無線LAN“ただ乗り”で不正アクセスに悪用したケースが発覚

俺は、1994年頃、Windows3.1でインターネットに接続したが、当時は「ダイアルアップネットワーク」なんてアイコンはなくて、ダイアルアップでパソコンをつなげることが、それはそれは大変な作業だった。いろんなソフトやドライバをインストールしなくちゃいけないし、プロバイダーからは変な数字がたくさん書いてある紙を送ってきて、その意味が全部わからないと設定ができない。ちょっと間違うとすぐマシンがハングアップするし、接続するだけで何日もかかったと思う。

つなげた先には、メチャクチャ賢くて恐い人たちがいっぱいいて、メーリングリストでよくわからない難しい議論をしている。ちょっと設定を変えるにも、何か間違って変な通信をして、エライ人に怒られんじゃないかと、ビクビクしていた。端末一台でそのありさまだから、サーバの管理する人なんて本当に神に見えた。

とにかく、インターネットっつうトコには、賢い人ばっかりいるもんだなあと思っていた。

その時のモデムは確か32Kだった。16Kだったかもしれない。56Kモデムが出た時に「本当にそんな速度で通信できるのか?」と疑った記憶がある。その時から回線の速度は一方的に速くなり、ユーザは一方的に馬鹿になって来ている。上京したオノボリさんのようにオドオドしていた俺が、イッパシの顔をして「ユーザがどんどん馬鹿になっている」とか偉そうに言っている。少なくともそれくらいは馬鹿が増えた。

何が起こるかわからない世の中だが、回線速度と記憶装置の容量は増大していくことと、ネットのユーザがますます馬鹿になっていくことは間違いない。前者は、少なくとも動画に関するニーズが一段落するまでは続くだろう。後者は、地球人口全体に行きわたるまで続くだろう。

無線LANにただ乗りされることの意味を、今はまだ言えばわかる方が多数だと思う。そのうち言ってもわからない奴が多くなり、法的に規制をして、デフォで高度なセキュリティ必須にするしかなくなるだろう。しかし、そうやって手とり足とり世話をやくと、馬鹿がつけあがってますます馬鹿になる。「ますます馬鹿」でも安全に使えるようにした製品は、とても複雑で普通の人には手が出せなくなって、馬鹿でない人も馬鹿のようなふるまいをするしかなくなる。

無線LANただのりというこの問題は、いいテストケースだと思う。「今後、こういうことがないように」という教訓を引き出すことも必要だが、「今後、こういうことが拡大したらどうするか」ということを同時に考えておくべきだと思う。次の仮定が成立する限り、こういうことはなくならない。

  1. 既存ユーザの数割に及ぶ新規ユーザが継続的に参入し続ける
  2. 新規ユーザの平均的教育水準は、現行ユーザのそれより劣る
  3. 技術は複雑化、多様化し、使いこなす為に必要な知識は増える
  4. 機器の相互接続は密になり、ひとつのトラブルの波及範囲が広くなる

似たように爆発的な普及をした相互関連の強い製品、例えば自動車や電話と比較すると、そういった製品でも1と2が成りたった時期があるが、ある時点でUI(メンタルイメージ)が事実上標準化され、それによって新規ユーザに対する最低限の教育が可能になっている。また、相互接続はあるにしても、目に見える体感できる範囲のことで、ネットのレベルとは全く違う。

だから、これら全てが成り立つ技術はこれが最初である。原理的に統制不能なものとして対策を考えるべきだと思う。

(追記)

スパム洪水の背後にロシアと中国の影 - CNET Japanなんてニュースもありました。