「小説の効用分析とその未来を考える。」
ある小説を読んで(たとえば2時間)、「読んだ甲斐があった」と思ってもらえるためには、「その人がその二時間でできたはずのほかのことから得られる――つまり機会費用というやつ――を上回る効用を、その本は与えなければならない」
という、「小説のコストパフォーマンス」に関する山形浩生さんの文章に関する考察。原文は読んでないんですが、実に興味深い提案だと思います。
でも、小説をフローとして見る視点には異論があります。小説を読むことの効用は読んだ時間に得られるとは限らないと思います。小説とは、読んだことによって自分の一部が違う人間になって、その後の人生に長期的に影響を及ぼすものではないでしょうか。
だから、経済的(会計的?)なたとえをするなら、資産の購入にたとえるのが適切ではないかと思います。例えば私は村上春樹の小説を読むことで、その後の数十年にわたる自分の人生に影響を受けたと思っています。そのための投資がたった二時間の自分の時間であったということは、非常に波及効果の高いITシステムを安価に導入できたようなものです。
ですから、小説の効用を高めるための手段として
(4) 読者に恒久的な影響(何かに対する気づき等)を与える
例)村上春樹、よしもとばなな、田口ランディ
という方法もあると思います。