深い絶望を検知するそのソフトは赤木論文に反応するだろうか?

「インターネット上の犯罪予告を検知できるソフトウエア」という話には、何か根本的な違和感を感じるのだけど、強いてそれを言葉にすれば、ここで求められているのは「謀議」を検知するソフトなのか「絶望」を検知するソフトなのかということ。

はっきりと凶行を決意した人間が「人を殺せるナイフはどこの店で買えますか」とか掲示板で聞いているのを検知するソフトなら意味を持つ。困難であるし道義的な疑問はあるが、技術的にはかろうじて意味のある仕様が書けると思う。

それは「謀議」を検出するソフトということになるが、それでは加藤智大のケースには無意味だ。

加藤が掲示板に吐露していたのは、自暴自棄な気持ちであり絶望である。加藤は掲示板で情報を求めていたわけではなくて、救いを求めていた。加藤は見つかりたくなかったわけではなくて見つけてほしかったのだ。

自分は救いを得られることがないと絶望した人間を救うには、彼を「検知」するより、彼が救われるような場なり手段なりを用意した方がいい。そうすれば、加藤は自分から名乗り出てくるだろう。

加藤を救うことは困難である。それはよくわかる。でも困難だからまず加藤を「検知」するソフトを作れという話なのだろうか。

それができたとして、「検知」した加藤をどうするのか。加藤を救うつもりなのか、加藤を拘束するつもりなのか。救うことが困難だから「検知」するのであるから、拘束するつもりなのだろう。

つまり、深い絶望を吐露した人間を検知して拘束しようという話としか思えない。

そんなソフトがもし本当にできたとしたら、まず、この書き込みをテストデータとして入力してみたい。

これだけ深い絶望を表現している書き込みに反応しなかったら、そのソフトは役立たずだ。

そして、そういうふうに深く社会に絶望しそれを表現している人間を拘束すべし、というのが社会の総意であるなら、赤木智弘も拘束すべきだろう。

街を歩けば、ホームレスの格好をした赤木氏が私をひっぱたく機会を狙っている。ネカフェに逃げこめば、ネカフェ難民の中で赤木が私を狙っている。たまらず会社に出社すれば、部下や出入り業者の中に赤木がいる。家に帰れば息子に扮した赤木が私を睨む。新聞を開けば、写真の中から赤木が私を狙っている。電車に乗れば野放図な若者の一群が全部実体は赤木でこちらを伺っている。それらの赤木は全員「お前が丸山眞男なのだ。戦争が起こってお前をひっぱける日まで私はお前を許さない」と言っている。どこに行ってもそこに赤木がいて、赤木から逃げる手段はない。

そうすれば、私もこんな悪夢に悩まされないですむ。ついでにサイレントテロとか言ってる連中も根絶やしにして欲しいものだ。

一日一チベットリンク朝日記事 6月11日 チベットの憤り脈々