「桜時計が福岡大サーバのアドレスを既定値として入れていた」は間違いでした。

福岡大学NTPサーバの混雑解消にご協力をという記事で、私は以下のように書きましたが、これは間違いでした。


なお、利用者が増えたのは、桜時計やルータがここのサーバのアドレスを既定値として入れていた為で

これについて桜時計の作者の宇野さんからコメントをいただきました。


そのようなバージョンの桜時計をリリースしたことはありません。桜時計の内蔵リストに載っているサーバは、私が管理者に問い合わせて載せる許可をいただいた海外のサーバのみです。

自分でも確認してみましたが、桜時計の既定値には、問題となっている福岡大のサーバのアドレスは含まれていませんでした。

未確認で間違った記述をしてしまい、見ている方に誤解を与え、宇野さんに大変にご迷惑をおかけしたことをお詫びします。もし、上記記事をリンクされている方がいたら、本記事をリンクの上、その記述が誤りであり、その責任はessaにあることをお知らせしていただくようお願いします。

申し訳ありませんでした。

つきまして、このようなミスが発生した理由を、自分なりに検証してみたいと思います。

問題点

今回の記事について、私は次の三点のミスをしました。

  1. 自分の思いこみで、未確認の情報をブログに記述したこと
  2. コメントで指摘を受けたのにすぐに確認、訂正をしなかったこと
  3. 元の文章全体として、問題の原因に対する考察が甘かったこと

特に、ミスをしたことそのものより、その点を指摘したコメントに対して、鈍い反応しかできなかったことが問題だと思っています。

またこの記事は、自分が多少の専門知識があって一般の方にそれを説明(解説)するというスタンスで書いていますので、そういう趣旨の記事に間違いがあったということは、問題が大きいと自分では感じています。

経緯

この記事を投稿するまでの経緯は、以下の通りです。

  1. mu antena で2ちゃんねるのスレを知る(大きな問題だと思ったが、よく読む時間がなかった)
  2. slashdot.jp で関連スレが立ったことを知る
  3. slashdot.jp のスレならば、関連情報がリンクされるだろうと考え、とりあえずここをリンクするだけの1行記事を書こうとする
  4. 書きはじめて、「ただスラドをリンクするだけじゃ、技術的情報に興味がない人はスルーしてしまうな。興味を引くよう、何か中身を足そうかな」と迷う
  5. 思いつきで文章を書きはじめる
  6. 書いているうちに熱中して、時間がなくなり、スレや関連情報を読む時間がなくなる
  7. 自分としては、推敲が不十分であるが、内容の基本的アイディア、着眼点(個別の問題を構造的な問題とつなげ、ある程度、一般の人にわかりやすく知らせる)はよいと思ったので、見切り発車で投稿

つまり、当初は、単純な告知だけで書こうと思って、それに思いつきのアイディアを盛りこんでいるうちに、焦点がぼやけ、事実関係の確認がおろそかになってしまいました。また、スラドのスレも2ちゃんねるのスレも、部分的にしか読まずに投稿しました。

指摘を受けた後ですが、「後で確認して修正しよう」という気持ちはありましたが、返答先の名前を間違えていることからもわかるように、緊張感もなく問題点が把握できていませんでした。

宇野さんからの二度目のコメントを読んで、この間違いの為に「桜時計のせいで福岡大が困っている」と解釈されかねない記述になっていることにようやく気がつき、それから修正や事実確認の行動を起こしました。

桜時計の既定値に福岡大のサーバがあると思った理由

このサーバのホスト名には見覚えがあったのですが、私自身、長い間、桜時計を愛用しています(そういう意味では、恩を仇で返すとはこのことですが)ので、そのサーバ名を桜時計の画面で見たのだろうと思いこんでしまいました。

また、一般的にこういうアクセス集中のような問題は、特定のサーバの問題でなく、あまり知識のない一般の利用者の動向から起こる可能性が高いと思います。それを前提として、「福岡大を既定値としているソフト/ハードが主要因」という推理をしました。

その推理と、自分の個人的経験から、桜時計に福岡大のサーバがあることが原因だろう、と短絡的に考えてしまいました。

「福岡大を既定値としているソフト/ハードが主要因」かどうかは、真偽の判定が難しい問題ですが、ここまでの、2ちゃんねるの反応から推測すると、この推理自体がはずれているようです。

桜時計という固有名詞を強調している理由

また、「NTPクライアント」という抽象的な専門用語は避け、「桜時計」という具体的なソフトの名前を強調しているのは、「ふだんこういう記事をスルーしてしまうような人の目を止めよう」という意図です。

セキュリティ問題でもそうですが、こういう問題で、技術的に正確な書き方を意識しすぎると、一般の人には読みづらい文章になります。その雰囲気や専門用語自体に拒否反応があって、そこで思考停止→スルーしてしまう人もいますので、私は、一般に広く知らせたいテーマについては、意識して「読ませる」為の工夫をしています。

もちろん、場合によっては、それが反則技に近く歪曲や事実誤認につながる可能性もあり、危険な側面もあることは意識しています。セキュリティ問題では、ある程度問題点も意識した上で、書き方を工夫しているつもりなのですが、今回の問題については、配慮が足りませんでした。

NTPクライアントに責任はあるのか

まず、桜時計については、「管理者に問い合わせて載せる許可をいただいた海外のサーバのみ」既定値としているということで、どのような意味でも問題はないと思います。

この問題の根本的な第一の原因は、福岡大学のようなボランティア的公共サービスを提供しにくい、日本の官民の体質にあると思います。批判の対象がそれであるということは、(あまりわかりやすくはないですが)文章に表現されていると思います。

では、そのような手続きを取ってないソフト/ハードに問題はあるか、どうすべきであるか、ということですが、ここに関して、私は漠然と確固たる論理もなくなんとなくそういうソフトハードに(二次的ではあるが)責任の一端があると考えていました。

しかし、改めて指摘されてみると、「どうすべきか」という改善案の提案もなく、なぜそういう責任があるのかも即答できません。このあたりを熟考することなく文章を書いたことが、ミスの遠因であると思います。また、そのあたりの問題意識があいまいである為に、最初の指摘で反応できなかったのではないかと思います。

つまり、今回のミスは、単純なうっかりミスではなく、構造的な要因から必然的に発生したミスである、という側面があると考えています。

まとめ

今回の件に関しては、以上のように反省すべき点が多くあると思っています。中でも大きな問題は、コメントへの対応と構造的要因です。

私は、ブログに間違いが許されないとは思っていません。むしろ、気軽さや速報性にブログの特質がありますから、一般論としては、間違いには寛容であるべきだと今も考えています。しかし、その分だけ、間違い、問題点の指摘には敏感に反応すべきだと思います。

構造的な要因については、まだ整理できてない部分もあり、今後、さらに考えていきたいと思います。ひとつだけ気がついたのは「自分でよく考えてない煮つめてないことを、わかっているかのようなスタンスで書いた」という問題です。「よくわからないことや、考え中のことを書く」こと自体には問題はありませんが、「わからないで書いている」ことや「考え中のことである」ことが、読んでいる人に明確にわからないのが問題だと思います。

私は、自分のブログに今後、一切の間違いを無くすよう努力するとは言いません。これからも、いいかげんな記事を書くと思います。ただし、この二点については、同じ間違いを二度としないよう努力します。