Googleが文系フェローを雇う日

200X年、創業者を追い出した二代目CEOは、ある極秘プロジェクトのために部下に電話した。

例の件だけど、リストアップできた?何?「法哲学倫理学プロパーと現代思想系のどれにするか?」…そんなのどうでもいいよ。とにかく、あの何か変な言葉で難しいこと言う奴、そういうのの親玉を雇うの。この間もあったでしょ。"Hachibu" "Hachibu"って騒いでる奴。そうそう、あのジャップども。ああいうのをおとなしくさせたいってこと。

いや、そうじゃない。単なるお飾りにするわけじゃない。仕事してもらうよ。ガイドラインとかGoogle憲章とか、そういうのを書かせる。まあ、そら表向きだけど、一応、現場にも守らせるよう指示だすよ。そら、多少は開発もビジネスもスピードダウンするけど、ここまで来てりゃ大丈夫でしょ。ていうか、そうやって信頼を得た方が、シェアは向上すると俺は見てるんだけどな。

うん。ワシントンには言ったけどさ。うんうん、そりゃそれでおとなしくさせることはできるよ。どうしょうもなけりゃそうするさ。ただね。あまり強引なことするとさ、うちの若い連中の方が率先して騒ぎだしちゃうわけ。だって、ナードったって読み書きは達者だからね。すぐ洗脳されちゃうわけさ。この間の"Hachibu"騒動だって、元は内部からのリークでしょ。だから、一応、筋通して、うちの会社はpeople's powerの味方だってことにしとかないと。

えっ、何、「今時 people's power なんてナイーブな言葉は使わない方がいい?」ああ、わかったよ。本当に面倒な連中だな。しかし、まあ、言いたいことはわかるだろ。

そうそう、そういや、この間言ってた、ソーカルってのはどうなった。ああいう難しい言葉ばっかり使う連中をギャフンと言わせちゃったっていう奴だよ。えっ?何?「あれは結局サヨクでした?」ほおお、そりゃどういうこと?ふ〜ん。なんだかよくわからんけど、本当に素直じゃない奴らだな。だから、俺、ああいうの嫌いなんだ。

まあ、ともかくさ。そういう方面のフェローを一人とスタッフをたくさん雇って、理論武装する。いや、そいつらには本当のことは言わない。そいつらには、Googleがpeople's powerを代弁する仕組みを手伝ってくれとか、…だから、おまえがもっといい言い方考えろよ。俺は知らんよ。とにかくそいつらが気にいるような言い方でスカウトしちゃえばいい。サヨクでもいいよ。ただ他の連中がははーって平伏しちゃうような奴じゃないと駄目だぞ。3年くらいは、まあ好きにさせてやるよ。

もちろん、適当な所でクビだけどな。ゲイツを完全につぶしてからかな。三年はかからんだろ。

その後の処置?まあね。そういう時こそワシントンを使うんだよ。気にするな。今じゃワシントンの方が、こちらに頼ってんだよ。どうとでもなるさ。まあ、おまえもそういう話はあまり詳しく聞かないほうが身のためだぞ。

じゃあな、来週までにリストアップしとけよ。頼んだぞ。