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特許ってのは、発明する人の利益を守るシステムかと思ったら、これがちょっと違うみたいだね。発明するにはモトデが要る。例えば、電球を発明しようとしたら電池がいる。電池がない時代に電池を使っていろんな実験をするんだから、それは金がかかる。もし、苦労して金かけてやっと発明した電球を後追いでマネされたら、誰も発明なんかしようとは思わなくなる。そうすると、技術が停滞して困るのは俺たちだ。そうならないように、発明者に金が入るようにして、社会の進歩を促すのが特許だ。

で、特許がなかったら、なんで発明しないのかをもう一歩深く分析すると、電球なんかは、発明にチャレンジすることはリスクがあるが、できた発明を事業化することにはリスクがない。電球はガス灯やろうそくより明るいし、火事の心配もない。発電所や電線などの設備投資は必要だがトータルコストも安い。これを作れば大ヒットすることは誰だってわかる。

  • ビジネスモデル*特許がなぜおかしいかと言うと、このリスクやコストの構造が逆なんだよね。つまり、ビジネスモデル

を発明するには金(設備)はいらん。パソコンひとつあればいいし、ヘタしたらなくたってできる。一方、これを事業化することにはリスクがある。 ITはいろんな事業を根本から構造転換するから、何がおこるかわからないからだ。例えば、コンビニがらみのオンラインショッピングで画期的なビジネスモデルを思いついて他のコンビニをけちらすことができたとしても、携帯やネットをうまく使ってそれよりずっと便利なお買物のしかたが生まれないとは限らない。

それで、何が起こるかと言うと、サブマリン特許というやつだ。特許を取っても自分で事業化しないで、そのアイディアをひっそり眠らせておく。どこかのバカが似たようなことをするのを虎視眈々と待っているのだ。そして、苦労してやっと事業を軌道にのせて株式公開もして資金を集めた頃をみはからって、「あー、おたくの事業が我が社の特許を侵害している。ついてはライセンス契約についてご相談・・・」などと言って、金をまきあげる。

そーゆー連中はとことん性根が腐っとるとしか言えんが、純経済的に考えるとこれは合理的な行動なんだよね。つまり、ビジネスモデルのアイディアを考え出すことには金がかからない。たくさん発明して眠らしておくことは全然問題ない。自分で事業化すると失敗の可能性が大きいから、むしろそうしておいた方がいい。そうやってアイディアを100個くらい眠らせておいて、1つでも当たるのを待っている方が楽なんだ。そして、当たった所に寄生して儲けるのが一番いいわけだ。

そして、事業を起こすというのは割に合わなくなる。起業をするというのは、アイディアの問題じゃなくてそのアイディアをどうやって客にわからせるか、そっちの方が大変なんだ。世の中にないものを売り出すことは、とても難しいし金もかかるしエネルギーを使う。それを乗り切ると今度はサブマリン野郎と裁判するはめになる。よほど崇高な奉仕精神がなけりゃ誰もそんなしんどいことしないよ。

だから、特許はビジネスモデルについては発明の活性化どころかそれを抑制する方向に作用している。こんなものは時代遅れなのは明白だ。俺は思うのだが、ビジネスモデルにも*オープンソース*があったっていいと思う。つまり、使用(=事業化)は自由だけど、著作権だけは放棄しないというGPLライクな方法で発明を公開する。そして、これを改変して事業化するのも自由だが、その場合にはモトネタをはっきりすること。こうすると、問題になりつつあるパクリショップの問題も解決しちゃうんだ。つまり、「パクリをしてもいいけどトップページから俺んとこへリンクしてちょ」というライセンスで公開するわけだ。もし、パクリがヒットしてアクセスが増えれば、自動的に発明者のサイトのアクセスが増える。経済的な補償にもなるし、発明者の名誉も守れる。それくらいのハンデをつけて、細かいサービスで競争して切磋琢磨してくれれば、ユーザも嬉しい。