「信用して下さい」系メディアと「検証して下さい」系メディア
史上最大の「悪政の自由」を享受した権力システムの崩壊というエントリに次のブクマコメントがありました。
本題と外れますが、はてなブックマークには非公開ブックマークがあるので、はてなの中の人が情報操作しようとすれば、ある程度は可能ではないですか?
そこで、ちょっとスクリプトを書いて、人気エントリの中の非公開ブックマークの割合を調べて見ました。
3日分しか調査してなくてサンプル数は足りないと思いますが、非公開の割合は平均して20%くらい、最大でも35%くらいです。
このブログの人気エントリーに同じスクリプトを走らせて、非公開の率の高い順に並べるとこうなります。
http://b.hatena.ne.jp/entrylist?url=http%3A%2F%2Fd.hatena.ne.jp%2Fessa%2F&sort=count
- public total
- 4570
- private total
- 861
- private ratio
- 15.85
やはり、35%を超えることはなく、だいたい20%以下になるようです。
現在のはてなブックマークで、非公開の部分を利用して運営者がランキングを操作しようとした場合に、操作できる範囲は多く見ても1〜2割で、それ以上に大きな操作を行なうと、このような調査をした時に突出して非公開の割合が高いエントリーになってしまうと思います。
私は、この調査用のスクリプト(使い捨ての小さなプログラム)を1時間ほどかけて書きましたが、慣れている人なら5分から10分くらいで書けるでしょう。これを毎日走らせたり、改造して非公開の絶対数等のランキングを取れば、また違う面から調査することができます。
Web上の目立つメディアは、常にこのような形で、機械+人力の検証を受ける可能性があるわけです。
もし、こういう調査をすることで、メジャーなサイトから何か不正な操作の痕跡を発見できれば、それをブログで報告することで、大きな注目を集めることができるでしょう。
これを一般化して考えると、「注目を集めるサイトの『編集方針』はそれ自体がコンテンツである」ということになるだろう。グーグル八分問題に関心が集まるのも、同様のメカニズムではないかと思う。
そして、「編集方針」がアテンションを集めるのは、大多数のユーザとその「編集方針」が乖離している場合であり、その乖離は、潜在的にまだ生まれぬ競合サイトへのアテンションでもある。「思想的偏向がないオーマイニュース」「より開かれたWikipedia」「八分がない検索エンジン」が常に出番をうかがっている。元のサイトが乖離を持ったままアテンションを集めたら、乖離の無い同種のサイトが立ち上がり、アテンションを奪い取る可能性が高くなる。
(中略)このように、アテンションエコノミーにおいては、「編集方針」に対する潜在的な圧力が存在する。それは、透明度、公開性、ユーザと乖離しないこと、を要求する圧力である。
従来のメディアにおいては「編集方針」の正当性を担保するものは、メディア側の良心と専門性しかなかったわけです。そして、それを疑う者に対して納得させることは難しい、言わば「信用して下さい」系メディアです。実際、不祥事を起こしても事実関係とそれに対応した再発防止策を報告することが無くて、「もうしませんからとにかく信用して下さい」と言うだけのメディアが多い。上記の人気エントリの中にもそういうネタがたくさんあります。
ソーシャルブックマークのような「分解可能」なメディアは、「信用して下さい」と言う必要はなくて、プロセスを開示して「検証して下さい」と言っているのだと思います。
もちろん、「検証して下さい」系メディアと言えども(はてブのプライベートブックマークのように)非公開で検証できない部分は残ります。「分解」できない部分をどこにどのように持つかという「味付け」によって、それぞれのメディアの個性が競われるでしょう。そこにはまだまだ創意工夫の余地があると思います。
ただ大きな流れとして、「信用して下さい」系メディアから「検証して下さい」系メディアに、権威が移行しつつあるのは間違いありません。そしてそれと同期して、その背後にある権力のシステムが動揺している、ということではないでしょうか。
たとえば、これなんか、最近はてブに関連ネタがたくさん出て来ていますが、なぜ大手マスコミが報道しないか不思議です。
ネットでも従来メディアでも、こういう不可解な「編集方針」が見過ごされることはなくなっています。アテンションが「編集方針」を「分解」していき、「分解」できない特異点を見つけると、そこにはさらにアテンションが集まるわけです。
アテンションを主体として別の言い方をすれば、「僕たちはURLの無いものはもう信じない」ということでしょうか。
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