デジタルトルーマンショー

ある日、知らない人からSkypeコールがあって、出てみたらレイザーラモン住谷だった。

後ろで観客の笑い声がする。テレビ番組のスタジオからかけているようだった。

  • 「どうもお〜、レイザーラモン住谷です。ビックリしたでしょう」
  • 「ええ、まあ」
  • 「こちらは、○○テレビのデジタルトルーマンショーという番組です。ご存知ですかあ」
  • 「いや知りません。すみません。」
  • 「やはり知らない。当然知らない。フ〜」

また、観客の笑い声がした。

  • 「この番組はですね。ターゲットになった方に、嘘のホームページをお見せして反応を見る番組です」
  • 「はあ」
  • 「ご存知なかったでしょうが、あなたはターゲットに選ばれていました」
  • 「ということは、このパソコンに何か仕掛けを?」
  • 「飲み込みが早い(フ〜)。しかし、パソコンではありません。隠しカメラもありません」
  • 「はあ」
  • 「プロバイダー様にご協力を願って、あなたのアクセス回線にちょっと仕掛けをしまして」
  • 「はあ、なるほど透過PROXYかなんかですか」
  • 「さすがハッカー(フ〜)。そうです。アクセス回線の入口でコンテンツのすりかえを」

「フ〜」というたびに、いちいち観客が笑う。不快なので、以下、「フ〜」と笑い声は省略する。

しかし、事情が飲み込めて来るにしたがい、怒りが増してきた。不法侵入をしたりこちらの所有物に触るわけではないが、俺のアクセス回線に勝手に細工をするとは、そんなことが許されるのか。

  • 「つまりですね。あなたは、時々、嘘のページをご覧になってたわけです。知らないうちに」
  • 「はあ」
  • 「最近、おかしなニュースが多いと思いませんでした?」
  • 「まあ」
  • 若貴兄弟が不仲になった話とか」
  • 「まあ、そうですが。…ええっ、ひょっとしてそれは」

頭に来てたので、できるだけ無愛想にしてやろうと思っていたが、思わず声が高くなってしまった。

  • 「そうなんです(フ(略))。あれは、こちらが流した偽のニュース」
  • 「だって、2ちゃんねるでも随分スレが立ってましたけど」
  • 「そのスレもこちらが用意した偽コンテンツなんです」
  • 「(絶句)」
  • 「今、こちらのスタジオには、兄弟お二人がゲストで来ていらっしゃいますが、仲良く笑ってらっしゃいますよ」
  • 「(絶句)」

まったく手のこんだことをする。しかし、いったい何のために

  • 「いったい何のために」
  • 「あなたの反応を見て楽しむためです。実に見事な反応でしたよ」
  • 「反応って、いったい何を?隠しカメラとかですか?」
  • 「いや、すりかえたのもネットだけ。反応を見るのもネットだけ」
  • 「ネットだけって、何を?…もしかして、そういうこと!」
  • 「そうです。あなたのブログを見るのです」
  • 「(絶句)」
  • あの記事は評判でした。あれを放送した日の視聴率は」

ショックで頭がグラグラして奴の言うことが耳に入らなくなってきた。

  • 「偽ニュースを信じて一生懸命記事を書かれたことがおかしくて」
  • 「ということは、ブログのアクセスが増えたのもそれが原因」
  • 「もちろんそうですよ。そうでなけりゃ誰があんなつまらないブログを…いや、失礼」
  • 「じゃ、アクセスログやコメントも」
  • 「はい。一部修正してます。というか一部というかかなりと言うか」

他に何をすりかえられているのか?

  • 「他に何をやったんですか?ああっ、もしかして」
  • 「気がつかれましたか?」
  • モヒカン族!」
  • 「そうです。モヒカン族(フ(略))」
  • 「あれもネタだったんだ! mohican.g.hatena.ne.jpなんてドメインは存在しないんだ!」
  • 「ええ、まあ、存在しないというか、こちらの用意したLANの中にしか存在しないと言うか」
  • 「あれも全部ニセモノなんですか?」
  • 「はい、こちらがご用意させていただいたものです。著名なブロガーの方にはご協力をお願いしていますが」
  • 「(絶句)」
  • 「あなた、これもまにうけて、日本社会の変革がどうのこうのとか」

ここでスタジオ内が爆笑した。あの記事がよほどおかしかったらしい。俺は、絶句した。

  • 「(絶句)」
  • 「と言うかですね。そもそもあなた『はてな』って会社に関するニュース見て疑問を感じませんでしたか?」
  • 「(絶句)」
  • 「合宿で新しいサービスをリリースとか、社内ミーティングの音声を公開するとか、1週間でGoogle Mapsに対応とか、あり得ないと思いませんでしたか?」
  • 「(小声で)それはまあ変だなとは思いましたが、…あれも全部ネタ?」
  • 「いやそういうことでもないんです。というか、実際はもっとビックリされるようなことなんですが」
  • 「?」
  • 「こんな会社が日本に存在すると思いますか?」
  • 「?!」
  • 「日本という国にこんな会社が存在し得るとお考えですか」
  • 「?!!!!!つまり、はてな自体がネタ」
  • 「そうなんです。*.hatena.ne.jp 全部がこちらでご用意させていただいたコンテンツでして」

また、スタジオ内が大爆笑して、頭がグラグラして恥ずかしさで気が遠くなった。俺はまんまとのせられて書きまくっていたのか。

かなり時間がたって我に帰ると、レイザーラモン住谷が俺を慰める声が聞こえてきた。

  • 「そんなに落ち込むことはありません。すっかり騙されて信じてしまったのはあなただけではないんです。実はデジタルトルーマンショーでは、他にも何人かのターゲットの方にご協力願ってまして、他にもあなたのように『はてな』の実在を信じて一生懸命それについてのブログを書いてる方がいらっしゃいまして、もしよろしかったら、これからスタジオに来ていただいてですねえ。ぜひ、ご一緒にそれらのブログにコメントをいただけたらと思いまして…」