ネットは食料より先に世界に行きわたる

梅田望夫・英語で読むITトレンド:IT世界市場は「次の10億人」争奪戦へは、「次の10億人つまり、中国、インド、ブラジル、タイ・・・・と続く各国の市場」へのIT産業の転換がテーマだ。

それが利益を産む産業として立ちあがるかどうかはわからないが、これからパソコンが、発展途上国はもちろん最貧国に行き渡るのは確実だと思う。

パソコンはLSIのかたまりだ。LSIは量産効果が強烈に効くので、最終的には10円とか5円になる。設計費を回収するまでは高いけど、その後は基本的にはタダになる。既に銃や車より安くなっているわけで、銃や車がある国ならどこでも出回るだろう。

むしろ「次の10億人」産業の焦点は、ネットワークや電源等のインフラではないかと思う。そこで、太陽電池P2Pでバケツリレーをする携帯のような自立分散型の製品が開発されてブレークスルーが起きれば、すぐに、その影響は「その次の30億人」つまり最貧国にも及ぶ。例えば食料援助したり国連が人を派遣したりする時に、テントやトラックを用意するのと同じ感覚で、無線LANのインフラと通信端末を持って行くようなことになると思う。

もしこれからも飢餓が解決されないとしたら、飢えている地域に食料より先にネットが行き渡り、そこには「どこに食料がある」という情報が流れるだろう。食料はネットの端末よりずっと高価でかさばるからだ。そういう国では「IT講習会」なんか実施する必要もなく、生きのびる為にみんな必死で使い方を覚えてしまう。

そのインパクトがどんなものになるか見当もつかないが、とりあえず一番気になるのが、中国の農村部だ。ここに、「次の10億人」産業が行き渡った時に、たぶんネットの中には中国語のコンテンツが大量に用意されている。人為的に人の流れを止めている所に、言語の障壁がなく情報だけが先行して行きかうことになるわけで、そこで何が起こるか誰にも予想できない。

世界中の政治家に警告しておきたいのだが、パソコンはすでに銃や車より安く、今だってテキスト専用ならじゃがいも10個くらいの値段で作れるのだよ。