「泥のように」-- ヴァイラルマーケティングの歴史に残るプレゼン

日本電気、およびNECパーソナルプロダクツは4月1日、「Mudコンピューティング」と称する全く新しいコンセプトに基づいた、ノートPC「Lavie Mud」シリーズを発表した。

エアーとかクラウドとか、最近のコンピュータ業界の流行り言葉は、スカスカの実態の無いものばかりだ。ユーザが本当に求めているものは『泥臭さ』であり『泥縄』だ。わが社の『Mudコンピューティング』は、コンシューマーとエンタープライズの両方の分野で世界を変える製品となるだろう」発表の席に同席した同社の西垣元社長は自信を持ってそう語った。

「Mudコンピューティング」の詳細は別掲記事を譲るが、記者は、「泥のように」という新製品のキーとなるコンセプトを爆発的に広めたこのキャンペーンの裏側を取材した。

「大丈夫、俺が泥をかぶるよ」この画期的な新製品をいかにわかりやすく広めるか悩んでいたマーケティングチームの会議で、西垣元社長はそう言い、このキャンペーンのアイディアを自ら発案したと言う。

「『馬車馬のように』でなく『泥のように』ですか。それでは社長の国語力までが疑いの目で見られてしまいます」「『泥のように働け』とは骨が抜けたような感じでだらだら働くことですか、等とつまらない横槍を入れる奴がきっと出てきます」「お願いだから今年はやめてください、と人事から強烈なクレームが来てますが」「自社のみならず業界まるごと殺す気ですか」そう言って、社員たちは口を揃えて反対した。

「馬鹿者!、アップルやグーグルを見てみろ。トップが過去の成功体験に埋没するのみでビジョンを自分の言葉で語れないような企業に明日は無い。CEOがコンセプトメーキングで強力なリーダーシップを発揮すると同時に技術や現場の状況やユーザの反応といったものをよくわかっているかどうか、そこが問われている。CEO自らが会社のビジョンを体現してなければならないんだよ」と西垣元社長はそう言って強引にこの案を押し進めた。

「ヴァイラルの浸透力でも、トップに立つ人が企業そのものであるという意味でも、あの人はジョブズに匹敵、いやそれ以上だと思います。すごい人とは思っていましたが、まさかここまでとは」キャペンーンの破壊的な威力を見てある社員はしみじみとそう語った。

組織のあり方、組織の中で働く個人のあり方の根本的な見直しが進んでいる世界の潮流にまっこうから挑戦した形となったこの「Mudコンピューティング」キャンペーン。これによって、日本のITがどういう世界で何を目指しているのかが明確になったことは間違いないだろう。

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