グーグル論への反応には奇妙な空白域がある

梅田さんはブックマーカーとしても大きな影響力があって、梅田さんがブクマした記事は、普段より多くの人に閲覧されているようだ。自然とブックマークや言及も多くなる。

しかし、時に、それが広がらないこともある。つまり、梅田さんには注目していただくことができたけど、他の人には何故かあまりウケない記事も存在する。そういう記事の傾向を調べると、面白いことが浮かぶあがってくる。

ベースとなるのは次の一覧。

ここから本日現在、ブックマーク数が10以下のものを抜き出してみた。(「圏外」時代の記事でコメントに関連しないものはアンカテのエントリにしています)

この中で、はてなや梅田さん御自身に言及したものを除く。梅田さんは、ある程度網羅的にそういう記事を集めているので、そこに関連する興味が、梅田さんと他の人の間で違うことは納得できる。

そうすると、この中の半分くらいの記事に共通するテーマがあることに気がつく。

これらは全て、「グーグル(的なもの)をひとつの権力のあり方としてとらえ思想哲学的な課題として論じた」記事である。そう言えば、「英語で読むITトレンド」時代に紹介していただいた2つの記事も、ほぼ同じテーマに関するものである。

つまり、このテーマは、梅田さんの強力な後押しをいただいているにも関わらず、あまり人気が出ないテーマなのである。「Google八分」というキャッチーな言葉を捻り出しても、その背後にある意図まではなかなか伝わらない。

もちろん、思想哲学が好きな人は多くない。それに、上記リストのエントリーはやはりブクマ数が多いエントリーよりは不出来だし、何が言いたいのかよくわからないものが多い。

でも、このテーマを扱うと自分の期待より反応が少なくなるという実感は確かにある。私はいろいろな切り口でグーグルを論じているけど、この観点から論じるとそこだけガクンとアクセスが落ちるというか、空白域に突っ込んでしまうような印象がある。

私は、このことは、次のエントリーで論じた「単一のアーキテクチャ層」と「コミュニティ層」という問題ではないかと思っている。

これは、水道やコンセントが好きな人やその反対がいないのと同じで、私たちは、自分たちの世界全体を支える「単一のアーキテクチャ層」を好きになったり嫌いになったりすることが難しいのです。

これは主観的にはずっと感じていたことだ。上記の分析は、ちょっと強引な所もあるが、その傍証にはなっていると思う。

私が「Google八分」という言葉を言い出した時と比べたら、グーグルという会社はずっと一般的に知られるようになった。これだけポピュラーな存在になれば、ぜんぜん的外れなものや全く無関係なものも含め、もっと幅広い観点から注目されてもいいと思うのだけど、そうはなってないような気がする。

「自分たちの世界全体を支える単一のアーキテクチャ層」への無関心は、グーグルに限らず時代的な傾向だと思うが、経済とか軍事とかの、昔から存在している「アーキテクチャ層」には、少数ながら関心を持ち続けている専門家がいる。その専門家の回りにはセミプロレベルのアマチュアがいて、一般への回路を作っている。

別の例で言えば、自民党政治について、私は下世話な夕刊紙的関心から高尚な政治哲学的な論点まで幅広く興味を持っている。その中で気ままにいろいろなポジションから論じて、同じようにハズしたり時に(いつも?)わけのわからん話をしたりするが、そういうテーマへの反応はなだらかな曲線として感じる。注目を集めるような観点と少数の人しか反応しない観点の間にギャップはない。

それと比較して、グーグル論への反応には奇妙な空白域がある。グーグルはコミュニティ層のテーマとしてのみ注目を集め、それに隠れるように「単一のアーキテクチャ層」になりつつある。これはすごく危険なことだと思う。

(補足)

その記事の中にリンクされている、「三上さん、これくらいは押さえておきなさい」と言われたような気がする(実際のessaさんは決してそんな無粋なことは言いませんが)、すでに今年の1月に記された三つのエントリーを、読み進むうちに、グーグルの「怖さ=凄さ」(中山)の技術的かつビジネス的基盤を、素人ながら、少し理解できたような気がした。

私は、三上さんのブログで授業の案内のような記事が出るたびに「ああ、こういう先生の授業が受けられるとは、三上さんとこの学生さんたちがうらやましいなあ」とぼんやり思っているくらいなので、「これくらいは押さえておきなさい」なんて、とてもおそれ多くて言えません。

それはともかくこういう反応をいただけることは非常に珍しいことで嬉しかったのですが、この scanning every ATOM on the earth という記事も、ファーストブックマーカーが、id:umedamochio さんであるにも関わらず、昨日書いた他の記事と比べてブクマ数の伸びは低かったです。

それを見ながら「やっぱりな」と思って、このエントリはそれをきっかけに思いつきました。

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