「愛」も実用的なスキル

若者のこころざしと現実世界のしがらみはいろいろなミスマッチを起こしますが、こころざしを生かしてミスマッチを諌めるのは難しいことです。しかし愛があればそれができるんですね。そういう事例を目にしたので紹介します。

話の発端はスラドこのスレです。

この問題を提起している人は、こころざしは正しいけど、やってることが明らかに間違ってるんですね。つまりリファクタリングという最新のテクニックが現在のソフトウエア業界の標準的な仕事の進め方と合わないのです。この人はそのミスマッチを認識できないで、正しいことを強行して怒られてしまってそれについて悩んでいるわけです。

ここで「理想と現実は違うんだ」とか「趣味と仕事は違うんだ」いう言い方で、この人のやったことをまるごと否定していまうのは簡単ですが、やったことは間違っていても、「よいソフトウエアを作りたい」という気持ちを強く持っていることは悪いことではありません。できれば、その気持ちを生かしてよい方向へ導いてあげたいものです。

それを見事にやってるレスがコレ


テスト書いて、コード書いて、テストが成功して、リファクタリングして、テストが成功してから完了したことを報告すればいいじゃん。
通常の開発行為の中にリファクタリングを入れてしまう。
過去の負の遺産に対しては通用しないけどね。

そっけない言い方ですが、「こうやれば現実と衝突せずに理想を追求できるよ」というひとつのアイディアを、具体的に教えてるんですね。

これは「愛」だと思います。

別に「君の考えてることは正しい」と口で言わなくてもいいんです。相手の持っているものを生かす心づかいが「愛」です。ちょっとしたアイディアですが、そういう知恵をパッと生み出せるのはこの人に「愛」があるからだと思います。「こころざし」を「現実」の中で生かすことをいつも考えているから、そういう頭の使い方を訓練しているから、こういうプチ一休的なアイディアがすぐに出てくるのだと思います。

たぶん、この人は部下とも上司とも顧客ともこのように接しているので、難しい仕事でもうまくこなしているでしょう。ひょっとしたら回りからは「頭のいい人」と思われているかもしれません。でも、きっとそれは訓練の成果だと思います。

自分の回りのものを全部生かそうとして、そのような頭の使い方を無意識にしているから、その繰り返しで頭が鍛えられてきて、よいアイディアが浮かぶようになったのだと思います。

根本にあるのは「回りを生かそう」という素直な気持ちであって、その気持ちを滞らせないでいると、自然とそういう頭の使い方ができてくるのだと思います。素直な気持ちを滞らせないで表現するのは「愛」です。「愛」も実用的なスキルだったんですね。