[?date=20040503#c06:title=late_mhkさんへ]

ていねいで冷静な応答ありがとうございます。そして、Vins-TさんとMeinhofさんも。こういうふうに、自分と見解の違う人からきちんとしたコメントしていただけることは、とてもありがたいことだと思います。

自分としては、この点に関して何が何でも固執するつもりはありませんが、ひとつの疑問があってどうしてもそれが解消されません。みなさんの応答を見ていて、自分がその疑問をうまく表現できてないことに気がつきました。だから、依然としてそれは解消されていませんが、それはどちらかと言うと、私の方に問題があるのだと思います。

簡単に言うと、「知識」「情報」の問題ではなくて、「文体」「世界観」の問題である、あるいは「正確さ」「情報量」の問題ではなくて、「歪み」「フィルター」の問題であるということです。

私は、単にイラクの人が日本のことをよく知っていたことを不思議に感じているのではないのです。あの声明を書いた人が、日本のことを特有の世界観で認識していることが不思議なのです。あの声明には特有の文体があって、朝日新聞の記事や社説に似たものを感じます。また、旧社会党共産党のものの言い方にも同様の文体を感じることがよくあります。

逆に海外のマルクス主義者やリベラルな意見を見ていて、その内容に日本の左翼と共通する主張を感じたことは何度かありますが、「文体」の点で共通なものを感じたことはありません。日本の左翼には特有の文体があるように見えて、それが私はすごく嫌いです。生理的に嫌なので、その点には敏感なのだと自分では思っています。この「日本の左翼特有の文体」ということは、今回の声明文に関して思いついたことではなく、過去数十年にわたって朝日新聞を読むたびに感じていたことです。

ちょっと今は見つからないのですが、産経新聞が「声明の中の左翼特有の論理構成」としてそのことを記事にしていたと思います。産経のリーク記事は政府の意をダイレクトに受けているようで、隠された意図について疑って読むべきだと思いますが、あの記事の中で警察の関係者のコメントとして出ていた感想は、私の感じていた感覚に非常に近いものでした。2ちゃんねるの中でも、そういう感想をいくつか目にしました。その感想は、偏見や情報に躍らされて何かの思いこみで発言しているものではなく、むしろ「何が何だかわからんけど、このあからさまにサヨク的な声明はどういうこと?」という素朴な疑問として出ていたものが多かったです。

これは、一般的に誰もが感じるものだと思っていたのですが、late_mhkさんや他の方は、私が言っていることを「知識」や「情報」の問題として理解されたということは、(私の説明不足もありますが)そういう印象を受けていらっしゃらないようです。ひょっとしたらそれは世代的なものかもしれません。若い頃に、今よりもっとおおっぴらに共産主義的言説を耳にたたきこまれた時の、生理的な嫌悪感が蓄積して一種のアレルギーとして敏感(というより過敏)になったものであって、そういう経験が無いと理解しにくいものなのかもしれません。

ただ、第一感としてあれが外国人の手によるものと思えなかった人がたくさんいて、それは偏見や情報操作の結果ではないことは、ある程度客観的な証拠のある事実です。言説の表層にあらわれているものではないですが、深層に特有の指紋を残していて、それは私がここで繰り返し批判している一部のマスコミに見られる、歪んだ思考形態につながるものです。

私の方にも、その違和感は大半の日本人にとって当然のことという思いこみがありました。ですから、今井君の会見でそのことをスルーしたことを「あえてパスした」と何らかの意図を想定して考えていました。その思いこみはみなさんのおかげで解けました。何の違和感も感じない人も多くいることを知って、「とるに足らない疑問として無視した」という解釈が自然かもしれない、少し考え直すべきだと思っています。少なくとも彼ら三人は何も知らなかった可能性が私の中でいくらか高まったことは確かです。

ただ、あの声明を誰が書いたのか?という疑問は残っています。あの声明の「論理構成」や「文体」に独特の指紋を残したのは誰かということです。単なる情報伝達や学習では伝わらない指紋が、ハッキリと見えるのです。

ひとつの可能性は、彼らのうち誰かが強制されて声明文作成を手伝わされたというものです。あるいは、日本に深い接点のあるイラク人がいたのかもとも考えました。会見によって間接的にそれらが否定されたので、全てをうまく説明できるストーリーがあるのではないですが、「何か隠された謎がある」と考えるのが私にとっては自然なことです。

それと、日本赤軍の関与については、北朝鮮食料配給制廃止や謎の多い列車大爆発など、情勢の逼迫を想像させるニュースが多く、特に根拠が無いとしても、謀略的な事件の影に常に北朝鮮の存在を考えることは荒唐無稽とは言えないと私は思います。

また、これはあまり調べてないことなのですが、韓国の選挙結果(ここでちょっと触れた)を考えると、北朝鮮の謀略能力も侮るべきではないと感じています。「アメリカに対して可能な限りの批判票を入れつつギリギリ現実的な選択をした」という解釈もあって、もしそれが正しいなら理解できるしむしろ共感する所なのですが、素直にあの結果を解釈すると、ネットを使いこなす若い世代が「アメリカよりも北を選択した」となるでしょう。

金正日とブッシュのどちらが高潔な人間かということではなくて、両方が可能な限り最悪の人格の持ち主だったとしてどちらの手が縛られているかという選択をすべきだと思います。ブッシュの悪事が次々暴露されていて金正日のやったことは何ひとつ明確でないからアメリカを拒否して北を選択するというのは、韓国にとって正しい選択だと思えません。どちらのシステムが「まし」であるかは明確に結論の出ている問題なのに、そこを見間違ってしまったと私には思えました。

これは本当に素人の印象論にすぎません。また、それにどれだけ北が関与したのかはわかりませんが、あれはネットの敗北と考えるべきものかもしれないと感じています。簡単に結論を出すべきことではないもので、今後ゆっくり考えていくつもりですが、私はネットの力について前ほど楽観的ではありません。