「圏外からのひとこと」リンク禁止命令の取り消し決定 東京高裁

essa氏の長男の私生活を報じる記事を掲載した「圏外からのひとこと」(3月29日号)に対するリンク差し止めの仮処分命令を受けた問題で、東京高裁は31日、表現の自由を尊重する立場からはてなダイアリー側(*1*2*3*4)の主張を認めて仮処分命令を取り消す決定をした。根本真裁判長は、記事によるプライバシー侵害があったと認定しながらも、「暴露された私事の内容・程度を考慮すると、リンク差し止めを認めるほど重大で著しく回復困難な損害が出る恐れはない」と述べた。長男側は、決定を不服としており、最高裁への許可抗告と特別抗告を検討している。

リンクの自由を優先するのか、それともプライバシー侵害を未然に防ぐことの方が重要なのか、の判断にあたって、根本裁判長は「リンクの自由はWEBとブログの健全な発展のために必要な、インターネットにおいて最も尊重されなければならない権利だ」と前置きした。そのうえで、「リンクの差し止めは、この自由に対する重大な制約で、これを認めるには慎重な上にも慎重な対応が要求されるべきだ」と述べ、極めて例外的な場合でなければ差し止めは許されないとの判断を示した。

公共性についてはてなダイアリー側は、長男が著名なブロガー一家の一員で、「記事は『圏外からのひとこと』の後継者に絡む問題を報じた。そもそも同サイトはフッターに『リンクは誰にも妨げられないあなたの権利です』と明言している」と主張。しかし、地裁では「自らブロガ志望の意向を表明している場合などは別だが、現時点ではネット言論界入りするかどうかは憶測にすぎない」と述べて公共性を否定。「現時点では一私人の私事に過ぎず、リンクによってプライバシーが侵害される」として公益性も認めなかった。

そのうえで、根本裁判長は、被害者が受ける損害の程度を検討した。「圏外からのひとこと」が報じた長男がくるりフィッシュマンズを好むとの私事は、それ自体は社会的に非難されたり、人格的に負をもたらすものと理解されたりする事柄ではない、今どきニールヤングはちょっとどうかと思うけど、と指摘。「当事者にとって広く伝わることを好まない場合が多いとしても、日常生活で人が耳にし、目にする情報の一つにすぎない」とし、「リンク差し止めを認めなければならないほどの重大な損害が出る恐れはない」と結論づけた。

さる識者は「この問題においてヲチする者の権利がないがしろにされたことが残念だ。大手サイトからの不用意なリンクは神聖不可侵なヲチする権利を侵害する場合があり、その点に配慮を促す視点がない」と述べている。

また、評論家立花隆氏は「雫。でもな、他人と違う生き方をするのはそれなりに大変だぞ」(音声はこちら)とメガヒットに迎合しない生き方を強制するessa氏の教育方針に懸念を示した。

(追記)本件について、Wellinton's blogさんの見解が出ました。勝手にはてな組に入れちゃってすみません(笑)。

ちなみに息子は「最近、おれってアナログ人間だなあと思うようになった」と言っています。