デンマーク風刺画問題

デンマークのある新聞がイスラム教の預言者ムハンマドの風刺画を掲載し、イスラム教諸国から抗議を受けている問題について、小林恭子さんが継続的にフォローされている。下記のカテゴリから、該当の記事が読める。

この問題の深刻さを理解するには、まず、イスラム教ではムハンマドの肖像を書くこと自体が、冒涜になることを理解しなくてはならない。

小林恭子の英国メディア・ウオッチ : デンマークに続き、ノルウエーでもムハンマドの漫画出版


イスラム教では、預言者ムハンマドの肖像を描くことは神にたいする冒涜だとされる。たとえ尊敬の念をこめての肖像でも、偶像崇拝に結びつく可能性があるため、許されないこと、とされている。

つまり、イスラム教信者の方にとっては、根本的な宗教的感情に関わる問題なのである。

一方で、西欧諸国から見ると、これは「表現の自由」に関わる問題であり、やはり、簡単には引くことのできない問題である。この点では、デンマーク政府の次の対応が注目される。

小林恭子の英国メディア・ウオッチ : デンマーク風刺画その後


デンマークのラスムスセン首相は、ユランズ・ポステン紙が謝罪声明を出したことを歓迎したが、デンマーク政府としての謝罪はしなかった。「デンマーク政府は自国の新聞のために謝罪をすることはできない。アラブ諸国にもそう説明した。独立メディアに対し、政府は編集上介入できない」。

つまり、謝罪するということは、政府が表現の自由をないがしろにしたことになるという考え方である。謝罪は責任と不可分であり、責任が無い所での謝罪はあり得ない。謝罪するということは、「問題をコントロールできるのにしなかった」という表明になり、政府による「表現の自由」への介入の意思があるという意味になってしまう。

また、背景には移民問題からの鬱積した感情もあるようである。

小林恭子の英国メディア・ウオッチ : 風刺画掲載問題で、仏紙編集長が首に


これによると、デンマーク政府は、外国人嫌いが高まる政策を実行してきており、批判が起きていたようだ。例えば、事実上、亡命者の受け入れを停止するような政策を実行している、という。


65歳の女王は1972年から現在の地位にあり、政治的力はないが、政治問題に関してコメントを出す。/過去3年の間で、デンマークは移民規制策を打ち出しており、反移民のDanish People's Partyは、移民が妻(あるいは夫)をデンマーク内に呼び寄せる手続きを難しくするような法案が通るようにしたという。/女王は、自伝の中で、不満を抱く若いイスラム教徒の国民が宗教に避難場所を見つけても無理はない、としている。デンマーク社会との融合をさらに進めるために、イスラム教徒たちにデンマーク語を学ぶことを奨励するべきだ、として、「隣同士に住むだけで満足するのでなく、共に住むようにするべきだ」と述べている。

どう転ぶにせよ、歴史の転換点となる事件なのかもしれない。