権力だってふつうの人が運営してるからバカもする
ホワイトハウス主催の晩餐会に、モロに反ブッシュの人が呼ばれちゃったというお話。
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知らない人は、ストリームの町山さんの解説から入るとわかりやすいと思います。
これは、いろいろな意味が読みとれる事件ですが、私としては、「ホワイトハウスにもバカがいるもんだな」と思いました。
コルベアという人は、もとから完全にアッチブッシュで売ってるコメディアンだそうですが、反骨精神というか皮肉たっぷりの「ホメ殺し」系なので、ちょっと知性の足りない人が聞くと、ギャグをまともに取ってブッシュ支持に思えてしまうそうです。それで、ホワイトハウスのスタッフに、そういう皮肉を読みとれない人がいたみたいで、何と、そういう問題人物を晩餐会に呼んでしまって、あろうことかブッシュ大統領ご本人の目の前でスピーチをさせてしまった。
そこで、平気で皮肉たっぷりの「ホメ殺し」のスピーチをしてしまう所が、この人のすごい所で、「空気が読めない」とかそういう次元じゃないですね。
それはともかく、この人を呼んでしまったホワイトハウスのスタッフの人は大目玉だったろうと言うか、そういうレベルの不祥事ではすまないかもしれませんが、まあ、どこにも馬鹿がいるもんです。
そう思って、空中キャンプ:「イェルサレムのアイヒマン」を読むを読むと考えさせられてしまいます。
ヨーロッパ中のユダヤ人を追いまわし、600万人を殺すという、「人間の理解を超える苦難」(p164)の中心にいた者が、いったいどういう人間なのか。おそらく、常識では考えられない精神の持ち主であろうと、誰もが考えるはずである。きっと、どんなおそろしいできごとにも、眉ひとつ動かさないような、尋常ならざる冷徹さを持っているのではないか。ところが、法廷に立ったアイヒマンの言動は、その予想をおおきく裏切るものだった。
ただのおっさんだったのである。
気がちいさく、日和見主義で、都合のわるいことはすべて他人になすりつける。すぐにばれるうそばかりつき、どこかで聞いたような決まり文句ばかりを連呼し、頭のてっぺんからつま先まで役人体質につかった、まことに情けない、ただのおっさんであった。これには世界中がこけた。
「これには世界中がこけた」 --- そりゃそうだろうと思います。
「権力の中枢」などと言うと、マトリックスの黒服グラサン軍団のような、冷徹でものすごく頭が切れて、ズボンにはシワ一つ無くて、何ひとつ間違いがないような人ばっかりいるイメージがあります。実際そういう人もいくらかはいるのかもしれませんが、人間、そんなに違いがない。結局、大半は普通の人なんですね。
しかし、コルベアを呼んじゃったのは笑い事ですが、「イェルサレムのアイヒマン」は笑い事ではすまない。
権力を過大評価することは、権力の悪を自分から遠ざけることで、自分は人の良い庶民でふつうの人で金も権力もないから「イェルサレムのアイヒマン」のような悪とは無縁であると思うことにつながります。無縁であると思えば、他人事として気楽に批判できますが、それはフィクションであることを「イェルサレムのアイヒマン」は示している。
コルベア事件の馬鹿さ加減は、それを再確認させるものであるように、私には思えました。