる。そういうことかな<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:と思いました。">と思いました。</a></p><p>だからこの問題の本質は「先生や親御さんたちは、どうしてインターネットをそれほど怖がり、子供たちにも同じように怖がってほしいと思うのか」ではないでしょうか。今は、インターネットに偏見があって、その偏見を子供たちの押しつけている状態なので、これをなくすことが第一ですが、偏見がなくなって技術を理解したら、インターネットは怖くないものになるのか。</p><p>私はこれについて、次のように考えています。</p> <ul> <li>インターネットが怖い人は、ネットの中のコミュニティのあり方が現実社会と違うことにとまどっている</li> <li>それに対応できない理由は、ネットの流儀を知らないからではなくて、無意識的に理解、実践している現実社会の流儀を言葉にできず、意識できないから</li> <li>「インターネットを怖がらない」を目標にするのではなく、両者の(社会構造の)違いを理解することが重要</li> </ul><p>だから、必要なのは、ネットについての啓蒙ではなくて、「典型的な日本人が社会をどのようにとらえているか」ということを言葉として理解した上で、ネットと対比することだと思います。</p><p>こういう観点から、中学生や高校生に対して講演するとしたらこんな感じでどうかな?というものを書いてみました。(やっぱりちょっと難し過ぎるかもしれませんが、本当のターゲットは親御さんと先生方です)</p><br /> <br /> <br /> <p>はい、では今からみなさんに<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B9%A5%DE%A5%DB">スマホ</a>についての話をします。</p><p>(なんでもいいから、つまらない話を5分ほどする)</p><p>さて、ここから本題に入りますが、最初に、ちょっと想像してほしいのですが、みなさんがひとりひとり半透明の繭のようなもので覆われているのをイメージしてください。いいですか、では、その繭をクラス単位で覆うものすごく大きい繭を思い浮べてください。それができたら、今度はもっと大きな、この体育館を全部覆うくらいの、大きな...</p><p>(ここで、客席の生徒の一部が騒ぎ出して、先生から注意を<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:受け">受け</a>る)</p><p>はい、今の人、ちょっといいかな。名前を教えてくれる?...小宮君ですか。小宮君ね、もう一人の人は... 相田君。はい、ありがとう、小宮君と相田君ね。はい、ありがとうございます。</p><p>みなさん、私の話は<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:面白くない">面白くない</a>ですか?たぶん、そうなんですね。今日、これが終わって誰かに「今日の話はどうだった?」と聞かれたら、みなさんは何て答えるでしょうか。</p><p>たぶん、一年の他のクラスのみなさんは「二組の小宮が騒いで先生に怒られた」っていうでしょう。二年や三年のみなさんは「今日、一年でうるさい奴がいて、先生に注意された」と言うかもしれません。あるいは、今日来ていらしているおかあさん方は、</p><p>「今日、講演の時に騒いで注意された子がいるの、ほら、あの、○○町の小宮さんちの下の子」</p><p>「へえ、そうなの、小宮さんとこの?お兄ちゃんはいい子なのににねえ」</p><p>とか、噂話をされるかもしれません。</p><p>今日は、来賓の方も何人かいらっしゃってます。そういう方は「○○中学校の生徒は行儀が悪いねえ」とおっしゃるかもしれません。</p><p>もし、小宮君と相田君が部活の大会で勝ち進んで県大会に出て、そこの開会式で同じようなことをしたら、「○○市の子は」と言われるし、さらに全国大会に進んだら「○○県の子は」です。</p><p>私は、帰ってから「最近の中学生はダメだねえ。人の話を聞く態度ができてない」と言うでしょう。</p><p>ここで注目してほしいのは、同じ小宮君のことを、それぞれの人が違う呼び方で呼んでいることです。「小宮さんちの下の子」「二組の小宮」「一年の小宮」「○○中学校」「○○市の子」「○○県の子」「最近の中学生」</p><p>これが、さきほど、思い浮かべてくださいと言った繭とは、このことです。みなさんは、○○家の一員であり、○○町の住民であり、○○組の生徒であり、○○中学校の生徒である。これが全て見えない繭なんです。</p><p>そして、繭の外側に出ていくたびに、そこにいる人たちがみなさんを見る目は変わります。「○○市の子」「○○県の子」と言う人たちは、みなさん個人を見ているのではなく、その繭のようなものの方を見てると言えるかもしれません。</p><p>みなさんがここでおとなしくしていないと、それはみなさん個人の恥ではなくて、○○家の恥、二組の恥、○○中学全体の恥になります。つまり、繭の外側にいる人からは、一番外側の繭しか見えません。私は、みなさん全員を「中学生」という繭を通して見ています。だから「最近の中学生は」と言うのです。</p><p>みなさんは、今はまだ、先生に注意してもらわないと、なかなかどこに出しても恥ずかしくない○○中学の生徒としてふるまうことは難しいかもしれません。これから、大人になっていくにつれて、先生に言われなくても、その繭の中で「恥ずかしくないふるまい」ができるようになります。</p><p>たとえば、みなさんが、将来どこかの会社に入ったとすると、みなさんは「○○会社」の一員であり、その中の「○○部」の一員、「○○課」の一員のように、自分が今いる立場を意識して行動できるようになります。</p><p>「恥ずかしくないふるまい」ができるということは、逆に言えば不自由を感じているということです。繭の中にいる人は<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:みんな">みんな</a>少しだけ窮屈な思いを感じているでしょう。</p><p>みなさんは、これからも見えない繭に何重にも取り巻かれて生きていくでしょう。時にある繭から出て別の繭に入る、それは人生の節目で何度かあると思います。しかし、自分の回りを何重もの繭が取り囲んでいることには違いがありません。</p><p>いったいこの話と<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B9%A5%DE%A5%DB">スマホ</a>のどこが関係あるんだ?と思われているかもしれませんね。でも、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B9%A5%DE%A5%DB">スマホ</a>を扱う時に、一番注意すべきことは実はこの繭のことなんです。</p><p>この世界には、繭の外側というものは存在しないのですが、ただ一つだけ、繭の外側に出る方法があります。ただ一つだけある繭の外側、それは、みなさんが持っている<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B9%A5%DE%A5%DB">スマホ</a>の中です。</p><p>今日は、ひとつ大事なことを教えます。それは「パブリック」という言葉です。これだけは覚えて帰ってください。</p><p>英語の授業では「パブリック」という言葉は「公共の」と教わるでしょう。。でも、インターネットを使っている時には、「パブリック」の意味は「全員に公開」と覚えておいてください。<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B9%A5%DE%A5%DB">スマホ</a>を使っていると、「全員に公開」という言葉を見ることが多いと思います。その時は、「ああ、これは英語のパブリックの意味だな」と思っていいと思います。</p><p>そして、この「全員」という言葉は、すべての繭を取り去った状態での「全員」というふうに理解しておいてください。ふつう、「全員」とか「<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:みんな">みんな</a>」は、クラスの全員とか友達全員という意味、つまり、ある繭の内側にいる「<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:みんな">みんな</a>」を意味していますが、これは「パブリック」でいう「全員に公開」とは違います。日本人全員、いや、外国の人も含めて全ての人間を意味します。</p><p>数年前に、飲食店でアルバイトをしている学生さんが、厨房で<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:悪ふざけ">悪ふざけ</a>をしている写真を<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C4%A5%A3%A5%C3%A5%BF%A1%BC">ツィッター</a>に公開して、大きな問題となりました。その人は「全員に公開」を「友達<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:みんな">みんな</a>に公開」という意味で<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:受け">受け</a>取っていたのだと思います。</p><p>パブリックでない場所で起きた問題は、繭の中で処理されます。</p><p>もし、あれが<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C4%A5%A3%A5%C3%A5%BF%A1%BC">ツィッター</a>でなければ、それは彼の仲間うちで話題となり、その中には「ちょっとあれはやりすぎじゃない」と注意する人がいたかもしれません。もし、彼がその忠告を聞きいれずに、もっとやり続ければ、地域の中で噂話となり、先生とか親御さんの耳に入り、そこで彼はひどく怒られて両親に連れられて店長さんにあやまりに行くはめになるでしょう。もし、そこでさらに彼が言うことを聞かなければ、「すごいワルがいる」と彼の名は地元よく知られることになるかもしれません。</p><p>つまり、繭の中では、噂は少しづつ広がり、その噂が繭を超えるたびに彼には反省するチャンスがあるのです。そして、彼の悪い評判というペナルティもそれにつれて少しづつ大きくなります。</p><p>現実世界では、繭をひとつづつ出るたびに少しづつ危険性が高くなります。<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/RPG">RPG</a>で、物語を進めてレベルが上がるたびに、だんだんモンスターが強くなるのと同じです。</p><p>しかし、インターネットの中の「パブリック」は、繭を全部取り去った状態での「全員に公開」を意味していて、一晩で日本中から叩かれる騒ぎになるのです。</p><p>インターネットは、ある意味ではとんでもない<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%AF%A5%BD%A5%B2%A1%BC">クソゲー</a>です。最初の町を一歩出たとたんに、ラスボス級のとんでもないモンスターがうろついています。途中でやりなおすチャンスがほとんどありません。</p><p>でも、パブリックであることは悪いことかと言うと、そうとも言えません。</p><p>みなさんは、(近隣の大都市をあげて)○○市に子供だけで遊びに行ったことはありますか?もし、行ったら、きっと、ワクワクドキドキすると思います。ふだんいる繭の外に出る時は、誰でもワクワクドキドキするものです。</p><p>上級生と友達になったり、夜遊び歩いたりすることもそうでしょう。本やゲームで物語の中に入りこんで夢中になる時もそうでしょう。みなさんは、いつも繭の中にいて、窮屈な思いをしているので、こういう繭を脱ぎ捨てる行動には、いつもワクワクドキドキするのです。</p><p>ワクワクするのは、そこに普段とは違う世界が見えるから、ドキドキするのは、そこには未知の危険があるかもしれないと思うからです。繭をたくさん突き抜けると、ワクワクドキドキ感が強くなります。○○市に行くより東京へ行く方がもっとドキドキするし、外国へ行ったらもっとワクワクします。門限破りも8時より10時の方がワクワクするし、朝まで遊ぶ方がドキドキします。</p><p>繭の中では、ワクワクもドキドキも少しづつ強くなっていくので、誰でもちょうどいいドキドキ感がわかります。みなさんはまだ今は、ちょうどいいドキドキ感がわからなくて行きすぎてしまい、先生や親御さんに怒られます。でも、これは、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/RPG">RPG</a>のレベル上げと同じで、怒られながら覚えていけばいいことです。</p><p><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B9%A5%DE%A5%DB">スマホ</a>で遊ぶことは、ドキドキよりワクワクの方が強いかもしれません。実は、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B9%A5%DE%A5%DB">スマホ</a>で危いことをするのはとても危険なことなのですが、夜遊びや旅行のようなドキドキ感はないと思います。でも、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B9%A5%DE%A5%DB">スマホ</a>の中に入る時には、全ての繭をいっきに脱ぎすてることなので、本当は、ライオンのいるジャングルに入るくらいドキドキすること、つまり危険と<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BB%E6%B0%EC%BD%C5">紙一重</a>のことなんです。</p><p>これは、悪いことをしなくてもそうです。たとえば、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/YouTube">YouTube</a> に動画を投稿したとします。<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/YouTube">YouTube</a> の動画は「パブリック」なもので、誰でも見ることができて誰でもコメントを書けます。普通、知らない人がコメントを書くことはないですが、もしその動画が面白かったら、たくさんの知らない人が見にきて、その中には思わぬ悪口を書く人もいます。</p><p>学校の中で悪口を言われる時には、誰がどういうことを言うかだいたい予想がつくし、そうでなくても悪口を言われた時に、誰がなぜそういうことを言うか、ある程度わかります。でも、インターネットでは、思いもよらぬことで怒り出す人や、ひどい言い方で悪口を言う人がいます。現実世界にもそういう人がいますが、繭の中にいる限り、誰かがそういう人と出会わないように守ってくれているのです。「パブリック」ということは、一切の繭なしに、そういう<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:変な">変な</a>人と直接会うという意味なのです。</p><p>だから、本当は、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B9%A5%DE%A5%DB">スマホ</a>に何か書く時は、ライオンの横を通り抜けるくらいドキドキして、心臓が口から出そうな気持ちになるくらいでちょうどいいのですが、ほとんどの人は、ただの小さな機械に対して、そんなふうに考えることはなかなかできません。</p><p>「ワクワク」と「ドキドキ」をつりあわせるのは、難しいことです。</p><p>これについては、将棋の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C6%A3%B0%E6%C1%EF%C2%C0">藤井聡太</a>さんの活躍が参考になるでしょう。</p><p>藤井さんが若いうちから活躍できるのは、<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:もちろん">もちろん</a>本人に特別な才能があるからですが、それだけではなく将棋というゲームのルールがハッキリしているからです。</p><p>将棋には、二歩とか打歩詰めといったルールがありますが、「この手が二歩であるかどうか」ということについて、<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:みんな">みんな</a>の顔色を見たり、<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:みんな">みんな</a>で話しあったり、先生に意見を聞いたりする必要はありません。将棋をする人なら、誰でも、その手が二歩であるかそうでないかわかります。そして、そのルールの中で勝敗がはっきりと決まります。</p><p><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/YouTube">YouTube</a> であれば、動画が面白いかどうかだけが問題で、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C4%A5%A3%A5%C3%A5%BF%A1%BC">ツィッター</a>であれば、ツィートが面白いかどうかで決まります。小宮君が<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/YouTube">YouTube</a> に動画を投稿したとして、「おまえ、どこ中の小宮だ?」などと言われることはありません。その動画が面白いかどうかだけが問題で、それは「いいね」や「購読者」の数として、誰にでもわかるランキングになります。</p><p>「パブリック」であるということは、誰でも参加できるということなので、その場のルールが誰にでもわかるようになっていないと困ります。そして、インターネットはコンピュータで動くものなので、ルールがコンピュータに組込まれています。半分はみなさんの<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B9%A5%DE%A5%DB">スマホ</a>で動くアプリの中に組み込まれていて、半分はサーバという、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B9%A5%DE%A5%DB">スマホ</a>が接続するコンピュータに組み込まれています。</p><p>藤井さんのように、自分がしたいことがハッキリしている人にとっては、「パブリック」な場のこういう性質は、よいことだと思います。「パブリック」な場は、ライオンの横を通るくらいドキドキしてちょうどいい、と言いましたが、将棋盤の上では、藤井さんがライオンです。どういう猛獣が来ても、将棋盤の上なら彼は誰とでも対等に戦えます。だから、守られる必要はありません。</p><p>だから、繭の世界にも「パブリック」の世界にも両方いい面と悪い面があります。</p><p>藤井さんがお手本になると私が思うのは、この二つの世界の区別がきちんとできていることです。</p><p>将棋は、誰にでもわかるハッキリとしたルールで動いていると言いましたが、プロ<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%FD%BB%CE">棋士</a>の仕事は将棋を指すだけではありません。プロ<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%FD%BB%CE">棋士</a>もひとつの職業であり、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C6%FC%CB%DC%BE%AD%B4%FD%CF%A2%CC%C1">日本将棋連盟</a>という団体が主催しているものなので、多くの人がかかわっている繭の世界でもあります。</p><p>プロ<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%FD%BB%CE">棋士</a>になるような人は、小学生からその道を進みはじめるので、こういういわば「大人の世界」に入る世話をする人として、師匠という、将棋の世界での親がわりになる人がいます。藤井さんは、将棋盤の上では猛獣のような先輩<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%FD%BB%CE">棋士</a>を遠慮なく負かし続けていますが、盤を離れた時には、この師匠の言うことをきちんと守る、とても良い子です。</p><p>いくら天才将棋少年でも、ひとりのプロ<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%FD%BB%CE">棋士</a>として、先輩<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%FD%BB%CE">棋士</a>やスポンサーやファンやマスコミにどういう話をしたらいいのか、そういうことについては、ゆっくりと覚えることしかできません。経験値を積んでひとつづつレベルを上げていくしかないのです。</p><p>藤井さんは師匠の言うことをきちんと守り、師匠は藤井さんを繭で守った上で、少しづつ必要な経験ができるようにしています。藤井さんは将棋では師匠よりずっと強いのですが、将棋盤を離れたら師匠に頼らないとやっていけない、自分が将棋に専念するには師匠の言うとおりにした方がいい、そういうことがよくわかっているのだと思います。</p><p>みなさんの中には、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B9%A5%DE%A5%DB">スマホ</a>について、おとうさんやおかあさんよりよく知っている人もいると思います。また、その中には、自分がしたいことがあって、藤井さんのように大人にまじって腕試しをしたい人もいるかもしれません。そういう人にとっては、ひとつずつレベル上げをしていくようなやり方はまどろっこしく思えるでしょう。</p><p>でも「パブリック」な場所の怖さというのは、繭の世界と比べることでしかわからない部分があります。だから、仮に自分が活躍できる場所、ワクワクいっぱいで楽しめる場所を見つけたとしても、その場所が本当に大事だと思うなら、藤井さんのように、大人の言うことをちゃんと聞いた方がいいでしょう。</p><p>それと、私が今日「みなさんはたくさんの繭に守られている」と言った時、「回りの友達はそうかもしれないけど、自分は守られてない」と思った人がいるかもしれません。そういう人は、「パブリック」な場所こそがあなたを守る場所になるかもしれません。でも、それは両方が違う性質の場所であることをよくわかって、よく見比べてから決めましょう。</p><p>最後にもうひとつ大事なお話があります。</p><p>実は、さきほど小宮君と相田君が騒いで怒られたのは、<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:いわゆる">いわゆる</a>ヤラセです。私が、先生を通して、二人にお願いしたことです。今日のお話をするために、あそこで騒いで注意される人がいてくれた方が話しやすかったからです。</p><p>インターネットには、こういう嘘をつく人がいっぱいいます。「ライオンがうじゃうじゃいるジャングル」と言ったのは、平気で嘘をついて人をダマす人がたくさんいるという意味でもあります。嘘のつきかたにもいろいろありますから、これにも注意してください。</p> essa 労働問題を伝染病感染防止のように考えてみる hatenablog://entry/10257846132615860478 2018-06-03T00:00:00+09:00 2018-08-30T10:46:23+09:00 過労死をはじめとする労働問題は、伝染病をどう防ぐかという問題と似たようなところがあると思う。未知の伝染病が流行ったとしたら、三種類の専門家が必要になる ウィルスの性質をつきとめる生物学者 発症してしまった患者を治療する医者 感染経路をつきとめ、空港などで感染防止策を考える人 この三者は情報交換などで協力すべきことも多々あるが、基本的に違うパラダイムで動いているので、自分の領域外に口を出すのは混乱の元である。私は労働問題とは、人々が労働というものをどう見るかというミームに、「選択肢はない」という悪いウィルスが感染した伝染病のようなものだと思っている。だから、次のような3種類の専門家が必要だと考え… <p>過労死をはじめとする労働問題は、伝染病をどう防ぐかという問題と似たようなところがあると思う。</p><p>未知の伝染病が流行ったとしたら、三種類の専門家が必要になる</p> <ul> <li>ウィルスの性質をつきとめる生物学者</li> <li>発症してしまった患者を治療する医者</li> <li>感染経路をつきとめ、空港などで感染防止策を考える人</li> </ul><p>この<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BB%B0%BC%D4">三者</a>は情報交換などで協力すべきことも多々あるが、基本的に違う<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D1%A5%E9%A5%C0%A5%A4%A5%E0">パラダイム</a>で動いているので、自分の領域外に口を出すのは混乱の元である。</p><p>私は労働問題とは、人々が労働というものをどう見るかという<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DF%A1%BC%A5%E0">ミーム</a>に、「選択肢はない」という悪いウィルスが感染した伝染病のようなものだと思っている。だから、次のような3種類の専門家が必要だと考えている。</p> <ul> <li>A: 人々が労働をどのようにとらえているか研究し、どのようなウィルスが問題を発生させているかつきとめる人</li> <li>B: すでに感染し発症してしまった問題に取り組む人、つまり今起きている<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CF%AB%C6%AF%C1%E8%B5%C4">労働争議</a>に現場で対応する人</li> <li>C: ウィルスの感染経路をつきとめ、水際での感染防止をする人</li> </ul><p>この観点から、今話題になっている<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C5%C4%C3%BC%BF%AE%C2%C0%CF%BA">田端信太郎</a>氏の炎上発言について論じてみたい。</p> <ul> <li><a href="https://togetter.com/li/1233473">&#x7530;&#x7AEF;&#x4FE1;&#x592A;&#x90CE;&#x300C;&#x904E;&#x52B4;&#x6B7B;&#x306F;&#x81EA;&#x5DF1;&#x8CAC;&#x4EFB;&#x300D; - Togetter</a></li> </ul><p>これは、A:あるいはC:の立場の人がB:の問題に口を出している状況だと私は思う。</p><p>田端氏が言っているのは「選択肢が無い」というウィルスに感染すると大変だよということだ。この点について、現場の医者は最新のウィルス研究の知識がないと言っている。そう私には見える。</p><p>私は、A:やC:の立場での田端さんの発言には同意する。しかしそれが正しいからと言って、集中治療室に乱入して「おまえらのような古い知識で固まった連中には、この<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:病気">病気</a>を治療する資格がない」みたいに言うのは、間違っていると思う。</p><p>過労死のような深刻な<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CF%AB%C6%AF%C1%E8%B5%C4">労働争議</a>を扱うのは、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BD%C5%C6%C6">重篤</a>化した<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%B6%C0%F7%BE%C9">感染症</a>の患者を治療するのと同じく、別の専門分野だ。利害が激しく対立していて、法律違反もからむ問題には別の専門的観点が必要だ。ウィルスの正体がわからなくても重症患者にできること、すべきことはたくさんあって、労働問題に関わる弁護士の人たちは、その分野で専門知識を持ち、多くの難しいケースを経験されているのだから、その専門性は尊重すべきだと思う。</p><p>特に、個別のケースに立ちいった話をするのであれば、当事者やご遺族の心情に対する共感や<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:配慮">配慮</a>は必須である。これは、病室に入る人が消毒をするのと同じような基本中の基本だ。また、臨床の現場にはそれぞれ独自の事情もあるのだから、一括で一律に論じることはできない。</p><p>田端さんの最初のツィートは、もともとは、A: と C: の問題意識から出ているように見えるが、途中からB: の問題に立ちいっている。そういう文脈で「過労死は自己責任」というのは間違っていると思う。</p><p>個別の悲劇的なケースを念頭に置いて、法的な責任を問うのであれば、直接的な因果関係のみが問題となり、それは労働者を正常な判断ができない所に置いこんだ経営側に100%責任があると私は考える。</p><p>ただし、A:問題の根本的原因をつきとめ、C:再発防止の対策を考える時には、共感や感情はむしろ邪魔で、事実を冷静に見なければいけないし、口に苦い言葉も言うべきことは言わなければならない。</p><p>こちらの立場から見た時には、労働問題の専門家は経済の実態についての知識が無いまま、他人の専門分野に立ちいることが多いように感じる。というか、今でも<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DE%A5%EB%A5%AF%A5%B9">マルクス</a>の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D1%A5%E9%A5%C0%A5%A4%A5%E0">パラダイム</a>から脱しきれてない人が多いように思う。</p><p><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DE%A5%EB%A5%AF%A5%B9">マルクス</a>の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D1%A5%E9%A5%C0%A5%A4%A5%E0">パラダイム</a>とは</p> <ul> <li>生産手段は資本家が所有しコン<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C8%A5%ED%A1%BC%A5%EB">トロール</a>している</li> <li>従って、資本家と労働者は対等ではなく社会制度は労働者を後押しすべきである</li> <li>資本家は資本の性質に支配されており、本人の意思と関わりなく邪悪な労働者の敵となる。だから労働者はこれを敵とみなし団結して戦うべきである</li> </ul><p>これは、生産手段、つまり、経済的な価値の源泉が工場や倉庫や店舗などの有形物である時には正しい。しかし、今の価値の源泉は、人の頭の中にあるアイディア、知識などである。</p> <ul> <li>生産手段は(人の頭の中にあるので)労働者が所有しコン<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C8%A5%ED%A1%BC%A5%EB">トロール</a>している</li> <li>社会制度は、価値創造の源泉である生産手段の多様化を後押しすべきである</li> <li>労働者は労働の多様性を理解し、それを互いに<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:配慮">配慮</a>すべきである</li> </ul><p>という方向に経済や社会の主流が急速に変化している。</p><p>田端氏は「ブランド人」なる新著を炎上ついでに宣伝しているようだが、ブランドも主要な生産手段の一つで、これも資本家から労働者に移動しつつある。</p><p>制度設計として、法律や政治の問題を論じるなら、田端氏のような、こういう分野で実績がある専門家に意見を聞くべきだと思う。</p><p><a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:もちろん">もちろん</a>、経済の全てがこう変わったわけではなく、古い<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D1%A5%E9%A5%C0%A5%A4%A5%E0">パラダイム</a>が支配する職場で働いている人もたくさんいるので、全部こちらに合わせればいいとは言えないが、成長力があって今後雇用を支える分野はこうなっている。だから、社会制度はまず新しい経済に合わせて基本的な制度を設計し、それに合わない部分を例外として調整すべきである。製造業が基幹産業であった時代には、制度は製造業に合わせて設計され、他の産業は多少無理をしてそれに合わせて運用していた。それと同じことだ。</p><p>しかし、その障害となるのが、労働に対する道徳観念であって「選択肢はない」という信念である。あるいは「あいつらには選択肢があるが自分にはない」</p><p>この信念は、信じていればその通りになるので脱することは難しい。つまり、「選択肢はない」と信じていれば、自分に選択肢を増やすための工夫や努力、情報収集ということに頭が行かないので、どうしても知らず知らずのうちに不利な立場に追いやられてしまい、実際に選択肢がない状況が実現してしまい、だからやっぱり「選択肢はない」のが正しいと思えてしまう。そういう現実を目にすることになる。</p><p>できれば会社はやめたくないし、やめたりバッくれて<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:みんな">みんな</a>に迷惑がかかるとしたら自分が悪い、と考える人が多く、その意識はなかなか変わらない。</p><p>そして、労働問題を政治的な文脈で扱う人にとっては、「労働者は一律に一致団結して戦うべきである」という考え方は、政治的なパワーに直結しているので捨てるのが難しい。労働の現場が多様化していて、田端氏が体現しているように、資本家(経営者)と労働者の関係もさまざまであるという現実を<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:受け">受け</a>いれることは、政治的に見るとダメージが大きいので、意識的か無意識的かはわからないが、「資本家は今も昔も強力で邪悪な敵であって、気を許してはいけない」という<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DD%A5%B8%A5%B7%A5%E7%A5%F3%A5%C8%A1%BC%A5%AF">ポジショントーク</a>を繰り返している。</p><p><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DE%A5%EB%A5%AF%A5%B9">マルクス</a>は、経営者が人格的に悪人と言ったのではなく、資本というものにそういう性質があって、それが資本家や経営者を動かすと言ったのであって、資本が人間にさせようとしていることが変わったら、資本家はそっちに支配されると考えるのが、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DE%A5%EB%A5%AF%A5%B9">マルクス</a>の正しい理解だと私は思う。</p><p><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DE%A5%EB%A5%AF%A5%B9">マルクス</a>の真意から離れた<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DD%A5%B8%A5%B7%A5%E7%A5%F3%A5%C8%A1%BC%A5%AF">ポジショントーク</a>が「選択肢がない」という信念と結びついていることが、労働問題解決の一番のネックとなっている。これはウィルスのようなもので、感染しているけど問題を発症してない人が動き回って被害を広める。</p><p>それで、C:の感染防止策という観点で見た場合、まず「選択肢はない」というウィルスに感染していない人に対して感染を防止するというが一番重要であり、この点では田端氏のやっていることは意義のある有用な社会貢献だと思うし、若い人には多いに参考にしてほしいと思う。</p><p>これについては、いじめ問題を研究している<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C6%E2%C6%A3%C4%AB%CD%BA">内藤朝雄</a>氏も、「学校の選択肢がないことがいじめの根本的原因で、バイチャー制度などで選択肢を増やすべきだ」という趣旨のことを言っていたので、選択肢を増やすことが労働問題についても一番重要なポイントだと思う。</p><p>「選択肢がある」という言葉も<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BC%AB%B8%CA%BC%C2%B8%BD">自己実現</a>性があって、そう信じている人は常に選択肢を意識して、自分の選択肢を増やすようキャリアデザインをするので、やっぱり「選択肢がある」が正しいと思うようになる。そういう現実を多く目にするようになる。こちらも感染性があるウィルスかもしれないが、こっちに感染すれば、もう一方には感染しないので、ワクチンのように感染防止策としては効果がある。</p><p>選択肢があるかないかは、実証的に論じることが難しい問題だと思うが、処方箋としては「選択肢はある」とアピールしてそういう状況にある人が身をさらすことはとても有効だと私は思う。</p> essa アメフト問題の中に無形のコモンズを巡る葛藤を見る hatenablog://entry/10257846132615860512 2018-06-01T00:00:00+09:00 2018-08-30T10:46:26+09:00 日大の危険タックル問題は、ネット中立性の問題と似た構図の、コモンズを巡る立場の違いからくる対立が深層にあるような気がする。内田監督と宮川選手の意識の乖離と呼ばれているものは、ルールというものを無形のコモンズととらえるか、当事者間のネゴシエーションととらえるかの違いだと思う。あるいは、コモンズと自分の利害をゼロサムゲームと見るか、自分が依拠しているコモンズを維持、発展させていくことにこそ自分の利益の基盤があると考えるかの違い。そもそも、アメリカンフットボールのようなコンタクトスポーツで思いきりぶつかれるのは、相手に対して「ここまではやるかもしれないがこれ以上はやらないだろう」という信頼があるから… <p>日大の危険タックル問題は、ネット中立性の問題と似た構図の、コモンズを巡る立場の違いからくる対立が深層にある<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:ような気がする">ような気がする</a>。</p><p>内田監督と宮川選手の意識の乖離と呼ばれているものは、ルールというものを無形のコモンズととらえるか、当事者間の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%CD%A5%B4%A5%B7%A5%A8%A1%BC%A5%B7%A5%E7%A5%F3">ネゴシエーション</a>ととらえるかの違いだと思う。あるいは、コモンズと自分の利害を<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%BC%A5%ED%A5%B5%A5%E0">ゼロサム</a>ゲームと見るか、自分が依拠しているコモンズを維持、発展させていくことにこそ自分の利益の基盤があると考えるかの違い。</p><p>そもそも、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%E1%A5%EA%A5%AB%A5%F3%A5%D5%A5%C3%A5%C8%A5%DC%A1%BC%A5%EB">アメリカンフットボール</a>のようなコンタクトスポーツで思いきりぶつかれるのは、相手に対して「ここまではやるかもしれないがこれ以上はやらないだろう」という信頼があるからだ。それは単なるルールの条文ではなくて、ダイナミックに変化する試合の中のさまざまなシチュエーションを通して、「こういう場面ではこれくらいはOKだけどこれはありえない」という暗黙の合意があるということだ。</p><p>その合意は、過去の多くのプレイヤー、審判、大会の運営者などの関係者が長い時間をかけて、紆余曲折を通って築きあげたものだ。キレイごとではすまない部分も含めて、ゆるやかな合意があるから、このゲームに多くの人が魅力を感じて引き寄せられるのだろう。</p><p>空気のようにあって<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:あたりまえ">あたりまえ</a>でふだんは意識しないけど、なくなってみると、「これがないと我々<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:みんな">みんな</a>生きていけないね」というものをコモンズという。もともとは水源や牧草地などの有形の<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:共有">共有</a>資産を指す言葉だけど、今は、むしろ無形のインフラを指すことが多い。</p><p><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%E1%A5%EA%A5%AB%A5%F3%A5%D5%A5%C3%A5%C8%A5%DC%A1%BC%A5%EB">アメリカンフットボール</a>で激しいタックルがどこまで許されるのか、という合意は、まさにコモンズだと思う。これが厳しすぎればゲームの面白さが半減するし、ゆるすぎれば選手が危険にさらされる。これの湯加減について<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:みんな">みんな</a>が合意してはじめて、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D5%A5%C3%A5%C8%A5%DC%A1%BC%A5%EB">フットボール</a>が競技として成立する。そして、おそらく、それはいったんできたら固定してそのまま使えるものではなくて、競技の技術や戦術の発展に従って、細かく微調整され続けなくてはいけない。マスコミやファンもそれが<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:共有">共有</a>できるように、努力しなくてはならない。</p><p>「コモンズのおかげで<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:みんな">みんな</a>生きているのだから、当然、誰もがコモンズの維持に貢献しなくてはいけない」という意識を<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:あたりまえ">あたりまえ</a>に持てる人と、全くそれが見えない人がいる。</p><p>宮川選手は、前者のタイプで、「自分は<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%E1%A5%EA%A5%AB%A5%F3%A5%D5%A5%C3%A5%C8%A5%DC%A1%BC%A5%EB">アメリカンフットボール</a>のコモンズを傷つけた」と考えている。だから、「資格がない」と自分を責めている。</p><p>内田監督は、後者のコモンズが見えない人で、ルールというものは、当事者間の合意でしかないから、たとえ問題となっても、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%D8%C0%BE%B3%D8%B1%A1">関西学院</a>と日大との間で話をつければ良いという考え方だったのだろう。</p><p>そして、関東学生<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%E1%A5%EA%A5%AB%A5%F3%A5%D5%A5%C3%A5%C8%A5%DC%A1%BC%A5%EB">アメリカンフットボール</a>連盟が素早く厳しい処分を決めたのも、この問題をコモンズの危機ととらえているからだろう。ここでコモンズを守らないと、今後、選手も監督も、ゲームの中で自分たちは相手と何を競うのかについて、疑心暗鬼になっていく。それは、観客などの周辺にいる第<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BB%B0%BC%D4">三者</a>にも伝わり、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%E1%A5%EA%A5%AB%A5%F3%A5%D5%A5%C3%A5%C8%A5%DC%A1%BC%A5%EB">アメリカンフットボール</a>という競技そのものの魅力が失なわれてしまうのではないか、そういう危機感があったように感じる。</p><p>コモンズが見えない人は、コモンズを意識する人のことを「幼稚で大人になってない」と見ることが多い<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:ような気がする">ような気がする</a>。そういう意味で、内田監督が宮川選手に厳しいプレッシャーを与えて追いこんだことが「教育的な目的のため」というのは、私は嘘ではないと思う。内田監督にとっては、ルールというものを自分と同じように見る人間になることが成長の証しなのだ。</p><p>「<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%CD%A5%B4%A5%B7%A5%A8%A1%BC%A5%B7%A5%E7%A5%F3">ネゴシエーション</a>によって自分に有利な方向にルールを動かす」ということは、立派な戦術であるだけでなく、そういう視点を持てることが「大人の条件」と考えていたのではないだろうか。大人というのは自分の属するコミュニティの利害を第一に考えるべきで、その利害の一つとして、コモンズを操作して自分の有利な方向に持っていく技術を、宮川選手に身につけさせようとした。だから、逆に言えば、それを極端にあからさまに行なうことは期待していなかった。</p><p>しかし、宮川選手は、コモンズの利害=全<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D5%A5%C3%A5%C8%A5%DC%A1%BC%A5%EB">フットボール</a>関係者の利害という見方から出ようとしなかったので、内田監督は、彼のこの意識を変えようとして、「追い込み」をした。これが宮川選手を、全く出口の見えない混乱に追いこみ、過激な反則タックルとなってしまった<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:ような気がする">ような気がする</a>。彼にとっては、コモンズと自分のチームの<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%BC%A5%ED%A5%B5%A5%E0">ゼロサム</a>ゲームという観点が想像を超えていたので、両者の利害をきめこまかく調整をする、つまり、もう少しわかりにくい反則をしてコモンズの被害を最小限にしつつ自分の利益を最大化するという発想は持てなかったからではないだろうか。</p><p>問題の試合後、内田監督は「宮川はひと皮むけた」と上機嫌だったが、宮川選手が「コモンズの利害=全<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D5%A5%C3%A5%C8%A5%DC%A1%BC%A5%EB">フットボール</a>関係者の利害」という呪縛から脱することができたと思っていたのだろう。</p><p>内田監督は、釈明の会見で、4年生と3年生の意識の違いを強調していた。これを場違いな<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:意味不明">意味不明</a>の脱線と感じた人が多かったようだが、私はこれこそが問題の核心であるように感じる。コモンズが平等に<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:みんな">みんな</a>のものであるという「幻想」に執着し、コモンズの隙間をかいくぐり個別の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%CD%A5%B4%A5%B7%A5%A8%A1%BC%A5%B7%A5%E7%A5%F3">ネゴシエーション</a>に引きずり落とすことができる「大人」になろうとしない世代が生まれつつあるのを感じて、その代表として宮川選手を「脱皮」させようとした。</p><p>これは「<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CF%B7%B3%B2">老害</a>」と呼ばれる問題に多く見られる象徴的な構図だと私には思える。</p><p>日本が急速に没落しているのは、日本が<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%CD%A5%B4%A5%B7%A5%A8%A1%BC%A5%B7%A5%E7%A5%F3">ネゴシエーション</a>の技術を洗練させることで社会のさまざまなシステムを回してきたからだろう。相手や文脈によって言葉を微妙に変えることに<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%CD%A5%B4%A5%B7%A5%A8%A1%BC%A5%B7%A5%E7%A5%F3">ネゴシエーション</a>の本質がある。それができる人が「大人」と呼ばれていた。</p><p>しかし、今は全ての言葉は<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C0%F8%BA%DF%C5%AA">潜在的</a>にパブリックであって、いつ録音されどこで公開されるかわからない。全ての個人と組織は常にコモンズに対して一貫した言葉を持てるようにしないといけない。それができて、コモンズの維持発展に貢献できる人間こそが、「大人」と呼ばれるべきだろう。</p><p>技術を理解することではなく、技術によって強制的に実体化しつつあるパブリックなものやコモンズを意識した言動が求められているのだ。</p><p>ネット中立性の問題も同じだ。インターネットが今のようなものであると多くの人が合意できている状態はコモンズである。この信頼があるから、多くの人が自発的にこれに献身してこれが発展しているのだ。</p><p>ネット中立性を無くすことは、この信頼を損なうことによって、特定の誰かが利益を得るということだ。ネットは見る人によって違うものが見えたり見えなかったりする世界になる。単なる通信速度の調整だと言うが、動画中心のユーザにとっては、遅いとはつながってないに等しい。これが進めば、インターネットが「インター」でなくなり、不公正で非効率なバラバラに分断された個別のプライベートな「ネット」になってしまう。</p><p>コモンズを損なうことで一時的な利益を得ても、大局的には自分も損しているという現実が見えない人の方が幼稚だと私は思う。</p> essa 仮想通貨リテラシーで重要なのはブロックチェーンより公開鍵暗号 hatenablog://entry/10257846132615860541 2018-02-22T00:00:00+09:00 2018-08-30T10:46:27+09:00 ビットコインにおける革新はPOWだ。しかし、ビットコインの中では公開鍵暗号という技術も使われていて、ユーザ側から見て重要で理解すべきなのはむしろこちらの方だと思う。これはちょうど、自動車において、一般ユーザにとっては駆動系より電装系についての知識や常識の方が重要であることと似ている。「エンジンがかからない」と言われたら、まずセルモーターが回っているのかそうでないのかを確認する。たいていの場合、エンジンの異常ではなくてセルモーターが回らなくてエンジンがかからないので、次にバッテリーが上がってないか確認するために、ライトやラジオをつけてみる。バッテリー切れなら、友達を呼んでブースターケーブルで電気… <p><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D3%A5%C3%A5%C8%A5%B3%A5%A4%A5%F3">ビットコイン</a>における革新はPOWだ。しかし、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D3%A5%C3%A5%C8%A5%B3%A5%A4%A5%F3">ビットコイン</a>の中では<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B8%F8%B3%AB%B8%B0%B0%C5%B9%E6">公開鍵暗号</a>という技術も使われていて、ユーザ側から見て重要で理解すべきなのはむしろこちらの方だと思う。</p><p>これはちょうど、自動車において、一般ユーザにとっては駆動系より電装系についての知識や<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:常識">常識</a>の方が重要であることと似ている。</p><p>「エンジンがかからない」と言われたら、まず<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%BB%A5%EB%A5%E2%A1%BC%A5%BF%A1%BC">セルモーター</a>が回っているのかそうでないのかを確認する。たいていの場合、エンジンの異常ではなくて<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%BB%A5%EB%A5%E2%A1%BC%A5%BF%A1%BC">セルモーター</a>が回らなくてエンジンがかからないので、次にバッテリーが上がってないか確認するために、ライトやラジオをつけてみる。バッテリー切れなら、友達を呼んで<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D6%A1%BC%A5%B9%A5%BF%A1%BC%A5%B1%A1%BC%A5%D6%A5%EB">ブースターケーブル</a>で電気を借りる。</p><p>つまり、通常よくあるトラブルに対処するのに必要なのは、電気系の知識だ。</p><p>バッテリーの問題ではなくて、本格的にエンジンがおかしいとなれば、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/JAF">JAF</a>か修理工場に電話する。つまり素人にできることはほとんどなくて、専門家に来てもらわないとどうにもならない。自家用車を運転するなら、その切り分けはできた方がいいと思う。</p><p>しかし、たとえばメーカーの人は、他社の新車を見る時に、最初にどこを気にするかと言えば、やはりエンジンだろう。</p><p>これと似たような視点のズレが、仮想通貨にもあって、専門家が気にするのはPOWだ。もっと正確に言えば、Proof of Work という新しい方法による、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C1%CF%C8%AF">創発</a>的な合意形成による分散DBの一意性確保だ。これが革新的で従来になかった発想なので、賛否はいろいろあるが、専門家は<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D3%A5%C3%A5%C8%A5%B3%A5%A4%A5%F3">ビットコイン</a>と言えば、まずPOWの話をする。</p><p>これと比較すると、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B8%F8%B3%AB%B8%B0%B0%C5%B9%E6">公開鍵暗号</a>の使われ方は、<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:常識">常識</a>的で定石通りで何も目新しいことがない。<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C5%C5%BB%D2%BD%F0%CC%BE">電子署名</a>とかハッシュとか古くから使われている技術を今まで通りの使い方で使っているにすぎない。</p><p>だけど、一般ユーザにとってエンジンよりバッテリーの理解が重要で役に立つのと同じように、仮想通貨を使うためには、POWとか<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D6%A5%ED%A5%C3%A5%AF%A5%C1%A5%A7%A1%BC%A5%F3">ブロックチェーン</a>そのものより<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B8%F8%B3%AB%B8%B0%B0%C5%B9%E6">公開鍵暗号</a>の理解の方がずっと重要だ。特に安全に使うには、これをわかっている必要がある。</p><p>そして、重要な違いとして、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B8%F8%B3%AB%B8%B0%B0%C5%B9%E6">公開鍵暗号</a>という技術は、これまで広く使われてきたが、鍵の管理がユーザにまかせられているという状況は、これまでなかった。なので、これについて啓蒙することが急務であると私は思う。</p><p>と言っても、理解すべき点は非常に単純なことだ。<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B8%F8%B3%AB%B8%B0%B0%C5%B9%E6">公開鍵暗号</a>とは、閉める鍵と開ける鍵が違う金庫のようなものだと考えればいい。</p><p>店員がその日の売り上げを店の奥にある金庫に入れて、翌朝、オーナーがそれを開けて銀行に持っていくとする。オーナーは店員に合鍵を渡さないといけないのだが、入ったばかりのバイトにまで合鍵を渡すのは不安だろう。そうなると夜のシフトは、古顔の信頼できる店員にしかまかせられないことになる。しかしもし、閉める鍵と開ける鍵が違う鍵ならば、開ける鍵はオーナーだけが持っていて、店員全員に閉める鍵の合鍵を渡しておけばいい。閉めるだけの鍵なら、極端に言えば泥棒に渡したって問題ない。</p><p>仮想通貨では、閉める鍵が口座番号のようなもので、公開鍵と言う。これは誰に見られてもかまわない。</p><p>開ける鍵は、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C8%EB%CC%A9%B8%B0">秘密鍵</a>と言って、ある口座から出金する時にはこれが必要になる。ハンコのようなものだ。</p><p>仮想通貨を使うには、最初に閉める鍵と開ける鍵のペアを作ることが必要で、開ける鍵、つまり<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C8%EB%CC%A9%B8%B0">秘密鍵</a>の方を誰にも見られないように厳重に保管しないといけない。私が考える一番重要な<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%EA%A5%C6%A5%E9%A5%B7%A1%BC">リテラシー</a>とは、実はそれだけの話だが、それだけでもない。</p><p><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C8%EB%CC%A9%B8%B0">秘密鍵</a>は、コンピュータから見ると一つの数字なのだが、人間から見ると数千文字の謎の暗号で、これを覚えることはとてもできないので、ファイルとしてコンピュータの中に保存することになる。このファイルが壊れることがハンコを紛失することで、このファイルをどこかにコピーされることがハンコを盗まれることだ。</p><p>だが、仮想通貨においては、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C8%EB%CC%A9%B8%B0">秘密鍵</a>がハンコ以上のものだ。</p><p>ハンコと違って、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C8%EB%CC%A9%B8%B0">秘密鍵</a>の紛失と盗難には一切の救済措置がない。<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%BB%A1%BC%A5%D5%A5%C6%A5%A3%A1%BC%A5%CD%A5%C3%A5%C8">セーフティーネット</a>が何もなくて、金が消える。何百億円でも一瞬で消える。</p><p>ハンコが盗まれても、銀行の窓口で犯人の挙動が怪しかったらチェックされるし、監視カメラに残る。何かの売買契約に偽造したハンコを押されてしまったとしても、裁判したり取り戻す方法はある。仮想通貨にはそういう救済措置が全くない。</p><p><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D6%A5%ED%A5%C3%A5%AF%A5%C1%A5%A7%A1%BC%A5%F3">ブロックチェーン</a>とは、「Aの口座からBの口座に千円送ります」と書いてAさんのハンコが押してある紙が何千枚も束になったもので、このハンコが正しいかの検証は、さすがコンピュータで、一切の間違いなく確実にやってくれるが、ハンコが正しかった場合、つまり、このハンコを押す時にその押した人の手元に<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C8%EB%CC%A9%B8%B0">秘密鍵</a>のファイルがあった場合には、この伝票をチャラにすることはできない。</p><p>仮想通貨の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%EA%A5%C6%A5%E9%A5%B7%A1%BC">リテラシー</a>とは、この「ハンコを押したら絶対にチャラにできない」ことの容赦の無さを理解していることなのだと思う。</p><p>ご存知のように、ハードディスクは壊れるものでパソコンはウィルスにやられるもので、大事なデータに限ってディスクが壊れ、大事な用事をしている時に限ってパソコンは動かなくなる。</p><p>だから、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C8%EB%CC%A9%B8%B0">秘密鍵</a>を自分で管理するのはあきらめて、取引所という専門家にまかせた方がいいと思うのだが、その時に、自分が何を預けていて取引所が中でそれをどう扱っているのか理解することが<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%EA%A5%C6%A5%E9%A5%B7%A1%BC">リテラシー</a>だと思う。</p><p>あるいは、口座を分散して、入れる金額に応じて相応のレベルで<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C8%EB%CC%A9%B8%B0">秘密鍵</a>を管理することが必要だ。その場合、取引所に長期的に大金を預けることはなくてウォレットというソフトを併用することになるだろう。ウォレットは鍵ペア、つまり口座を作ることもするし、それを用途別に複数作ることもする。本格的に仮想通貨を使う場合は、ここで中で何をやっているかの理解も必要だ。</p><p>いずれにせよ、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C8%EB%CC%A9%B8%B0">秘密鍵</a>の盗難と紛失には、一切の救済措置がない。</p><p>これが、従来の通貨というか従来の金融資産と一番違う所で、これは人間には扱えないものではないかという気もするが、これから無数の仮想通貨ができて、誰もが複数の仮想通貨に分散して、自分の資産を持つことになると思う。その結果、一つの通貨の一つの口座における<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C8%EB%CC%A9%B8%B0">秘密鍵</a>の盗難と紛失は、我々が今考えるほど致命的な事故ではなくなって、そうなればなんとかなるような気もする。</p> essa ビットコインの時価総額=上級国民の不正蓄財の総計 hatenablog://entry/10257846132615860559 2017-12-27T00:00:00+09:00 2018-08-30T10:46:29+09:00 ビットコインの一番面白いことは、誰でもマイナーになれることである。これは本当にすごいことなのだが、そのすごさがあまり理解されていないようだ。誰でもマイナーになれるということは、悪い奴でもなれるということである。ただ、ひとつだけ条件があって、悪い奴でもかまわないのだが、利己的でないとダメだ。マイナーというのは、ブロックチェーンのブロックとブロックをつなげる人のことで、これは簡単につながらない大変な仕事である。大変な仕事なので、うまくつなげたマイナーは手数料がもらえる。たくさんマイナーがいる中で、手数料がもらえるのはただ一番運がいい一人だけで、他のマイナーはそこまでの計算が全部無駄になる。だから、… <p><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D3%A5%C3%A5%C8%A5%B3%A5%A4%A5%F3">ビットコイン</a>の一番面白いことは、誰でもマイナーになれることである。これは本当にすごいことなのだが、そのすごさがあまり理解されていないようだ。</p><p>誰でもマイナーになれるということは、悪い奴でもなれるということである。ただ、ひとつだけ条件があって、悪い奴でもかまわないのだが、利己的でないとダメだ。</p><p>マイナーというのは、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D6%A5%ED%A5%C3%A5%AF%A5%C1%A5%A7%A1%BC%A5%F3">ブロックチェーン</a>のブロックとブロックをつなげる人のことで、これは簡単につながらない大<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:変な">変な</a>仕事である。大<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:変な">変な</a>仕事なので、うまくつなげたマイナーは手数料がもらえる。</p><p>たくさんマイナーがいる中で、手数料がもらえるのはただ一番運がいい一人だけで、他のマイナーはそこまでの計算が全部無駄になる。だから、ひょっとしたら、他のマイナーはそいつのしたことはなかったことにし、なんとか別のブロックを生かして、そいつが手数料をもらえないようにしてやりたいと思うかもしれない。</p><p>が、ここが<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D3%A5%C3%A5%C8%A5%B3%A5%A4%A5%F3">ビットコイン</a>のよくできている所で、「一番長いチェーンだけが生き残る」というルールがある。なので、その運のいいだけの奴がつなげたチェーンの次に自分のブロックをつなげないと手数料がもらえないのだ。ここで嫉妬心に負けたら立派なマイナーとは言えない。</p><p>ここで「あいつが手数料を<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:受け">受け</a>取るのは癪だから、自分がもらえないくてもいいから、とにかくあいつのブロックは無視しよう」とか言う奴は、利己的とは言えないので、マイナーになれない。利己的というのは、純粋に自分の利益だけを考える人のことで、一つでも長い既存のチェーンに自分のをつなげる人のことだ。誰が前のチェーンをつなげてその手数料を<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:受け">受け</a>取るのか、そういうことは一切無視して、とにかく自分の儲けだけを考える。そういう利己的な人間だけが良いマイナーになれる。</p><p><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D3%A5%C3%A5%C8%A5%B3%A5%A4%A5%F3">ビットコイン</a>のすごい所は、「マイナーは利己的な奴が多い」という仮定と「一番長いチェーンが生き残る」というルールだけで、チェーンをつなげるという大変面倒くさい作業が自然に回るようにしたことだ。</p><p>利己的でないマイナーも多少はいるかもしれないが、人の作業を無視するなら、自分はより多くのブロックをつなげないと手数料がもらえない。その間に、利己的なマイナーは、最新のブロックからつなげて長いチェーンを作ってしまうので、結局、利己的でないマイナーは脱落する。</p><p>ブロックには金のやりとりが書かれているので、ブロックのチェーンは、預金通帳のような取引の記録になる。そういう大事なものを利己的で悪い奴に預けられるということが、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D3%A5%C3%A5%C8%A5%B3%A5%A4%A5%F3">ビットコイン</a>のすごい所である。</p><p>普通は、金に関わるものは、公正な良い人にしか預けられない。利己的な悪い行員しかいない銀行なんかに金を預けたら、いっぺんでチョロまかされてしまう。</p><p>知り合いで銀行に自分の資産をくいものにされた人がいて、銀行のことを随分恨んでいて「銀行員なんてハイエナだ、ロクな奴はいない。約束を守らない」と怒っていたが、それでもその人も普通に銀行に金を預けていた。</p><p>銀行員にどれだけ悪い奴がいるかは知らないが、銀行員はしっかり管理されているので、ほとんどの行員は公正で良い人のように振舞い、金をごまかしたりはしない。</p><p>ただ、行員を公正で良い人のように振る舞わせるには金がかかる。普通の会社よりたくさんチェックをして、高いセキュリティの設備を入れて、監査とかそういうことを専門にやる人もたくさんいる。<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%C6%C6%C4%B4%B1%C4%A3">監督官庁</a>も人と手間をかけ、より厳密に監督する。こういうことをきちんとするには、全部コストがかかる。</p><p>なにより、給料を多めに払って社会的なステータスも高くしておき、「ここをやめたら大損」と思わせないと、いろいろな誘惑に負けてしまう。</p><p>公正で良い人がいないと回らないシステムには金がかかる。利己的で悪い奴にまかせられるシステムは、それよりずっと安い。</p><p>だが、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D6%A5%ED%A5%C3%A5%AF%A5%C1%A5%A7%A1%BC%A5%F3">ブロックチェーン</a>には弱点もあって、それは、電気代がやたらかかることだ。チェーンをつなげるためには、大<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:変な">変な</a>電気代がかかる。</p><p>これは、改良しようがない欠点であって、なぜかと言うと、電気代がかかるようにしておかないと、利己的でないマイナーが長いチェーンを作れてしまうからだ。長いチェーンが何本もできると<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D3%A5%C3%A5%C8%A5%B3%A5%A4%A5%F3">ビットコイン</a>は破綻してしまうので、誰かのつなげたチェーンに<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:みんな">みんな</a>が乗っかってくれないと困る。そのためには、チェーンを一個つなげるだけで電気代がかかるようにしておく必要がある。</p><p>つまり、これは、電気代を取るか、公正で良い人を抱えるコストを取るかの<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C8%A5%EC%A1%BC%A5%C9%A5%AA%A5%D5">トレードオフ</a>なのだ。</p><p>電気代をかけないでチェーンをつなげるプライベート<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D6%A5%ED%A5%C3%A5%AF%A5%C1%A5%A7%A1%BC%A5%F3">ブロックチェーン</a>という方法もあるが、そのためには、マイナーが公正で良い人だという保証が必要になる。意味ある問いは、電気代 or 良い人?だ。</p><p>そして、良い人というのは、言葉を変えれば、メン<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D0%A1%BC">バー</a>シップ管理である。良い人というのは実際にはいないので、メン<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D0%A1%BC">バー</a>を選抜して、アメとムチで、メン<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D0%A1%BC">バー</a>に良い人であることを強制する必要がある。</p><p>メン<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D0%A1%BC">バー</a>シップ管理というのは長年行なわれてきて、やり方も広く知られているが、どうしても腐敗と非効率をゼロにはできない。一回中に入ると、惰性で改善を怠ったり、誘惑に負ける者もいて、そういうのを完全に排除することはできない。銀行を恨んでいる人の話をよく聞くと、別に法律的に不正なことをされたり契約不履行をされたわけではない。表面的には公正でリーガルだが、その人にとっては許しがたいことをされたという話で、メン<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D0%A1%BC">バー</a>シップに権力を与えるとどうしてもそういう話が出てくる。</p><p>金融機関というのは、小さい悪いことはしないが、やる時は大きいことをやる。窓口で現金をチョロまかしたりはしないが、インサイダーとか破綻とか、世間をゆるがすようなことをたまにする。</p><p>あってはならないことが、本当にないなら、メン<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D0%A1%BC">バー</a>シップの管理の方が安くなるし、あってはならないことはあってはならないので、コスト計算には普通入れない。だから、あってはならないことのコストは普通勘定に入ってないが、実際にはあってはならないことは起こるし、それを処理するコストは利用者が負担することになる。</p><p>利己的な人間の集団は、あってはならないことをあまり起こさないのだが、それはなぜかと言うと、「フォーク」ができるからだ。「フォークされる可能性」が暗黙のプレッシャーとなって、ガバナンスとして機能している。これは<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%EA%A5%CA%A5%C3%A5%AF%A5%B9">リナックス</a>などのオープン<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:ソース">ソース</a>ソフトウエアと同じだ。</p><p><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%EA%A5%CA%A5%C3%A5%AF%A5%B9">リナックス</a>はフォークができる。つまり、リナス・トー<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D0%A5%EB%A5%B9">バルス</a>が何か<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:変な">変な</a>ことをしたら、別の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%EA%A5%CA%A5%C3%A5%AF%A5%B9">リナックス</a>を誰でも次の日に作ることができる。その次の日からは、本家と分家でどっちが開発者をたくさん集めるか競争する。オープン<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:ソース">ソース</a>ソフトウエアがうまく行くのは、うまく行かなかったプロジェクトはフォークしてつぶされるからである。つまり、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%EA%A5%CA%A5%C3%A5%AF%A5%B9">リナックス</a>は、実際に開発に携わっている人たちだけがコン<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C8%A5%ED%A1%BC%A5%EB">トロール</a>しているのではなく、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C0%F8%BA%DF%C5%AA">潜在的</a>に世界中の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D7%A5%ED%A5%B0%A5%E9%A5%DE">プログラマ</a>から監視されているのである。</p><p><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D3%A5%C3%A5%C8%A5%B3%A5%A4%A5%F3">ビットコイン</a>も同じで、誰でもマイナーになれるということは、誰でもマイナーをやめて他のコインに移れるということだ。<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D3%A5%C3%A5%C8%A5%B3%A5%A4%A5%F3">ビットコイン</a>の台帳は全部公開されているので、誰でも俺様コインを作ることはできる。作ることは容易だが、関門はその次の、人を集める段階にある。俺様<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%EA%A5%CA%A5%C3%A5%AF%A5%B9">リナックス</a>も同じだ。俺様コインも俺様<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%EA%A5%CA%A5%C3%A5%AF%A5%B9">リナックス</a>も作ることは容易だが、本家に集っている人や金をうばいとって、自分の所に集めることは大変だ。普通はできない。</p><p>ただ、本家が誰の目から見てもおかしなことをやっている場合は別だ。改良を提案して、その改良点を評価する人が多ければ、フォークした新<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D0%A1%BC">バー</a>ジョンに人が集まる。ここで本家が反省して、その改良点を真似すると、また本家に人が戻ってしまう。フォークしてそこに継続的に人を集めるのは実際は大<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:変な">変な</a>のだが、それは、出入り自由なら本家が反省するからだ。実際には、本家はフォークされる前の提案の段階で先に反省する。つまり建設的な改良案は全部取りこむし、そういう姿勢を明確に打ち出している。<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C0%F8%BA%DF%C5%AA">潜在的</a>なフォークに先回りして対応することを本家が強いられているということが、フォークによるガバナンスと私が呼んでいるものだ。</p><p>メン<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D0%A1%BC">バー</a>シップで管理されている本家は、あまり反省しない。痛みをともなう改良などはたいてい握りつぶしてしまう。</p><p>だから、オープン<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:ソース">ソース</a>の本家は、大半の利用者から見て納得できるようなまともな運営が行なわれているのだが、それは、本家の中の人が特別崇高な意思を持っているからではなく、「フォークされる可能性」によるガバナンスが機能しているからである。</p><p><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D3%A5%C3%A5%C8%A5%B3%A5%A4%A5%F3">ビットコイン</a>もそれと似た、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C0%F8%BA%DF%C5%AA">潜在的</a>な監視を利用者やマイナーから<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:受け">受け</a>ていると思う。<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D6%A5%ED%A5%C3%A5%AF%A5%C1%A5%A7%A1%BC%A5%F3">ブロックチェーン</a>のフォークにはマイナーだけでなく、開発者や利用者の自由参加も必要だが、それも最終的にはマイナーが自由参加できることで担保されている。手数料を取りすぎたり、特定の人を優遇したりするようなことがあれば、フォークされてしまう。中の人はあやしげな人もいそうだし、多少はなんかやってるかもしれないが、やり過ぎるとフォークされてつぶされることはわかっている。</p><p>「あってはならないこと」が見えているのに、それを無視したら、間違いなくフォークされるだろう。</p><p>フォークが実際に起きる時は、関係者一同集まっても意見が割れる時で、それは不確実性があって実際に両方試してみることが必要な場合に限られる。フォークはめったに起こらないが、実際に起こらなくても、「あってはならないこと」を起こさないための抑止力としては、日常的に機能している。</p><p>フォークの抑止力によるガバナンスは、メン<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D0%A1%BC">バー</a>シップによるガバナンスと対照的で、小さい所ではあまり機能しない。<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D3%A5%C3%A5%C8%A5%B3%A5%A4%A5%F3">ビットコイン</a>の中の人は、銀行員なんかよりはずっと細かいムダやズルをしていると思う。しかし、「あってはならないこと」を起こさないという点では、ずっと信頼できる。</p><p>結局、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D3%A5%C3%A5%C8%A5%B3%A5%A4%A5%F3">ビットコイン</a>の発明とは、電気代をうんとかけると、悪い奴、利己的な奴を集めるだけで、「フォーク可能性」によるガバナンスのある台帳管理が可能になるということだ。</p><p>これがよいものかどうかは、これが置き換えようとしている「メン<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D0%A1%BC">バー</a>シップによって良い人を強制することによる管理」が起こす「あってはならないこと」の総コストとの比較になる。</p><p>これまで、メン<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D0%A1%BC">バー</a>シップによる管理以外ではまともに回らないものがたくさんあった。だから、それにはどんな弊害があっても必要悪として見過ごされてきた。それを公正に効率的にするための不断の努力は行なわれているが、一定の弊害はあってもしかたないものとされた。それが、これから見直されるのだ。</p><p>弊害が大きいというコンセンサスが得られたら、メン<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D0%A1%BC">バー</a>シップによる管理はやめて、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D6%A5%ED%A5%C3%A5%AF%A5%C1%A5%A7%A1%BC%A5%F3">ブロックチェーン</a>に移行するという選択肢がある。<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:もちろん">もちろん</a>、それが社会に与える影響もとんでもなく大きいものになるが、弊害のレベルによっては、移行すべきだと考える人が多数になるかもしれない。</p><p>乱暴にわかりやすく言ってしまえば、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D3%A5%C3%A5%C8%A5%B3%A5%A4%A5%F3">ビットコイン</a>にどれくらい金が集まるかは、上級国民が今一般国民からだましとっているお金次第だということ。</p><p><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D3%A5%C3%A5%C8%A5%B3%A5%A4%A5%F3">ビットコイン</a>にはPERのような価格のための指標がないと言われるが、上級国民の不正蓄財の額が PER と似たような基準になると私は思う。</p><p>不正蓄財が電気代と同じような額なら、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D3%A5%C3%A5%C8%A5%B3%A5%A4%A5%F3">ビットコイン</a>に移行するメリットはないので、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D3%A5%C3%A5%C8%A5%B3%A5%A4%A5%F3">ビットコイン</a>には実需はない。不正蓄財がたくさんあれば、電気代をかけても移行することで、経済の循環がよくなるので、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D3%A5%C3%A5%C8%A5%B3%A5%A4%A5%F3">ビットコイン</a>には実需がある。そして、不正蓄財の額が大きいほどその実需が大きくなる。</p><p>不正蓄財と電気代の差額の何パーセントかが、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D3%A5%C3%A5%C8%A5%B3%A5%A4%A5%F3">ビットコイン</a>の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BB%FE%B2%C1%C1%ED%B3%DB">時価総額</a>の理論値になるだろう。</p><p>ただし、既存の不正蓄財を掃き出す圧力になるということは、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D3%A5%C3%A5%C8%A5%B3%A5%A4%A5%F3">ビットコイン</a>への風当たりも大<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:変な">変な</a>ものになるわけで、最終的には理論値に収束するとしても、そこへの道筋はまっすぐなものにはならないだろう。</p><br /> <p>それと、余談として、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D3%A5%C3%A5%C8%A5%B3%A5%A4%A5%F3">ビットコイン</a>の匿名性について。</p><p><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D3%A5%C3%A5%C8%A5%B3%A5%A4%A5%F3">ビットコイン</a>は匿名性が高く<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DE%A5%CD%A1%BC%A5%ED%A5%F3%A5%C0%A5%EA%A5%F3%A5%B0">マネーロンダリング</a>の温床になっていると言われている。これはその通りだとは思うが、この匿名性も従来の匿名性とは意味が違う。</p><p><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D3%A5%C3%A5%C8%A5%B3%A5%A4%A5%F3">ビットコイン</a>では、全員の銀行通帳が全部アップロードされていて閲覧可能になっている。ただし、口座番号があるだけで、氏名や住所の欄は黒塗りになっている。この黒塗りが絶対に剥がせないという意味では匿名性は高いのだが、取引の相手先、日時、金額は、全部計算機処理をしやすい形でアップロードされている。もし「この<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D3%A5%C3%A5%C8%A5%B3%A5%A4%A5%F3">ビットコイン</a>アド<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:レス">レス</a>はAさんのアド<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:レス">レス</a>だ」という情報が流出したら、Aさんの銀行通帳が公開されたのと同じわけで、本当に匿名性が高いと考えてよいのかについては、私は疑問である。</p><p><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D3%A5%C3%A5%C8%A5%B3%A5%A4%A5%F3">ビットコイン</a>アド<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:レス">レス</a>は誰でも無数に作れるので、取引のたびに生成すればよいと言われているが、当人のウォレットには保存しておかないといけないので、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B6%AF%C0%A9%C1%DC%BA%BA">強制捜査</a>などでそれを入手できた場合、得られる情報は紙の通帳より多いのではないだろうか。ウィルスやハッキングによる流出でも同じだ。</p><p><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C8%EB%CC%A9%B8%B0">秘密鍵</a>はきちんとやれば隠しておけるが、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D3%A5%C3%A5%C8%A5%B3%A5%A4%A5%F3">ビットコイン</a>アド<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:レス">レス</a>は、金を<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:受け">受け</a>取るためには相手に教える必要があって、 普通の社会生活をしていたら、これを隠し続けることは難しい<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:ような気がする">ような気がする</a>。しかし、これを知られるのは、通帳を半分公開するのと同じで、匿名性が高いというより、とても重要だが非常に流出しやすい個人情報と考えるべきではないだろうか。</p><p>アド<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:レス">レス</a>やコインをたくさん使って、複雑化することもできるが、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C7%A5%A3%A1%BC%A5%D7%A5%E9%A1%BC%A5%CB%A5%F3%A5%B0">ディープラーニング</a>とか使えば、一発で犯罪者特有のパターンとかを抽出できそうな気がする。</p> essa 今はコードがお偉いさんなんだからMOBは雁首揃えろって話 hatenablog://entry/10257846132615860602 2017-06-19T00:00:00+09:00 2018-08-30T10:46:32+09:00 技術なきマネジメントの衰退とその対策 - メソッド屋のブログ Mob Programmingって初めて聞いたけど、とてもいい方法に思える。コードを書く時に、今現在の仕様はわかっていたとしても、今後どうなるか、どういう方向に発展するのか気になって、ビジネス的にその分野に詳しい人の所に聞きに行ってから書きはじめることがあるし、性能的に大丈夫かDBに詳しい人の意見を聞いたり、何か迷った時に過去のプロジェクトで似たようなケースをどっちの方法で解決したか調べたりすることもある。書き出すとすぐ終わる短いコードでも、書き出す前に、聞きにいったり議論したりする時間が随分かかっていることもある。この時間をかけな… <ul> <li><a href="http://simplearchitect.hatenablog.com/entry/2017/06/19/080036">&#x6280;&#x8853;&#x306A;&#x304D;&#x30DE;&#x30CD;&#x30B8;&#x30E1;&#x30F3;&#x30C8;&#x306E;&#x8870;&#x9000;&#x3068;&#x305D;&#x306E;&#x5BFE;&#x7B56; - &#x30E1;&#x30BD;&#x30C3;&#x30C9;&#x5C4B;&#x306E;&#x30D6;&#x30ED;&#x30B0;</a></li> </ul><p>Mob Programmingって初めて聞いたけど、とてもいい方法に思える。</p><p>コードを書く時に、今現在の仕様はわかっていたとしても、今後どうなるか、どういう方向に発展するのか気になって、ビジネス的にその分野に詳しい人の所に聞きに行ってから書きはじめることがあるし、性能的に大丈夫かDBに詳しい人の意見を聞いたり、何か迷った時に過去のプロジェクトで似たようなケースをどっちの方法で解決したか調べたりすることもある。</p><p>書き出すとすぐ終わる短いコードでも、書き出す前に、聞きにいったり議論したりする時間が随分かかっていることもある。この時間をかけないと、結局、後で変更になるので、先に聞きにいくのがベターなんだが、チーム全員集まってひとつのコードを書けば、そういう時間を省略できるような気はする。</p><p>だから、これが生産性が高いということは感覚的にはすぐ納得できるのだが、一方で、これを導入するために人を説得するとしたら大変だろうな、とも思う。</p><p>二人でやる<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DA%A5%A2%A5%D7%A5%ED%A5%B0%A5%E9%A5%DF%A5%F3%A5%B0">ペアプログラミング</a>でも、「それって一本のプログラムを二人で書くってことは、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B9%A9%BF%F4">工数</a>が二倍になるんじゃない?」って言われて言葉に詰まったことを思い出す。Mob Programming は、二倍じゃなくて数倍になるので、それを上回る生産性向上がどこから来るのか説明する必要がある。考えただけで頭が痛い。</p><p>それで、急にヒラめいたのだが、これって「今はコードがお偉いさん」と言えばいいのではないだろうか?</p><p>たとえば、大企業の地方の工場に本社の社長が視察に来るとする。そうしたら工場の幹部が10数人玄関の前に整列して、社長が来るのを待つだろう。社長の車が渋滞で遅れたら、幹部の単価×数時間が無駄になるのだが、誰もそういう<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B9%A9%BF%F4">工数</a>のことは気にかけない。それどころか、前日にリハーサルまでやったりする。</p><p>「お偉いさんには、あらゆる場面で人をたくさんつけるもんだ」というのは説明不要の<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:常識">常識</a>である。役員には秘書がつくもんだし、その秘書も事務作業をやる人から経営的に高度な判断までできる幹部候補生の秘書室長まで、さまざまなレベルのさまざまな技能を持った人がたくさんつくもんだ。</p><p>社長にプレゼンする時に、何か質問されて「えっと、今はその、担当者がおりませんので、この件は後日回答」なんてことは許されない。即答できるように関係者全員部屋に集めておくもんだ。</p><p>コードを書く時に、多少関係薄そうでも、関わりそうな担当者は有無を言わさず全員集合、というのは、コードがお偉いさんだから、万が一でもコード様に失礼があったり待たせたりすることがあってはならん、と考えれば<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:受け">受け</a>入れやすい。</p><p>これは非合理な<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B5%B7%CE%E9">儀礼</a>ではなくて、社長の時間は貴重で社長の決断の影響範囲は大きいのだから、社長に合わせてしたっぱが振り回されるとしても、それによって社長が正しい判断を素早くできるのなら、会社全体としては最適な方法だと言える。</p><p>今はコードの影響力の方が社長より大きくて、社長が右へ行けと言っても、コードが右へ行けるようにできてなければ、会社は右へ行けない。コードが右へ行けるように組んでおくことが会社の将来を左右する。社長よりもっと上の「お偉いさん」が来るとしたら、そりゃチーム全員その部屋に集まるのは当然で、それを一人の担当者にまかせておく従来のプログラミングの方が異常のようにも思えてくる。</p><p>コード様が社長より偉いということは、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D7%A5%ED%A5%B0%A5%E9%A5%DE">プログラマ</a>にデスマをさせればわかると思う。デスマの中で<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D7%A5%ED%A5%B0%A5%E9%A5%DE">プログラマ</a>は苦し紛れにどこで手を抜いたらいいか必死で考える。ひどいコードができるのは当然だが、全てのモジュールが全部一様にひどいということはない。たいていそこにはひどさの濃淡があって、手を抜いたモジュールはもうボロボロでメンテ<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C9%D4%C7%BD">不能</a>で、二度と修正、拡張できない。会社はこのコードに縛られてそのまま業務を継続するか、高い金を払って作る直すかで、どの業務がそういう目にあうかは、デスマの中では意識モーローの<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D7%A5%ED%A5%B0%A5%E9%A5%DE">プログラマ</a>の気紛れな決断に左右される。</p><p>同じ決断を一番いい形でやるのが Mob Programming で、全体の品質も高くなるだろうが、それより会社の方向性とプログラムの拡張性が同じ方向を向いていることが重要だと思う。</p><p>企業活動とは、さまざまな<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B9%A5%C6%A1%BC%A5%AF%A5%DB%A5%EB%A5%C0%A1%BC">ステークホルダー</a>からの矛盾を含む要求の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C8%A5%EC%A1%BC%A5%C9%A5%AA%A5%D5">トレードオフ</a>を取ることであり、その焦点となる場が、昔は経営幹部の臨席する会議であったが、今はコーディングがその決断の現場になっている。ここで企業がどっちを向くかが決まる。</p><p>ここになるべく多様な<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B9%A5%C6%A1%BC%A5%AF%A5%DB%A5%EB%A5%C0%A1%BC">ステークホルダー</a>の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C2%E5%CD%FD%BF%CD">代理人</a>を臨席させることが重要だ。</p><p>開発チームは、全員が金太郎飴の一様な<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D7%A5%ED%A5%B0%A5%E9%A5%DE">プログラマ</a>になることはほとんどなくて、それまでのキャリアや担当するサブシステム等によって、自然と特定の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B9%A5%C6%A1%BC%A5%AF%A5%DB%A5%EB%A5%C0%A1%BC">ステークホルダー</a>の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C2%E5%CD%FD%BF%CD">代理人</a>になっていく。全員が技術に立脚しながらも観点が散らばるということが重要で、チーム全員が一つのコードを書くというのは、そこでなるべく多くの情報を集約した上で重要な<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C8%A5%EC%A1%BC%A5%C9%A5%AA%A5%D5">トレードオフ</a>を取っているということだと思う。</p><p>誰も何も言わずドライ<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D0%A1%BC">バー</a>一人がたんたんとコーディングを進めていくだけだとしても、そのコードに含まれる決定事項がメン<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D0%A1%BC">バー</a>を通して、さまざまなセクションにフィードバックされていくことに意味がある。</p><p>結局、今のように一人でコードを書くってことは、コード様が「ここはどうなっておるのだ?」と言った時に、「えっと、今はその、担当者がおりませんので、この件は後日回答」を連発しているということで、コード様が「お偉いさん」だとしたら、これは随分失礼な話だ。</p> essa 将棋が強い人が正義でいい、本当に強ければ hatenablog://entry/10257846132615860647 2017-01-03T00:00:00+09:00 2018-08-30T10:46:34+09:00 将棋のソフト指し疑惑について、第三者委員会の調査結果が発表されました。 将棋:ソフト使用疑惑「不正の証拠ない」 第三者委 - 毎日新聞 私は、この問題について三本の記事を書いています。 渡辺竜王に私心はない! - アンカテ 将棋のソフト指しに見る逆転の構図 - アンカテ 「千田率」によって裁かれる恐怖 - アンカテ いずれの記事でも、不正の有無について直接的な言及は避けていますが、内心では「不正は間違いなくあった」と考えて書いており、普通に読めばそのニュアンスを汲み取れる文章だったと思います。現時点では、この点については、自分の認識が間違っていたと考えており、第三者委員会の「不正は無かった」と… <p>将棋のソフト指し疑惑について、第<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BB%B0%BC%D4">三者</a>委員会の調査結果が発表されました。</p> <ul> <li><a href="http://mainichi.jp/graphs/20161226/hpj/00m/040/001000g/1">&#x5C06;&#x68CB;&#xFF1A;&#x30BD;&#x30D5;&#x30C8;&#x4F7F;&#x7528;&#x7591;&#x60D1;&#x300C;&#x4E0D;&#x6B63;&#x306E;&#x8A3C;&#x62E0;&#x306A;&#x3044;&#x300D;&#x3000;&#x7B2C;&#x4E09;&#x8005;&#x59D4; - &#x6BCE;&#x65E5;&#x65B0;&#x805E;</a></li> </ul><p>私は、この問題について三本の記事を書いています。</p> <ul> <li><a href="http://d.hatena.ne.jp/essa/20161022/p1">&#x6E21;&#x8FBA;&#x7ADC;&#x738B;&#x306B;&#x79C1;&#x5FC3;&#x306F;&#x306A;&#x3044;! - &#x30A2;&#x30F3;&#x30AB;&#x30C6;</a></li> <li><a href="http://d.hatena.ne.jp/essa/20161029/p1">&#x5C06;&#x68CB;&#x306E;&#x30BD;&#x30D5;&#x30C8;&#x6307;&#x3057;&#x306B;&#x898B;&#x308B;&#x9006;&#x8EE2;&#x306E;&#x69CB;&#x56F3; - &#x30A2;&#x30F3;&#x30AB;&#x30C6;</a></li> <li><a href="http://d.hatena.ne.jp/essa/20161103/p1">&#x300C;&#x5343;&#x7530;&#x7387;&#x300D;&#x306B;&#x3088;&#x3063;&#x3066;&#x88C1;&#x304B;&#x308C;&#x308B;&#x6050;&#x6016; - &#x30A2;&#x30F3;&#x30AB;&#x30C6;</a></li> </ul><p>いずれの記事でも、不正の有無について直接的な言及は避けていますが、内心では「不正は間違いなくあった」と考えて書いており、普通に読めばそのニュアンスを汲み取れる文章だったと思います。</p><p>現時点では、この点については、自分の認識が間違っていたと考えており、第<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BB%B0%BC%D4">三者</a>委員会の「不正は無かった」という調査結果は充分信頼のおけるものだと思っています。このような記事を書いたことについては、三浦九段および関係者の方におわびします。</p><p>ここでは、自分のこの間違った認識がどうして起きたのかについてふりかえりつつ、さらにこの問題について考えてみたいと思います。</p> <div class="section"> <h4>報告書で驚いた点</h4> <p>第<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BB%B0%BC%D4">三者</a>委員会の報告書を読んで、私が驚いた点は次の二点です。</p> <ul> <li><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CE%B5%B2%A6%C0%EF">竜王戦</a>挑戦者決定三番勝負の第二局、第三局で、連盟理事が対局中の三浦九段を監視していたこと</li> <li>疑惑の指してについて多くのプロ<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%FD%BB%CE">棋士</a>に<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D2%A5%A2%A5%EA">ヒアリ</a>ングを行なった所、大半が「不自然な手とは言えない」と回答したこと</li> </ul><p>前者は、8/26という文春記事よりかなり早い時期に連盟が積極的に調査に動いていたということで、これまで連盟側が強調していた「切羽つまった状況の中での判断」という説明との整合性がありません。</p><p>後者は、10/10に行なわれたトップ<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%FD%BB%CE">棋士</a>による「極秘会合」の中で、三浦九段を擁護する<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%FD%BB%CE">棋士</a>がいなかったという話とくい違います。</p><p>私にとっては、特に後者がショックでした。会合の席では勢いに飲まれて何も言えないということは充分ありうると思っていましたが、少なくともここで疑惑の対局や指し手について説明があったのですから、参加した<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%FD%BB%CE">棋士</a>は、その後、問題の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%FD%C9%E8">棋譜</a>を後日自分で検討したことは間違いないと思います。</p><p>仮に渡辺<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CE%B5%B2%A6">竜王</a>がこの後の処分を強引に進めたのだとしても、連盟会長の谷川九段や<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%FD%BB%CE">棋士</a>会会長の佐藤九段が、それに異議をとなえなかったのは、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%FD%C9%E8">棋譜</a>の中に説明できない手があったからだと思っていました。</p><p>一致率の件や、その手をソフトが指せるかどうかについては、将棋ソフトの知識が浅いので、自信を持って判断できなかったり、見解が二点三点することもあると思うのですが、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%FD%C9%E8">棋譜</a>を見せて「これは三浦さんの手かどうか」という質問には、自分自身で明解な判断を下して、それが揺らぐことはないと思っていました。</p><p>私が「不正は間違いなくあった」と考えた一番大きな根拠は、この点です。特に<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BA%B4%C6%A3%B9%AF%B8%F7">佐藤康光</a>九段がその場にいた以上は、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%FD%C9%E8">棋譜</a>の中に疑惑の手があると考えるべきだろう、そう考えていました。</p><p>第<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BB%B0%BC%D4">三者</a>委員会が<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D2%A5%A2%A5%EA">ヒアリ</a>ングを行なった<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%FD%BB%CE">棋士</a>の名前は公開されていませんが、状況から見ても棋力から見ても「秘密会合」の参加者が全く含まれていないことは考えられません。しかし、多くの<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%FD%BB%CE">棋士</a>が「不自然な手はなかった」と証言しているということで、これを見て私は考えを変えるべきだと思いました。</p> </div> <div class="section"> <h4>ガバナンスの問題?</h4> <p>この新情報を元に考えると、連盟は、全くの無策や傍観だったわけではなく、告発を受けて、調査検討し、「電子機器の持ち込み禁止」というルールを制定することで一応の決着をつけようとしていたのかもしれません。</p><p>つまり、「疑惑はあるが確証は得られないので直接的な処分はせず、次善策として対局ルールの強化」という、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B3%A5%F3%A5%D7%A5%E9">コンプラ</a>的に見て一般的な対応をしようとしていたのだと思います。</p><p>これにストップをかけたのが渡辺<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CE%B5%B2%A6">竜王</a>だったようです。つまり、渡辺<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CE%B5%B2%A6">竜王</a>は単なる一告発者ではなくて、連盟が進めていた対応策をひっくりかえして、対局者変更を積極的に進めた当事者であるということです。</p><p>私は、連盟の執行部の意思が実質的に不在である状況で、文春の報道という緊急事態が起きたので、第一人者である渡辺<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CE%B5%B2%A6">竜王</a>が超法規的に動いたものと思っていましたが、その認識も間違いであった可能性が高いと思います。つまり、将棋連盟には、表のガバナンスとは別の、裏の非公式の権力があって、それが執行部の対応をくつがえす形で三浦九段の排除を決めた、ということです。</p><p>将棋界は、結局のところ、棋力=発言力で、将棋の強い人が言うことには誰も逆らえないということかもしれません。</p> </div> <div class="section"> <h4>二重権力構造をどのように解体するのか</h4> <p>という、推測の混じった観点から、これをどのようにすべきかについて、私なりに書いてみたいと思います。</p><p>まず、一般的に考えると、これは二重権力構造の問題です。つまり、公式の意思決定機構と別にプライベートな権力があって、それが恣意的に組織の意思決定に介入したということです。こう見るなら、単に、「裏の」権力を解体せよ、排除せよ、という話になります。</p><p>しかし、私は、それだけでは問題は解決しないと思います。</p><p>現代の組織における問題は、専門知識と関連して起こります。これに対して、専門知識の有無を問わない単純な民主主義では衆愚に陥ってしまうからです。</p><p>将棋における不正の有無はその典型で、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%FD%C9%E8">棋譜</a>を読み取る力が違えば、まるで違うものが見えてくるので、その点で勝っている人には、それ相応の発言権を与えるのは自然なことです。</p><p>今回の問題は、プライベートな裏の権力があったことが問題ではなく、その権力が本来持っていた論理を貫徹できなかったことから起こった、と見るべきだと私は考えます。</p> </div> <div class="section"> <h4><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CE%B5%B2%A6">竜王</a>は<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D5%A5%EA%A1%BC%A5%B6">フリーザ</a>でなく<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%AF%A5%EA%A5%EA%A5%F3">クリリン</a></h4> <p>つまり「強い人の言うことが無条件で正しい」という論理を貫徹するとしたら、将棋ソフトがプロ<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%FD%BB%CE">棋士</a>より強くなった時点で、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CE%B5%B2%A6">竜王</a>や名人の立場が変わらないとおかしいと思うのです。<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CE%B5%B2%A6">竜王</a>や名人は、絶対的強者ではなく、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%AF%A5%EA%A5%EA%A5%F3">クリリン</a>や<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E4%A5%E0%A5%C1%A5%E3">ヤムチャ</a>と同じような、「人間の中では最強」の人です。人間の中で相対的に上位に立つ権利はありますが、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D5%A5%EA%A1%BC%A5%B6">フリーザ</a>の前ではザコの一人に過ぎません。</p><p>もし、大山十五世名人が、下位の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%FD%BB%CE">棋士</a>の不正を審判するとしたら、「これはあいつに指せるような手ではない」という発言には絶対性を認めてもいいかもしれません。大山名人は下位の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%FD%BB%CE">棋士</a>が将棋盤の前で行なうことの大半を把握しているからです。</p><p>「極秘会談」に集った<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%FD%BB%CE">棋士</a>が同じ観点のみから判定していたら、「これは三浦さんに指せるような手ではない」という渡辺<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CE%B5%B2%A6">竜王</a>の主張を自信を持って否定していたでしょう。それができなかったのは、そこに自分が把握できてないソフトという存在が関係していたからです。</p><p>私は、渡辺<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CE%B5%B2%A6">竜王</a>が、全くの根拠なく私利私欲で動いたとは思いません。むしろ、明文化されてないけど、将棋界に古くからあった慣習法にのっとって手続きを踏んで動こうとしていたのだと思います。強い人を集めた上で、たとえ一方的であっても論点を主張するという手順を踏んでいます。</p><p>問題は、「将棋が強い人」の集りに、ポナンザや技巧が参加できなかったことです。ソフトの開発者を呼べば違ったかもしれませんが、開発者もソフトの強さの理由を全て把握しているわけではないので、どちらかと言えば<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%AF%A5%EA%A5%EA%A5%F3">クリリン</a>に近いポジションで問題の根本的解決にはなりません。</p><p>つまり、このプライベートな「トップ<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%FD%BB%CE">棋士</a>会談」は、ガバナンスとか<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B3%A5%F3%A5%D7%A5%E9%A5%A4%A5%A2%A5%F3%A5%B9">コンプライアンス</a>とは関係なく、将棋指しの考え方を徹底していれば、集ったその場で「俺たちには、これを左右できる権利はないね。参考意見くらいは言わしてもらうけど」ということに気がついたはずです。</p><p>大山名人は、「機械に将棋なんか教えちゃいけません」と言ったそうですが、もしこの場にいたら、それに気がついたかもしれません。自分が独裁権力をふるうことを正当化していたその根拠を信じてそれをきちんと理解していれば、同じ論理がこの「トップ会談」を解体する根拠になると理解できたでしょう。</p> </div> <div class="section"> <h4>一刻も早く三浦九段の名誉回復を</h4> <p>ということで、私としては、「原点」に戻ることを将棋連盟と渡辺<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CE%B5%B2%A6">竜王</a>に強く求めたいと思います。</p><p>「原点」とは二つの意味があって、一つは、名人や<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CE%B5%B2%A6">竜王</a>の絶対性が失なわれた以上、連盟の運営は人間界のルールで行なうということです。</p><p>「人間界のルール」とは間違いを許容するということです。民主主義でも<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BB%B0%B8%A2%CA%AC%CE%A9">三権分立</a>でも人間界のルールは、人間が間違うことがあるということを前提にできています。</p><p>間違いを許容するということは、間違った時に積極的にそれを修正しなくてはいけないということで、三浦九段の名誉と経済的損失を取り戻すための努力をするということです。具体的には、謝罪や損害の回復は当然として、谷川会長の辞任と外部理事の招聘を含む執行部の改革も必要だと思います。</p><p>もう一つの「原点」は「将棋が強い者の言うことが絶対」という将棋界の常識の原点です。</p><p>繰り返しますが、私はこの常識を否定すべきとは思いません。むしろ、これを大事にして貫徹すべきだと考えています。</p><p>ひょっとして、谷川会長や渡辺<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CE%B5%B2%A6">竜王</a>は、「三浦シロ」を表明する以上は、今度こそ間違いが許されないと思っていて、その確信を持てないので踏み出せないのかもしれません。</p><p>しかし、「将棋が強い者の言うことが絶対」という将棋界の伝統を本当に守るとしたら、ソフトの問題については「絶対的な者はいない」ということになります。</p><p>人間界のルールでは、間違いの有無ではなくて手続きの正当性や透明性が問われます。仮に「三浦シロ」という判断が間違っていても、そこに至るプロセスが妥当であれば許容されるのが人間界のルールです。</p><p>その代わりに、一定の手続きを経て出た結論には、全身全霊従うのが人間界のルールです。それに従うことが同時に将棋界の伝統にもかなうことになると私は思います。<br /> <br /> <br /> </p> </div> <div class="section"> <h4>なぜこの問題に言及するか -- 広義の「フレーム問題」として</h4> <p>最後に、なぜこの問題に繰り返し言及するかと言うと、ひとことで言うと「これはとても他人事とは思えない」からです。</p><p>これは、AIを中心とした技術の進展から、多くの分野で発生する典型的な問題である。私はそのようにとらえています。</p><p>別の言い方で言うと広義の「フレーム問題」と見ています。「フレーム問題」とは<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BF%CD%B9%A9%C3%CE%C7%BD">人工知能</a>の分野での古典的な難問ですが、ここでは将棋を例として説明してみます。</p><p>将棋で「<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B5%CD%BE%AD%B4%FD">詰将棋</a>」や「<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BC%A1%A4%CE%B0%EC%BC%EA">次の一手</a>」と呼ばれる問題があります。ある局面を提示して、次に指すべき手を当てるというゲームです。このゲームではルールは将棋のルールをほぼそのまま踏襲していて、将棋の棋力向上のための練習問題として実力のレベルの応じた数多くの問題が作られています。</p><p>こういう問題をたくさん解いて訓練した人は、間違いなくやる前より棋力が向上していると言えるのですが、ひとつだけ実戦との違いがあります。</p><p>それは、実践の中で、問題を解くことで得たノウハウを応用すべき時はいつかということです。ある局面が、問題として提示される時には、「正解」があることが保証されています。<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B5%CD%BE%AD%B4%FD">詰将棋</a>なら詰める手順が一つだけ存在することが保証されていて、「<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BC%A1%A4%CE%B0%EC%BC%EA">次の一手</a>」なら、状況を劇的に好転する手があることが保証されています。</p><p>それを知っていて考えるのと、そういう前提がなくて、詰みがあるかもしれない無いかもしれない、いい手があるかもしれないないかもしれない、という実戦の中で似たような局面について考えるのでは、全く違います。</p><p>将棋ソフトでも「詰みの発見」はコンピュータにとって簡単な処理なので、早くから<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B5%CD%BE%AD%B4%FD">詰将棋</a>を早解きする専用ソフトが開発されてきましたが、実戦の中ではCPUを100%詰みの発見の処理に割り振っていいとは言えないので、対戦ソフトが詰みを発見する能力は、多くの場合<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B5%CD%BE%AD%B4%FD">詰将棋</a>専用ソフトより劣っていました。</p><p>人間は「ここは詰みがありそうだ」とか「ここ数手は勝敗を左右する場面なので慎重に時間をかけて考えよう」ということが自然にわかる、少なくとも特にその点について努力しなくても、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B5%CD%BE%AD%B4%FD">詰将棋</a>の能力の向上にともなって、「いつ詰めを探すべきか」という判断する能力も自然に向上します。</p><p>しかし、機械にとって、ある「枠組み(=フレーム)」の中で最適な解を求めることと、いつそのフレームを適用すべきか判断することは、難易度が決定的に違います。これが「フレーム問題」のもともとの意味ですが、私はこれと同じ困難が人間や人間社会にもこれから多く発生すると予想して、それを広義の「フレーム問題」と呼びたいと思います。</p><p><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B8%BD%C2%E5%BC%D2">現代社</a>会は、多くのフレームが整備され、フレームの中での最適解は多くの場合検索を使うことで簡単にわかります。たとえば、不正ソフトの問題も司法の枠組みで考えるべき点、統計の枠組みで考えるべき点があって、これらの枠組みでは何が正しいか、どうすべきか、という答は簡単に見つかります。</p><p>しかし、複数の枠組みが重なって適用される時に、どの枠組みを優先して、どの枠組みを除外して考えるべきかという判断は難しく、簡単に一致する答がないこともあります。</p><p>AIを中心とした技術の発展は、平和的に棲み分けているたくさんの枠組みが組合わさった構造を壊して、一からフレームを選択していくことが必要な事態を起こすことが多い。</p><p>今回の不正の問題は、特に処分間際の時間的に切迫した状況においては、その典型的なケースだと思います。情報が不十分な段階から私がこれに繰り返し言及するのは、自分がその時点でどのようなフレームを優先して、どのようなフレームの組み合わせで考えたのかと言うことを記録しておきたいからです。</p><p>後になって、すべてのフレームが確定してから読み直すと、いろいろ不適切なところが見えてくるかもしれませんが、フレームが不確定な状態で自分が何をどのように考えていたのか知る機会はそんなに多くありません。いずれ、自分の身の回りにもそういうフレームの再構築が起こるに違いないと私は思うのですが、その時に多少は参考になるのではないかと考えています。</p> </div> essa 「千田率」によって裁かれる恐怖 hatenablog://entry/10257846132615860697 2016-11-03T00:00:00+09:00 2018-08-30T10:46:38+09:00 (2017/01/03 追記)この記事内の不正の有無に関する見解について私は後日考えを変えました。詳しくは下記の記事を参照ください。 将棋が強い人が正義でいい、本当に強ければ - アンカテ (追記終わり)将棋ソフト問題はいよいよ混迷を深め、渡辺竜王の告発の正当性が疑われる事態となっている。なかでも、不正の疑いの根拠の一つとしてあげ(て後に撤回し)た「一致率」という数値が統計的な根拠の薄いものだという批判が多いようだ。確かに、千田五段の公開したデータは、対象となる手が恣意的に選択されていて、三浦九段の過去の対局や他の棋士のデータとの比較がなく、分散も考慮してないので、統計的にはナンセンスである。… <p>(2017/01/03 <a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C4%C9%B5%AD">追記</a>)</p><p>この記事内の不正の有無に関する見解について私は後日考えを変えました。詳しくは下記の記事を参照ください。</p> <ul> <li><a href="http://d.hatena.ne.jp/essa/20170103/p1">&#x5C06;&#x68CB;&#x304C;&#x5F37;&#x3044;&#x4EBA;&#x304C;&#x6B63;&#x7FA9;&#x3067;&#x3044;&#x3044;&#x3001;&#x672C;&#x5F53;&#x306B;&#x5F37;&#x3051;&#x308C;&#x3070; - &#x30A2;&#x30F3;&#x30AB;&#x30C6;</a></li> </ul><p>(<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C4%C9%B5%AD">追記</a>終わり)</p><p>将棋ソフト問題はいよいよ混迷を深め、渡辺<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CE%B5%B2%A6">竜王</a>の告発の正当性が疑われる事態となっている。なかでも、不正の疑いの根拠の一つとしてあげ(て後に撤回し)た「一致率」という数値が統計的な根拠の薄いものだという批判が多いようだ。</p><p>確かに、千田五段の公開したデータは、対象となる手が恣意的に選択されていて、三浦九段の過去の対局や他の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%FD%BB%CE">棋士</a>のデータとの比較がなく、分散も考慮してないので、統計的にはナンセンスである。「千田率」と揶揄されてしまうのも仕方ないかもしれない。</p><p>しかし、もし三浦対渡辺の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CE%B5%B2%A6%C0%EF">竜王戦</a>が行なわれていたら、多くの将棋ファンがこの数値を目にすることになっただろう。技巧はフリーで公開されており、多くの将棋ファンが日常的に使っている。注目の集まるタイトル戦ともなれば、そこで「一致率」が高いことが話題になるだろう。千田五段が行なった手の選別は、ア<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DE%A5%C1%A5%E5%A5%A2">マチュア</a>でも高段者なら容易にできることで、「それに対して説明できますか?」というのが、渡辺<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CE%B5%B2%A6">竜王</a>が突き付けた問い掛けなのだと思う。</p><p>突き付けられたのは、第一には、谷川会長や羽生三冠を始めとする「極秘のトップ会談」に集った<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%FD%BB%CE">棋士</a>たちである。</p><p>私は、この出席者は全員、少なくとも、対象となった三浦九段の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%FD%C9%E8">棋譜</a>に対してなんらかの異変は感じたのだと思う。この異変に対して「一致率」という数値で疑いをかけられた時に、胸をはって「それは偶然だ」「それはナンセンスだ」と言いきれるのか。</p><p>そして、同じ問い掛けが三浦九段にも行なわれ、「疑われているなら対局はできない」という発言につながったのではないか。最終的な質問の場で、どのようなやりとりがあったのかは、双方の意見が食い違っていて、詳細は確認できないが、渡辺九段の告発の真の意図は「ファンはあなたの将棋を技巧と比較して観戦していますよ。それで何を言われてもいいのですか?」ということなのだと思う。</p><p>渡辺<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CE%B5%B2%A6">竜王</a>は、将棋を「興業」として見る意識が強いのだと思う。この点では、他の人と違いがあるかもしれない。「三浦の千田率高いw」というファンからの目線に対して説明するのは、言われた<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%FD%BB%CE">棋士</a>本人の責任ではなく、将棋界全体の責任だという意識が他の関係者より濃いのだと思う。</p><p>もしここで、「<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%FD%BB%CE">棋士</a>をなめるな!」と怒る人が誰か一人でもいて、「そういうこと言う奴が言たら俺が責任を持って反論する」と説明責任を引き<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:受け">受け</a>てくれるなら、渡辺<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CE%B5%B2%A6">竜王</a>は安心して、告発を取り下げただろう。それが三浦九段本人であれば一番いいが、そうでなくてもトップ<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%FD%BB%CE">棋士</a>の誰かがそう言えばよかった。</p><p>「千田率」は三浦九段のクロの確証とはならないが、将棋界全体へのファンからの不信を致命的に高めるには充分な数値なのである。</p><p>これは、三浦九段のクロシロとは関係なく、告発の時点で確定している事実で、渡辺<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CE%B5%B2%A6">竜王</a>の踏んだ手順は充分なものだと思う。もし、これが疑惑の4局と同様、高いままで維持されれば当然話題になるし、突然低くなれば、そのギャップが話題になる。単に週刊誌のスキャンダルだけであれば、「馬鹿げている」と黙殺しておけばいいが、ここに「千田率」が加わった時にどうするのか。「統計的には無効です」と専門家が言えば騒動はおさまるだろうか。</p><p>渡辺が三浦を「千田率」で裁いたのではなく、将棋界が「千田率」で裁かれることを読んだ渡辺が裁かれる側に立って行動したのだ。</p><br /> <p>ここで私が残念に思うことが、将棋というゲームの独特の面白さが、この誤解が拡大する要因の一つになっていることである。</p><p>将棋は、「完全情報非ゼロ和ゲーム」という種別に属していて、これが意味するのは将棋の神様はこの世で一番将棋を楽しめない人であるということだ。将棋の勝敗はルールを決めて盤の前に両者が着席した瞬間に決まっているだが、神様にはその勝敗が見えても人間には見えない。充分なCPUがあればコンピュータにも見えるが、地球上の全てのCPUを足しても見えない。地球上の全てのCPUどころか、地球上の全てのシリコンを掘り出して全部CPUにしても見えない。計算量が多すぎるのだ。</p><p>それによって将棋は、単純で決定的なルールでできているのに、先が見えない中で「思考の省略」を競うゲームになる。「思考の省略」の中には対戦相手の思考方法をシミュレートして、それによって思考を省略することも含まれる。それによって、将棋は複雑なゲームになり、盤内盤外からさまざまな要素を抽出して選択することを競うゲームになる。この「思考の省略」の中にはさまざまな個性があらわれてくるし、ゲームの性質も局面ごとに変化していく。</p><p>ある時には、単純なパズルの早解き競争になるし、ある時はマ<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%BD%A5%F3">ラソン</a>のように正確な読みをどちらが長時間続けるかの勝負になるし、ある時は受験のように事前の勉強量の勝負である時は、相手の意図を読みあいハッタリをかけるポーカーのようなゲームになる。しかも、そういう要素が複雑にからみあい、一手指すごとにゲームの種類が変化していく。</p><p>そんな複雑なゲームでは、<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:初心者">初心者</a>には何もわからないのかと言うと、言わば<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D5%A5%E9%A5%AF%A5%BF%A5%EB">フラクタル</a>な側面もあって、<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:初心者">初心者</a>には<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:初心者">初心者</a>なりの楽しみ方があって、中級者にはそれなりの楽しみがある。<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:初心者">初心者</a>がプロの対局を見てもちょっと解説があるとわかった気になって楽しめる。</p><p>そして、おそらく、上に行けば行くほど、より複雑な地形が見えてくるのだ。<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%FD%C9%E8">棋譜</a>から「思考の省略」という地形を深く読み取る中に顔写真のように個性が浮かびあがってくるのだろう。</p><p>だから、トップ<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%FD%BB%CE">棋士</a>が「これは三浦九段本人の手には思えない」と言った時、彼らの中には確信というより、「<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%FD%C9%E8">棋譜</a>の中にひとつの事実を目撃した」という感触があるのだが、それをA級の棋力の無い人に説明するのが難しいのだと思う。</p><p>それは単に強い人や突然強くなった人の手とは違うのだと思う。集まった<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%FD%BB%CE">棋士</a>は<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:みんな">みんな</a>羽生さんの人外の手に何度となくやられた人であり、その羽生さんも今は連盟会長の谷川さんに一瞬で切り殺された経験が何度もある。「これは人間には読めない素晴しすぎる手だから人間に指せるものではない」とは簡単には言えない人たちである。将棋を一番よく知っていて、なおかつ自分が将棋を知らないことを経験からよく知っている人たちだ。</p><p>つまり、羽生谷川という人間の限界を、一番近くで自分の人生の最も切実な課題として見てきた人たちであり、そういう人たちが揃って「重い沈黙」に沈んだということの意味は重い。</p><p>私から見ると、これは疑惑というより、「目撃者」が7人いたという事件に見える。ただ、丸<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BB%B3%B6%E5">山九</a>段のように現場にいたけど何も見なかったという人がいて、そもそも、三浦九段も「目撃者」になれるレベルの人なので、どのようにうまくやっても<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%FD%C9%E8">棋譜</a>が残る以上、現場を<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%FD%C9%E8">棋譜</a>の中で「目撃」する人がいることはわかるはずだが、とも思う。</p><p>将棋の中には、棋力という解像度によって全く違うものが見えてくるのに、棋力が違う人の言うことも断片的には意味がわかる。だから、疑惑の将棋の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%FD%C9%E8">棋譜</a>を見て、彼らが何を考えたのか、わかる部分とわからない部分があって、それが複雑にからみあってくるので、一度不信の目で見ると、とめどもなく不信が高まるのだと思う。</p><p>それが将棋の面白さと同型なのである。</p> essa 将棋のソフト指しに見る逆転の構図 hatenablog://entry/10257846132615860725 2016-10-29T00:00:00+09:00 2018-08-30T10:46:41+09:00 (2017/01/03 追記)この記事内の不正の有無に関する見解について私は後日考えを変えました。詳しくは下記の記事を参照ください。 将棋が強い人が正義でいい、本当に強ければ - アンカテ (追記終わり) 最近、将棋観戦してて、解説者が変に弱気になっていると感じることがよくあります。昔から、解説の棋士は、対局者より上位の人でも「これが正解の手で、はたして彼はこれを見つけられるか」というような解説はしませんでした。全身全霊をかけて盤の前で真剣に対局している人には、解説者は一定の敬意を持っていました。解説者は、聞き手の人に冗談を言ったり視聴者向けに基本の手筋を説明したりして、番組を成立させる片手間… <p>(2017/01/03 <a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C4%C9%B5%AD">追記</a>)</p><p>この記事内の不正の有無に関する見解について私は後日考えを変えました。詳しくは下記の記事を参照ください。</p> <ul> <li><a href="http://d.hatena.ne.jp/essa/20170103/p1">&#x5C06;&#x68CB;&#x304C;&#x5F37;&#x3044;&#x4EBA;&#x304C;&#x6B63;&#x7FA9;&#x3067;&#x3044;&#x3044;&#x3001;&#x672C;&#x5F53;&#x306B;&#x5F37;&#x3051;&#x308C;&#x3070; - &#x30A2;&#x30F3;&#x30AB;&#x30C6;</a></li> </ul><p>(<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C4%C9%B5%AD">追記</a>終わり)</p><br /> <p>最近、将棋観戦してて、解説者が変に弱気になっていると感じることがよくあります。</p><p>昔から、解説の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%FD%BB%CE">棋士</a>は、対局者より上位の人でも「これが正解の手で、はたして彼はこれを見つけられるか」というような解説はしませんでした。全身全霊をかけて盤の前で<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:真剣">真剣</a>に対局している人には、解説者は一定の敬意を持っていました。解説者は、聞き手の人に冗談を言ったり視聴者向けに基本の手筋を説明したりして、番組を成立させる片手間で読んでいるのですから、対局者より多少棋力が上でも、「正解を知っているのは対局者二人」というスタンスで解説してました。</p><p>だから、「ここではAかBしかない」と言って、指されたのがCであっても、別に解説者がうろたえたり謝ったりすることはなくて、平然と「ああここでCですか。いや、これはいい手ですね」と言っていました。</p><p>しかし、今は、「ここではAかBしかない」と言いたいけど言わずに微妙にごまかしているような解説が多い。特に<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%CB%A5%B3%A5%CB%A5%B3%C6%B0%B2%E8">ニコニコ動画</a>だと「&#12316;としか思えないですが、どうですかね」とか言ってコメントを見ている。あるいは控室の検討の様子を気にしている。</p><p>おそらく、ソフトの検討結果を気にしているのだと思います。</p><p>「ここではAかBしかない」と断言してしまって、ソフトがCを表示していたら困りますからね。気持ちはわかります。</p><p>これを見てて思ったのですが、昔は、対局者>解説者>視聴者だったのですが、今は、この力関係が逆転しています。ソフトを自由に見れる視聴者が一番上で、控室の検討やコメントを通じて、部分的、間接的にソフトを参照できる解説者がその次、そして、一切ソフトと遮断されている対局者が一番下です。</p><p>今は、対局者<解説者<視聴者なのです。</p><p>解説者は、(ソフト情報が断片的に伝わってくる状況にある)自分の読みが対局者に劣ることは心配してなくて、ソフトべったりの視聴者から見て的はずれなことを言ってないかを気にしているのです。</p><p>「<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C0%AD%C1%B1%C0%E2">性善説</a>に基くあいまいなルールが時代遅れ」というのはちょっと違いますね。今までは対局者が最強だったので保護する必要がなかった。タイトル戦で<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:真剣">真剣</a>に対局している人に助言できる人なんて世界中のどこにもいなったのです。</p><p>必要なルールとは、アマの大会でプロが助言しない、プロの対局でも下位の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%FD%BB%CE">棋士</a>の対戦では、上位の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%FD%BB%CE">棋士</a>が助言してはいけないというようなルールです。これは<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C0%AD%C1%B1%C0%E2">性善説</a>で充分だったのです。「名人が助言したら対局が成立しません。でもそんなことあえて言わなくても名人はわかってますよね」ということです。</p><p>プロがアマの対局中に助言したらアマの大会が成立しません。いわば、プロは猛獣でその猛獣を檻の中に閉じこめて、弱いアマを保護する必要があった。プロでも下位の人は上位の人、名人や<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CE%B5%B2%A6">竜王</a>という猛獣から保護する必要があった。</p><p>名人を囲う檻は、名人という猛獣が外で暴れないための檻だったのですが、今はそれが、名人という壊れ物を外界から保護する檻になっているのです。</p><p>対局者が不正をするしないではなくて、第<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BB%B0%BC%D4">三者</a>がソフトの読みを無理矢理に教えることで対局を壊してしまうことができるのです。</p><p><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CE%B5%B2%A6%C0%EF">竜王戦</a>の会場に<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B3%B9%C0%EB%BC%D6">街宣車</a>でおしかけて「6三歩成」とか「3二飛成」とか大音量のスピーカーでソフトの読んだ手を怒鳴るとか。<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B3%B9%C0%EB%BC%D6">街宣車</a>では騒音による<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B6%C8%CC%B3%CB%B8%B3%B2">業務妨害</a>になりますが、ドローンで敷地外から<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B7%C7%BC%A8">掲示</a>したらどうなんでしょうね。</p><p>たぶん、<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:悪意">悪意</a>を持って手を見せようとすること自体が<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B6%C8%CC%B3%CB%B8%B3%B2">業務妨害</a>になると思いますが、こういう種類の妨害は<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CE%B5%B2%A6">竜王</a>が最強の時代にはあり得なかったことです。</p><p>渡辺<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CE%B5%B2%A6">竜王</a>は、「<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CE%B5%B2%A6">竜王</a>という権威が保護すべき最弱の存在であってそれでもなおかつ大事なものである」ということを誰よりも理解し<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:受け">受け</a>いれるリアリストなのだと思います。</p><p>最弱の権威にとっては、疑いが確定してなくてグレーであっても致命的なものとして対応しなくてはいけない、ということです。</p><p>これは、「炭鉱のカナリヤ」としてとらえるべき問題だと思います。</p><p>ソフトの評価関数は相対的なもので、精密で正確にはなっても、名人や<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CE%B5%B2%A6">竜王</a>の代わりにはならない。手の意味や価値はやはり相対性の中にはないと私は思うのです。</p><p>ヴァイラルメディアも、そのうちゴシップ記事だけではなく、客観性やファクトを含んだ評価関数を手に入れて信頼性の高い記事をピックアップし自動生成するようになると思います。社会を形作っているあらゆる権威が、これから似たような形で相対性の中に埋もれていくでしょう。</p><p>相対性が正確であるというだけで、人を排除していいものなのか。でも、人が運営するメディアは、間違いや偏りや思いこみだらけで、それが数値として誰の目にも見えるようになります。</p><p>その両面をリアリズムでとらえないと、何か大事なものが絶滅してしまいます。そして、その変わり目は急激に起こるのです。</p><p>将棋の評価関数は、人間よりはるかに劣っていたし、今もそうです。でも、将棋ソフトは人間よりはるかに深く読めるので、人間のレベルでなくてもいいのです。ちょっとした評価関数の改良が結果を飛躍的に改善するのです。<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DC%A5%D6%A5%B5%A5%C3%A5%D7">ボブサップ</a>はチャンピオンになれなかったけど、多少マシな寝技のできるセーム<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B7%A5%E5%A5%EB%A5%C8">シュルト</a>は強すぎてK1をつまらなくしてしまいました。両者のテクニックの違いのようなものです。</p><p>人間の頭脳とコンピュータを体格差にしたら、サップや<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B7%A5%E5%A5%EB%A5%C8">シュルト</a>なんてもんではなくて、負けても勝負になってるだけで、プロ<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%FD%BB%CE">棋士</a>というのは本当に凄いものだと思います。</p><p>ただ、体格のいい人が、どの程度、ボクシングテクニックや寝技を見につけたら最強になるのか、その境目はなかなかわからないものです。 将棋ソフトも、数百台の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%AF%A5%E9%A5%B9%A5%BF">クラスタ</a>ならプロより強いと言われて、二年でそれより強い<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B9%A5%DE%A5%DB">スマホ</a>のアプリが出てきました。ボナンザ&#12316;<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/GPS">GPS</a><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%AF%A5%E9%A5%B9%A5%BF">クラスタ</a>&#12316;技巧という技術の進展は急激ですが連続的、漸進的なものでした。</p><p><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%CB%A5%B3%A5%CB%A5%B3%C6%B0%B2%E8">ニコニコ動画</a>の将棋中継画面は、将来の何かを見事に象徴しています。古い権威が相対性の評価値を示す<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D0%A1%BC">バー</a>で囲われていて、我々はその<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D0%A1%BC">バー</a>の上がり具合で枠の中にいる人を「すごい」と言っているのです。</p><p>枠の中にいる人は、その評価値を単なる余興としか思ってなくて、実際、ある時までそれは冗談にしかならない、とてもいい加減な数値なのですが、ある日突然、その数値が正確になって上下関係が逆転してしまうのです。評価値だけを見て枠の中を見ない人と、評価値を無視して枠の中だけを見る人がおたがいを馬鹿にする不毛な論争をし続けていて、両方を見るリアリストがほとんどいない。</p> essa 渡辺竜王に私心はない! hatenablog://entry/10257846132615860757 2016-10-22T00:00:00+09:00 2018-08-30T10:46:43+09:00 (2017/01/03 追記)この記事内の不正の有無に関する見解について私は後日考えを変えました。詳しくは下記の記事を参照ください。 将棋が強い人が正義でいい、本当に強ければ - アンカテ (追記終わり) 将棋のソフト指し疑惑の問題、混迷を深めていて、何が真実かわからなくなっています。しかし、簡単にわかることがひとつ見過されているような気がするので、書いてみます。それは、渡辺竜王がもし私利私欲で行動していたとしたら、彼にとっての最善の策は、三浦九段との竜王戦をそのまま戦うことだったということです。渡辺竜王が三浦九段のクロを確信していた可能性は高いと思うのですが、そうだとしたら、竜王戦の最中かそ… <p>(2017/01/03 <a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C4%C9%B5%AD">追記</a>)</p><p>この記事内の不正の有無に関する見解について私は後日考えを変えました。詳しくは下記の記事を参照ください。</p> <ul> <li><a href="http://d.hatena.ne.jp/essa/20170103/p1">&#x5C06;&#x68CB;&#x304C;&#x5F37;&#x3044;&#x4EBA;&#x304C;&#x6B63;&#x7FA9;&#x3067;&#x3044;&#x3044;&#x3001;&#x672C;&#x5F53;&#x306B;&#x5F37;&#x3051;&#x308C;&#x3070; - &#x30A2;&#x30F3;&#x30AB;&#x30C6;</a></li> </ul><p>(<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C4%C9%B5%AD">追記</a>終わり)</p><br /> <p>将棋のソフト指し疑惑の問題、混迷を深めていて、何が真実かわからなくなっています。しかし、簡単にわかることがひとつ見過されている<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:ような気がする">ような気がする</a>ので、書いてみます。</p><p>それは、渡辺<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CE%B5%B2%A6">竜王</a>がもし私利私欲で行動していたとしたら、彼にとっての最善の策は、三浦九段との<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CE%B5%B2%A6%C0%EF">竜王戦</a>をそのまま戦うことだったということです。</p><p>渡辺<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CE%B5%B2%A6">竜王</a>が三浦九段のクロを確信していた可能性は高いと思うのですが、そうだとしたら、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CE%B5%B2%A6%C0%EF">竜王戦</a>の最中かその後に三浦九段のソフト指しが露見する可能性も高いと読んでいたでしょう。</p><p>もし三浦九段が<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CE%B5%B2%A6%C0%EF">竜王戦</a>でソフト指しをしたら、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BD%E7%B0%CC%C0%EF">順位戦</a>の対局と同様に負けてタイトルを奪取されてしまうかもしれませんが、その対局の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%FD%C9%E8">棋譜</a>は注目を集めて多くの人に研究されるわけですから、高位<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%FD%BB%CE">棋士</a>も将棋ソフトの専門家もその内容に疑問を持つでしょう。</p><p>プロ<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%FD%BB%CE">棋士</a>のソフト指しをどうやって見抜くのかは難しい問題ですが、タイトル戦での<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:真剣">真剣</a>勝負の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%FD%C9%E8">棋譜</a>が最低四局揃って、考慮時間、離席の状況、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%B6%C1%DB%C0%EF">感想戦</a>でのやりとりも全部詳細に報道されるので、今までよりは解析が進むはずです。</p><p>渡辺<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CE%B5%B2%A6">竜王</a>が自分で動くより、タイトル戦でソフト指しをさせて、それを多くの人の目に晒すことが渡辺<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CE%B5%B2%A6">竜王</a>にとっての最善の策です。それで直接的な証拠が出てくればいいし、出てこなくても、ソフト指しができないようなルールが制定されることは決まっていたので、誰にもソフト指しができないようになれば、真の実力者は誰かということは自然にわかってきます。</p><p>私は、渡辺<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CE%B5%B2%A6">竜王</a>はそうすべきだったと思いますが、それは野次馬だから言えることです。タイトル戦の中でのソフト指し疑惑が出てくれば、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CE%B5%B2%A6%C0%EF">竜王戦</a>どころか将棋界そのものの存続にかかわる問題になります。そのリスクをかけて自分だけの利益を選ぶという選択はできなかったのでしょう。</p><p>逆に、渡辺<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CE%B5%B2%A6">竜王</a>はシロと思っていたけど、疑惑の噂を利用して謀略をしかけたという可能性はどうでしょうか?</p><p>シロで複数対局の実力勝負であれば、渡辺<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CE%B5%B2%A6">竜王</a>が勝つ可能性が高いと思います。<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:もちろん">もちろん</a>勝負に絶対はないのですが、それは長年将棋界で戦っている彼には当然のことですから、それはリスクとは言えない。謀略がバレた時のリスクと比較すれば、とても割に合う賭けとは言えません。仮に、最近の三浦九段が急速に力をつけていて、「これでは今回は負けるかもしれない」と考えたとしても、羽生さんや森内さんなどの実力者と過去に何度も対戦しているわけですから、その時以上に「これはどんな手を使っても対戦を避けなければ」と思える相手ではないでしょう。</p><p>そもそも<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%FD%BB%CE">棋士</a>というのは、負けることへの耐性はできているはずです。羽生さんだって四回に一回は負けています。衆目の面前でバサっと切られて言い訳のしようもなく負けるというみじめな経験を、どの<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%FD%BB%CE">棋士</a>も何度もしてきて今があるわけです。一般人が「負けたくない」という思う感覚で考えてはいけないと思います。</p><p>だから、三浦九段のシロクロと関係なく、渡辺<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CE%B5%B2%A6">竜王</a>が純粋に将棋界のことを第一に考えて行動したという点は間違いないと私は思います。</p><p>ただ、彼の行動が全部正しかったかどうかと言えば、いくつか疑問があります。報道が錯綜していて事実関係がわかりませんが、彼が暴走しているという面もあるように感じます。いくらタイトル保持者でも一プレイヤーが運営と一体になって動いたという点と、外部に客観的に示せる証拠をつかむ前に行動したということは問題があるかもしれません。</p><p>緊急時ということで、守るべき基本的な原則をこえる選択をしたわけですが、これは、将棋に関係なく多くの人が自分のこととして考えるべき問題だと思います。</p><p>AIは多くの人の仕事を奪うと言われていますが、それ以前に技術の急速な進展は、人間の社会における力関係をひっくりかえします。</p><p>将棋界は、今回のソフト疑惑騒動が起こる前から深刻な危機にあると私は思うのですが、この危機感の感じ方の違いが今回の問題の背景にあると思うのです。</p><p>「ボルトより軽自動車や原付の方が早いけど、ボルトに対する尊敬はゆるがない」などと言いますが、将棋ではちょっと意味が違います。プロ<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%FD%BB%CE">棋士</a>と観客の力関係が逆転してしまうからです。今や、将棋の観戦は、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B9%A5%DE%A5%DB">スマホ</a>の技巧を片手にして、どちらが「正解」の手を指すかを見守るだけのものになりつつあります。ドラマ性や神秘性が救いようもなく失われていきます。</p><p>単純に携帯の持ち込み禁止を決めればいいものではなくて、今後、プロ<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B4%FD%BB%CE">棋士</a>という職業にどういう意味があるのか、根本から問い直されている時代です。これについてわがこととして日頃から誰よりも<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:真剣">真剣</a>に考えていたのが渡辺<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CE%B5%B2%A6">竜王</a>で、将棋連盟の幹部がその危機感を<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:共有">共有</a>できてないことが、渡辺<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CE%B5%B2%A6">竜王</a>の暴走につながってのではないか、私はそのように想像しています。</p><p>そして、「本当の危機の時、何が絶対守るべき原則で、どこまで踏みこえていいものか」という問いに、今後、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BE%AD%B4%FD%B4%FD%BB%CE">将棋棋士</a>だけでなくて、多くの人が直面すると思うのです。</p><p>事実を直視して正しい危機感を持てるかどうかは、能力や立場に関係なくて個人差が大きいようです。誰もが渡辺<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CE%B5%B2%A6">竜王</a>の立場に立たされる可能性はあります。そうなった時、「上が<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:バカ">バカ</a>だから俺は自分だけを守るよ」と言っていいものか、ということを私はずっと考えています。</p> essa 改憲の本当の争点は「誠意」という問題ではないだろうか? hatenablog://entry/10257846132615860786 2016-07-10T00:00:00+09:00 2018-08-30T10:46:46+09:00 自民党は、日本が何か自分の意にそわないものを押しつけられたと思っていて、それを変えることで「美しい日本を取り戻す」と言っているが、押しつけられたものが何かわかってなくて議論が混迷しているのではないかと思う。本来、自民党が目指している改憲とは「紛争が生じた場合は双方誠意をもって協議する」の一条のみを憲法とすることだと思う。日本人の意識として、これ以上のことをモメ事が起こる前に決めるというのは、相手に対する積極的な不信を表明したことになる。それは間違ってなくて、本来、憲法とは国民が政府を信頼できないから、「こういうことをしないと約束するなら、今の所は一時的にそちらにまかせる」ということで、政府と国… <p><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BC%AB%CC%B1%C5%DE">自民党</a>は、日本が何か自分の意にそわないものを押しつけられたと思っていて、それを変えることで「<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:美しい">美しい</a>日本を取り戻す」と言っているが、押しつけられたものが何かわかってなくて議論が混迷しているのではないかと思う。</p><p>本来、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BC%AB%CC%B1%C5%DE">自民党</a>が目指している<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B2%FE%B7%FB">改憲</a>とは「紛争が生じた場合は双方<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:誠意">誠意</a>をもって協議する」の一条のみを<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B7%FB%CB%A1">憲法</a>とすることだと思う。</p><p>日本人の意識として、これ以上のことをモメ事が起こる前に決めるというのは、相手に対する積極的な不信を表明したことになる。それは間違ってなくて、本来、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B7%FB%CB%A1">憲法</a>とは国民が政府を信頼できないから、「こういうことをしないと約束するなら、今の所は一時的にそちらにまかせる」ということで、政府と国民が一体感を持つための文章ではない。</p><p>それは<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/GHQ">GHQ</a>が陰謀や<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:悪意">悪意</a>でそうしたのではなくて、単純に<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B7%FB%CB%A1">憲法</a>ってそういうもんだから、そうなっているだけである。</p><p>しかし、平均的な日本人にとって、そのように話が通じない相手と共存するのは、相当なむちゃぶりなのだ。共存というのは相手の「<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:誠意">誠意</a>」を信頼してはじめて成り立つもので、契約する=相手の<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:誠意">誠意</a>を信頼しない=宣戦布告くらいの感覚がある。</p><p>だから、そのような異物が国家と国民の間に立ちふさがっているので、国家の正常な運営に支障がある、ということではないだろうか。</p><p>一方で<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B8%EE%B7%FB%C7%C9">護憲派</a>は、9条を「外国との紛争が生じた場合は双方<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:誠意">誠意</a>をもって協議する」と解釈して、これをやめるということは、「<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:誠意">誠意</a>」を持たずに外国と接する=宣戦布告となると反対しているのではないだろうか。</p><p>私には、どちらも、価値観の違う相手と価値観が違うまま何とか共存する、という観点が欠けているように見える。</p><p>価値観の違う国と共存しなくてはいけない。価値観の違う政府と共存しなくてはいけない。価値観の違う隣人と共存しなくてはいけない。<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B7%FB%CB%A1">憲法</a>や人権はそういうためのもので、ものすごく不自然なものである。</p><p>人間にとって自然とは、「<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:誠意">誠意</a>」の通じない相手には暴力で対抗することである。その自然を抑えつけてできているものだから、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B7%FB%CB%A1">憲法</a>も人権も<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:美しい">美しい</a>ものではないし、血なまぐさい歴史から生まれてきたものである。これがないと結局果てしない殺しあいになっちゃうから、それよりはましだよね<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:美しくない">美しくない</a>けど、程度のものである。</p><p>だから、「<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B2%FE%B7%FB">改憲</a>で<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:美しい">美しい</a>日本を取り戻す」というのは、私から見ると<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B2%FE%B7%FB">改憲</a>というより廃憲である。政府と国民が一体となるならそれは「<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B7%FB%CB%A1">憲法</a>」と呼ぶべきではない。「日本は<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B7%FB%CB%A1">憲法</a>を廃止して、それに頼らない国になります」と言うべきだ。</p><p>ただ、「紛争が生じた場合は双方<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:誠意">誠意</a>をもって協議する」という条文は同時に、「考えられる紛争の具体的なケースを事前に列挙することは禁止します」という意味でもある。やはり、日本は言霊の国で、口にしてしまったことが実際に起きた場合、それを口にした人に責任がある、という感覚を<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:共有">共有</a>する人は多いだろう。「家賃を踏み倒したら」と書くことは「おまえは家賃を踏み倒すだろう」という宣言だということだ。</p><p>つまり、「<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B7%FB%CB%A1">憲法</a>」を廃止してそれに代わる新しい国の仕組みを議論するということは、つまり将来日本に起こる悪いことを列挙することになるので、「日本は<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:美しくない">美しくない</a>国だ」と言うのに等しいので、そこには踏みこまないように事を進めようとするのである。</p><p>そして、「<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:誠意">誠意</a>」だけでは実際に全てのトラブルを収拾できないことは日本人もわかっていて、これを補完するために「顔役」というシステムがある。「<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:誠意">誠意</a>」を持って話しあっても解決できない時、双方の「顔役」が出てくる。そして、「顔役」は階層的に上のレベルの<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%B9">エス</a>カレーション先があって、深刻なトラブルほど上まで行くが、あるレベルに達すると「まあ、おまえたちの気持ちもわかるがここはひとつ俺の顔を立ててがまんしてくれや」となるわけである。</p><p>「顔役」は<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:美しくない">美しくない</a>モメ事を飲みこんで収拾する役割で、裁判官とか権力者とは性質が違う役割である。日本人が所属にこだわるのは、「<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:誠意">誠意</a>」が機能しない時の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%B9">エス</a>カレーション先を確認しているわけで、それを持たない人間は信頼されない。</p><p>だから、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B8%C4%BF%CD%BC%E7%B5%C1">個人主義</a>の世の中は、この「顔役」という<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%B9">エス</a>カレーション先が見えない状態であり、それは日本人にとっては「万人の万人に対する闘争」の世の中に感じられてしまうのである。</p><p>おそらく、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%BC%AB%CC%B1%C5%DE">自民党</a>が目指す社会とは、「<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:誠意">誠意</a>」と「顔役」による秩序であり、それは、国家と国民の対立関係を前提として、そこに「契約」で秩序を作るという「<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B7%FB%CB%A1">憲法</a>」の考え方より、日本人の感覚によく合っているのだと思う。</p> essa github という公的なインフラを使うために必要なこと hatenablog://entry/10257846132615860812 2016-07-09T00:00:00+09:00 2018-08-30T10:46:47+09:00 馬しか見たことない人に、これと自動車を両方見せて「どっちが欲しい」と聞いたら、どちらを選ぶだろうか?理性的な人だったら、自動車が平らな道しか走れないことを一番気にするだろう。ボストンダイナミクスの四足自走機械は、馬が走れる道ならほとんどそのまま進める。道が舗装されてなかったら、自動車で行ける範囲は本当に限られている。どうみても、四足自走機械の方がずっと実用性が高い。「道を舗装して、トンネルや橋を作って道を平らにすればいいんですよ」なんて言ったら、「たかが乗り物のためにどうしてそんな手間をかけなきゃいけない?」とあきれてしまうだろう。私は、今、github を中心に仕事が回る職場で働いている。実… <p><iframe width="420" height="315" src="http://www.youtube.com/embed/W1czBcnX1Ww?wmode=transparent" frameborder="0" allowfullscreen></iframe></p><p>馬しか見たことない人に、これと自動車を両方見せて「どっちが欲しい」と聞いたら、どちらを選ぶだろうか?</p><p>理性的な人だったら、自動車が平らな道しか走れないことを一番気にするだろう。</p><p>ボストン<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C0%A5%A4%A5%CA%A5%DF%A5%AF%A5%B9">ダイナミクス</a>の四足自走機械は、馬が走れる道ならほとんどそのまま進める。道が舗装されてなかったら、自動車で行ける範囲は本当に限られている。どうみても、四足自走機械の方がずっと実用性が高い。</p><p>「道を舗装して、トンネルや橋を作って道を平らにすればいいんですよ」なんて言ったら、「たかが乗り物のためにどうしてそんな手間をかけなきゃいけない?」とあきれてしまうだろう。</p><p>私は、今、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/github">github</a> を中心に仕事が回る職場で働いている。実際使ってみて、この <a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/github">github</a> というものは非常に便利だと思うのだが、過去の自分にこれを勧めてみたらどういう反応するか想像してみると、これと同じ反応になると思う。</p><p>私が働きはじめたのは<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%EF%A1%BC%A5%D7%A5%ED">ワープロ</a>が普及する前で、最初の5年くらいは、書類を全部<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:手書き">手書き</a>していた。その後の技術変化には全部、それなりに適応してきたけど、最初の刷り込みは大きい。</p><p><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/github">github</a> は便利だけど、組織の構造というか指揮命令系統を変えないとこれは使えない。過去の自分は「たかが<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%EF%A1%BC%A5%D7%A5%ED">ワープロ</a>のためにどうしてそんな手間をかける必要がある?」と言うだろう。</p><p><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%EF%A1%BC%A5%D7%A5%ED">ワープロ</a>で文書を作成し、そのファイルをメールで送信したりファイルサーバに置くのは、紙でやってたことの延長だ。同じことだけど随分便利になっている。昔の自分は、その方が自然で使いやすいと言うだろう。</p><p>四足自走機械が、馬より安くて燃費がよければ、同じように、人は喜んでそれを使っただろう。道を平らにしてまで車輪自走機械に乗り換える必要性なんか感じなかったはずだ。</p><p><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%EF%A1%BC%A5%D7%A5%ED">ワープロ</a>やメールなどの初期のITは、全部紙でやってたことのシミュレーションだ。同じことをやってもコンピュータ上のシミュレーションでやるといろいろ便利になる。最初にそれをやるのは正しいし、それは大きな進歩だ。</p><p>しかし、技術の自然な利用法という観点で見ると、エンジンやモーターのように動力源が回転するのであれば、タイヤのように回転する部品で推進力にする方が自然だと思う。機構も単純になるし、部品も少なくなる。</p><p>コンピュータやネットの自然な利用法は <a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/github">github</a> だ。蟻塚に無数の蟻がたかって蟻塚が成長するように、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%EA%A5%DD%A5%B8%A5%C8%A5%EA">リポジトリ</a>に人が集まって、自然にソフトウエアが成長するイメージ。</p><p>工場や物流センターを作るとしたら、自社の敷地内部の設計より立地が大事だと思う。インターからの距離が重要だ。公道である高速道路網とどのようにつながっているかが重要だ。</p><p>それと同じように、ある程度の規模のアプリケーションを作るとしたら、内部の設計より、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/github">github</a> との距離が重要だ。今、アプリケーションを書くなら、自分で書くよりはるかに多くのオープンソフトウエアを使うことになる。高速道路網に依存した物流センターを作るようなもので、公的なインフラとの連結が重要なのだ。</p><p>そして、幹線でなく支線との連結の方がより重要だ。</p><p>幹線となるような著名なオープンソフトウエアは、大なり小なり特異な事例であって、普通でないリーダーが率いていたり、特殊な企業が特殊なビジネスモデルのために金を出している。そういうものと普通の会社の業務用アプリケーションとはあまり関係ない。</p><p>しかし、多くの幹線ソフトウエアの回りには、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D7%A5%E9%A5%B0%A5%A4%A5%F3">プラグイン</a>という支線となるソフトウエアがあって、本来は、こういうものに注目すべきだ。大半の支線のソフトウエアは普通の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D7%A5%ED%A5%B0%A5%E9%A5%DE">プログラマ</a>が数人で開発している。それが何千何万と集って <a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/github">github</a> の中にインフラを形成している。</p><p>9割はうまく開発されているが、バグだらけだったり、おかしな方向に進化したり、突然消えるプロジェクトもある。そういうダメなソフトを避けたり、問題を自力でカ<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D0%A1%BC">バー</a>するのが、内製する<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D7%A5%ED%A5%B0%A5%E9%A5%DE">プログラマ</a>の腕の見せ所で、そういうノウハウを得るためには、自分たちが <a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/github">github</a> を日常的に使っていることが非常に有利になる。というか、そういう経験がない人は、何をどう使っていいのかわからないだろう。</p><p>四足自走機械と車輪式自走機械を比較検討するとしたら、両者のスペックでなく、道路網の整備状況を見なくてはならない。道路が無い所にトラックだけ入れても何もできない。</p><p>それと同じように、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/github">github</a> を使うということは、指揮命令系統がない仕事の仕方を導入しないといけない。それをしないと、既に構築されている巨大な公的インフラが見えてこない。</p><p>指揮命令系統がない仕事を構成しているのはプルリク<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%B9">エス</a>トだが、それを担保しているのは「いつ何どき誰がフォークしてもよい」という暗黙のルールだ。たとえば、<a href="https://github.com/rails/rails">Ruby on Rails</a>の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%EA%A5%DD%A5%B8%A5%C8%A5%EA">リポジトリ</a>には、今日現在、12953のフォークがある(右上のForkという欄)。この12953人の誰もが「今日から俺の<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%EA%A5%DD%A5%B8%A5%C8%A5%EA">リポジトリ</a>が<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/Ruby%20On%20Rails">Ruby On Rails</a>の本家である」と言ってもよいのだ。もし、それに同意する人が本家より多ければ、その<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%EA%A5%DD%A5%B8%A5%C8%A5%EA">リポジトリ</a>が本家になる。</p><p>12953人のほとんどは勉強のためにフォークを作成していると思われるが、ごく稀に、自分たちが必要な特別の <a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/Ruby%20On%20Rails">Ruby On Rails</a> が必要なので、フォークしてそれを維持している人がいる。</p><p>もし、本家が迷走して、おかしな方向に行ったら、そのどれかが本家をのっとるだろう。</p><p>そういう分裂はほとんど起こらないが、それは、本家がまともな運営を強いられているからだ。幹線が幹線の行くべきでない方向に進むと、そこから別の幹線が生えてきて、最初の幹線をしぼませてしまう仕組みが、 <a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/github">github</a> にはある。この方法は、特定の会社が「我々が責任を持って正しい方向に幹線を進めますので信頼してついてきてください」と言うより、ずっとうまくいくのだ。他の会社が幹線を作れないと、その幹線はたいてい、利益誘導のために、違う所へ行ってしまう。よくても寄り道をする。</p><p>誰でも幹線をフォークでできることが幹線を正しい方向に維持して、それがあるので、多くの人が支線をつなげ回りに物流センターがたくさんできる。安心して支線や自社設備を作れるので、スピードが速い。</p><p>指揮命令系統がないことが信頼性を担保しているというこの仕組みが、インターネットにとって自然なのだ。エンジンで走るならタイヤで駆動力を得るが自然であるのと同じように自然なのだ。</p><p>それが自然であることの証拠をもう一つあげるなら <a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/Twitter">Twitter</a> だ。</p><p><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/Twitter">Twitter</a>にも、指揮命令系統がないことの強さがある。ただし、その強さは、今の所、破壊力としてあらわれることの方が多い。<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/Brexit">Brexit</a>をはじめとする、昨今の社会的大事件は、全部、指揮命令系統のない運動が、指揮命令系統のある組織を打ち負かしたことから起きた。そうなるのは当然で、力学に近い絶対的な法則だ。インターネットでは何事もシェアすることが自然なのだ。摩擦が少ないだけ、力が無駄なく伝わる。</p><p><a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%EF%A1%BC%A5%D7%A5%ED">ワープロ</a>が<a class="okeyword" href="g:mohican:keyword:手書き">手書き</a>書類をよくシミュレートしたように、コンピュータは紙をよくシミュレートする。だが、一つだけ重要な機能が抜けている。ネット上の情報は「なかったこと」にはできない。組織というものは全て、いざということに紙を燃やすことで「なかったこと」にすることに依存している。そこだけが抜けているので、本来は、コンピュータで紙をシミュレートするべきではなかったのだと思う。</p><p>「なかったことにする」というのは、めったに使われないが、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%B3%CB%CA%BC%B4%EF">核兵器</a>やフォークと同じように抑止力として社会が回るために重要な機能だったのだ。</p><p>ボストン<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C0%A5%A4%A5%CA%A5%DF%A5%AF%A5%B9">ダイナミクス</a>の四足自走機械は、災害現場などのごく特殊な場面のみで使うべきもので、他は全部車輪自走機械を使うほうがいい。</p><p>同じように、コンピュータとインターネットは、情報をシェアするために使うべきで、紙のシミュレートをしていいのは、ごくごく特殊な状況のみなのだ。</p><p>たとえ、そのために、指揮命令系統という長年人が慣れ親しんだものを捨てなくてはならないとしても。</p><p>大量生産の時代には、本来それに向いてない製品を扱う業種も、自動車や家電の会社を真似ることを強いられた。</p><p>これからは、本来 <a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/github">github</a> に向いてない製品を扱う業種も、<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/github">github</a> のやり方を強いられる。<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/Twitter">Twitter</a> のスピードに勝てるのは <a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/github">github</a> だけだからだ。そして、ソフトウエアでないものを<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E6%A5%CB%A5%C3%A5%C8%A5%C6%A5%B9%A5%C8">ユニットテスト</a>したりプルリク<a class="keyword" href="http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%B9">エス</a>トするためにAIが使われていくと思う。</p><br /> <br /> <br /> <p>当ブログの関連記事</p> <ul> <li><a href="http://d.hatena.ne.jp/essa/20111105/p1">&#x30D3;&#x30C3;&#x30C8;&#x3068;&#x30A2;&#x30C8;&#x30E0;&#x306E;&#x306F;&#x3056;&#x307E;&#x3067; - &#x30A2;&#x30F3;&#x30AB;&#x30C6;</a></li> </ul><p><br /> <a href="http://eot.g.hatena.ne.jp/keyword/%e3%83%a1%e3%83%83%e3%82%bb%e3%83%bc%e3%82%b8">&#x4E00;&#x65E5;&#x4E00;&#x30C1;&#x30D9;&#x30C3;&#x30C8;&#x30EA;&#x30F3;&#x30AF;</a>→<a href="http://www.stereogum.com/1885349/china-bans-lady-gaga/news/">China Bans Lady Gaga - Stereogum</a></p><p><a href="http://static.stereogum.com/uploads/2016/06/Dalai-Lama-Lady-Gaga-640x468.jpg" class="http-image" target="_blank"><img src="http://static.stereogum.com/uploads/2016/06/Dalai-Lama-Lady-Gaga-640x468.jpg" class="http-image" alt="http://static.stereogum.com/uploads/2016/06/Dalai-Lama-Lady-Gaga-640x468.jpg"></a></p> essa