こころの骨折
誰でも一度や二度はつらい目にあったり傷ついたりしたことはあります。その時に、自分をはげましたり、問題に直接立ち向かって解決したこともあります。そういう経験から、*アダルトチルドレンや不登校の問題について、「もっと前向きに考えよう」「そんな嫌なことにこだわってないで、忘れてしまえよ」「過去の問題でなく今できることをしなさい」というようなことを言う人が多いような気がします。
それが正しい場合もたくさんあると思うけど、ひとつだけ言いたいのは、心の傷にも、骨折のレベルと打ち身のレベルがあるということです。打ち身ならば、湿布でも貼っておいてほっとけば自然と治ります。しかし、骨折ではちゃんと添え木をあてて固定しなければ治らない。打ち身をして何も手当しないで自然に治った経験のある人が、骨折した人に対して、同じことをすれば治るからと何も治療しないことを強要したり、添え木をあてたり絶対安静にしていることを笑ったりするのは、ちょっとおかしいことです。
心の傷にも同じように、人間に交わったり普通に生活したりする中で自然と直せるレベルのものと、外出しないで家に引きこもったり絶対安静にすることが必要なレベルがあると思うのです。
自分の回りに学校へ行かない人や、仕事が困難な状態な人がいたら、自分の経験だけで何かを言う前に、そういう可能性を考えてほしいと思います。また、逆に何かを言われた場合、他人の経験と自分の今の状態をよく比べてからアドバイスを受け入れてほしいと思います。
私の場合、妻の心の傷は明らかに骨折レベルですが、いろいろな人に親切心から打ち身レベルのアドバイスをもらって、随分迷ったり動揺したりしました。結局、妻は約1年間引きこもりを続けているのですが、今、感じているのは、そういう休む時間が妻には必要だったということです。
正直に言えば、私自身も妻に打ち身レベルの治療を強要していました。しかし、それは妻の状態を悪くしただけでした。妻が誰とも合わずどこへも行かないという生活を何ヶ月も続けて、やっとこういうことがわかってきたのです。