80年代にバブルに窒息して死にそうに苦しかった私を救ったのはsmalltalk

404 Blog Not Found:若者殺しの時代からの逃走と闘争を読んで、自分にとってとても苦しい時代だった80年代の記憶がよみがえる。

それは個人史的に苦しかった時代でもあるけど、バブルというのは私にとってどうしても理解できない時代精神で、近い所も遠い所も回りじゅうぜんぶこれに踊っている状況というのは本当にどうしていいかわからないくらい苦しかった。あの頃、「社会」というものが全くわからなくて、自分と「社会」の接点は、どうやっても見つけられなかった。仕事や経済もわからないし、思想とか哲学もそういう自分の悩みを解決してくれるものとは到底思えなかった。

そういう本当に辛い時代に、唯一救いになったのが、smalltalkの青本。学生時代に勉強したことが全てナンセンスに思えて、転身してプログラマーになったけど、そこも全く予想とは違う灰色の世界で、しょうがなくて仕事をサボって会社の図書室にいて発見した技術書。当時の仕事には何の接点もなかったけど、見栄のために置いてあったんだろうね。

完全に技術書なんだけど、私が本当の意味で思想書として読んだ最初の本である。ものごとをきちんと考えると世界が違って見えてきて、それが救いになることを教えてくれた本。

窒息しかけてた私が、80年代に息継ぎできたのは、この本を読んだ時だけだったと思う。今考えると、その当時の私はsmalltalk以外のこの世界全てを呪っていて、これが無かったらテロリストか詐欺師になっていたのではないかと思う。この本を読んではじめて私は、ものごとをきちんと考えるとたまにはいいことがあることを知り、多少はものごとをきちんと考えるようになった。

ものごとをきちんと考えるというのは、80年代後半には、非常に軽蔑されることで、そういう人間は肩身が狭くて居場所がなかった。そういう指向の人間は世界に不要なんだと思いこんでいた。

smalltalkというプログラミング言語とその解説書がなかったら、私は今のようにものを考える人間にはならなくて、このブログは存在しなかったと思う。そして、このブログの代わりに何かもっとはるかに邪悪なものを私は産み出していたのではないだろうか。だって、私は他に行き場がなかったのだから。