元気になっちゃったかも

歴史にifは禁句だと言いますが、私が昔から誰かに聞いてみたいifがありまして、それは「徳川慶喜が幕府改革に邁進して薩長を倒したらどうなったか」です。慶喜という人は、あえて日本の為に大政奉還という不戦敗をして無駄な戦争を起こさないようにした、つまり薩長連合軍に日本の未来を託したわけで、この決断がどうだったのかをこのifで問いたいと思うのです。

「幕末もの」とか言う時点で「幕」の「末」であることがネタバレしてるんで、慶喜に「大局観のある人」という属性をつけてしまうと、もうこの決断は当然に見えてしまうんですが、全然当然じゃないです。当時の世界情勢がよくわかっていたのはむしろ幕府の方なんですね。だいたい、薩長なんて上のほんの数名以外は、ただのチンピラ集団です。「攘夷して薩摩(長州)幕府を作るのだ」とか思ってる人がほとんどです。

いくら組織が腐っていたとは言え、一応、上に御輿になる人を置いて実質的に下が仕切るという日本独特のスタイルがありますから、幕府が全く機能してなかったわけではないと思います。それを構造改革して再利用した方がよかったのではないか?長年それを知りたかったわけですが、そんな私の望みがかなってしまいそうです。

自民党にはとうとう「徳川慶喜」は出現せず、かわりに「小泉純一郎」が出てきてしまいました。彼は公約の「自民党をぶっつぶす」を果たさず、代わりに「橋本派」をつぶし、49才の「若手」を幹事長に抜擢しました。もちろんこれでも、従来の自民党政治から考えればすごい成果だと思います。創造の為にはまず破壊が必要ですから、とにかく派閥政治を壊したことは評価すべきです。

でも、それだけがんばっても49才の幹事長が「若手」の「大抜擢」と言われます。おそらく徳川慶喜の位置に小泉純一郎がいたら同じように、幕府の構造改革を行ない、しがらみをぶっつぶし、40代の「若手」を「大抜擢」して、幕府内部の守旧派の肝をつぶしたことでしょう。

しかし、発足当時の明治政府の最長老は39才の大久保利通でした。徳川慶喜はそこに期待して日本の未来を賭けたのです。人材のよしあしとかトップの力量とか関係なく、寿命が尽きた組織はどうしようもない。具体例をひとつあげれば、安部幹事長は党執行部での部下として中川国体委員長と町村総務局長をかかえるわけですが、この二人がともに森派の序列の中では、安部氏の大先輩になるそうです。これで本当に仕事ができるのかどうか。

もし幕府が中途半端な構造改革で元気になってしまっていたら、おそらく薩長を倒していたでしょう。そして、本当の維新への障害として長い間立ちふさがっていたでしょう。私としては、それを見通し自分を犠牲にしてそういう事態を回避した徳川慶喜の偉大さが、今後の日本のあり方によって改めて確認できるような気がします。本当は、780円くらいの歴史IFノベルでこのストーリーを誰か書いてくれればよかったのですが、このために私が払うコストは780円よりだいぶ高くつくような気がします。